SHINGO★西成|HATE 100% LOVE100% それと“FUCK”について

SHINGO★西成|HATE 100% LOVE100% それと“FUCK”について

interview by CHINATSU MIYOSHI photo by PAPAN

日本一のゲットー地区として知られる西成をルーツとし、今なお拠点として生きる彼は、いつも優しく紳士的だ。それに加えて情緒的で、賢い。そんな彼が今まで世の中に放ってきた歌には、どれもはい上がる力と生きるエネルギーを周囲に引火させるほどのポジティブな言葉が多い。それは世間が彼に求めていたことでもあるし、彼もそうあるべきだと思っていたのかも知れない。だけど、今回の最新アルバム『ここから…いまから』で彼はとにかく“口撃”している。「頑張れ」「生きろ」と言うのも彼なら、「ファック!」と吠えるのも彼だ。毒づいたり、口汚く誰かや何かを攻めることは傷付け合うし、とてもナーバスになる。だからこそ、その根本には“強い愛情”がなければできないのかも知れない。耳障りの良い言葉だけを吐いて、それにすがる人たちだけと関わるつもりなら、そうすればいいけど。アルバムの中にあるリリックで彼は言っている。「SHINGO★西成はファックって言ったらアカンの?」。言ってもいい。言って欲しい。それがまた、誰かの生きる力になるはずだから。ついでに言わせてもらえば、「美しい所作」とか「美しい言葉遣い」だけを心がけている人間に、魅力的なヤツがいたためしがないよ。

 

 

HDM:今までSHINGOさんは「伝えたいことが強くある人」と思っていたんですけど、それ以前に本当に韻を踏むのが好きな人なんだなと感じて。純粋に言葉遊びとして。
SHINGO★西成:めっちゃ好きやで。人の言葉とか聞いてても、韻はもちろんやけど強弱、フロウとかがめっちゃ気になる。昔から。

 

HDM:個人的にはこのアルバムでやっと気付いたというか。やっぱりメッセンジャーじゃなくて、ラッパーなんやって。言葉遊びの結果として、メッセージと呼べるものが形成されているんじゃないかって感じるような曲がたくさんあって。
SHINGO★西成:そんな風に感じたんや。

 

HDM:そう。「これを言いたい」よりも、韻を踏むのが楽しそうだった。
SHINGO★西成:俺の中にはいろんなヤツはおんねんけど…ヤツっていうのは、前のインタビューでも話した「人格」ね。だいたいネガティブなヤツが俺を占めているんやけど、できるだけポジティブにオチがつけられるように、俺自身もポジティブにいようとしてるで。でもメッセージっていうよりは「何言ってるかようわからんけど、これ聴いてたら何かオモロいわ」とか「ネガティブな内容だろうが何だろうが、これ歌ってたら力が沸いてくるわ」とか、そういう空気感が伝わったらエエやんって思う。

 

 

 

HDM:アルバムのタイトルが『ここから…いまから』だけど、これって、私の中では最初のアルバム『I・N・G』とすごくリンクするんです。原点回帰というわけじゃないけど、リスタートというか。
SHINGO★西成:そう言われてみれば『I・N・G』ぐらいの気持ちかも知れんな。『I・N・G』は、あれはホンマのスタートラインに立った頃で、自分的にはいわゆる決意表明の意味があったんやけど、今回の『ここから…いまから』は、『I・N・G』の時と同じ感覚や気持ちを持ってて、ラブ100%、ヘイト100%の気持ちでやってる。それくらいの気持ちの配分がいいねんな。ヘイト100%でも、最後には光が見えるようにしてるつもりやけどね。

 

HDM:『Fuck You, Thank You ほな、さいなら』が特に脳裏に残っているんですが、この曲をSHINGOさんが作ったということがすごく嬉しかったです。なんていうか、SHINGOさんはヒーローになろうとしているのかと思っていたから。なんていうか、強くてポジティブで、模範的な…。
SHINGO★西成:そんなん、俺がヒーローになんかなれるわけないやん(笑)。ヒーローって、何をどうやったらいいんかよくわからへんし。俺が思うヒーローは、もっと別世界に存在してるような人かな。なんか、そこにいるだけでキラキラしててさ、お洒落で…こんな、街のゴミ拾いしてたり、酔っぱらいの喧嘩止めただけやのに逆に絡まれたりしてるようなヤツじゃなくてさ(笑)。

 

HDM:(笑)。でも自らヒーローになろうとするヤツってどこかムカつくよ。
SHINGO★西成:ハハ、わかるよ。だからこの曲が好きやっていう理由も。「頑張ってれば 頑張ってれば」とかさんざん歌ってきた俺がいきなり「ファック」って言うのって…今話したみたいに、もし俺に対してヒーローのようなイメ−ジを持っている人の期待を崩すようなことなんやと思う。でも「ファック」って思っている俺は確かにおるから。そういう両面もちゃんと知ってもらわなアカンって思ったから。

 

 

HDM:「SHINGO★西成はファックって言ったらアカンの?」って歌詞を聴いた時に、勝手にシンパシーを感じて(笑)。これって、そんなに嫌悪されないといけない言葉?綺麗な言葉だけを使わないとダメなの?って、自分の中にある確かな感情のひとつを殺しているような気分だった時に、この曲が現れてびっくりしました。これを書いた時、どんな感情だった?
SHINGO★西成:何って言ったらいいんやろうな、この歌詞を書いた時の感情っていうものを説明するのは難しいねんけど『ここから…いまから』とか『一等賞』を歌っているのも確かに俺やし、こうやって「ファックユー」って言っているのも確かに俺っていうだけのことなんやけどね。人に罵詈雑言なんて向けることがないようないっつもニコニコ笑っている人でも、胸くそ悪くて唾吐きたくなるような感情になる時って絶対あるんやでって。勝手な自分の理想や期待で相手をただの「善人」にするのはアカンって思うから。

 

HDM:これだけ言葉に重きを置いている人だから、インディーズでいることが相応しいんだって思って。自分が書いた、吐いた言葉が校閲とか言う荒らし屋に好きにされるのはムカつくから。
SHINGO★西成:自分の人生において…音楽人生において「ファック」を使うっていうのは、もしかしたら最初で最後かも知れへんけど。でも、今回のアルバムで絶対に入れたかった言葉。「ファック」ってさ、文脈や合わせる単語が違えば「最高」とか「超」っていう意味にも化けるやん。関西弁で言ったら「めっちゃ」とか「なんやねん」みたいなさ。そういう、抑揚とか表情ひとつで意味が変わるような“表裏一体”な言葉っていうのもいいなあって思って。

 

HDM:この曲で、「善人」ではなく「人間」であるという正しさを感じた。
SHINGO★西成:生きてたらファックなことってめっちゃあるやん。それが普通やし。でも、こうやってインタビューしてもらったり、人との出会いで音楽をやれて、CDを出せて、ライブまでできて。そういうことには心から「サンキュー」。でも、出会う人みんなが最高なわけじゃない。知り合っても、カスはカス。そういうヤツもいっぱいおるやんか。そういうヤツに対してまで「ありがとうございました」って頭さげることはないよ。俺、悪いけどそこまで心広くない。だからその代わりに「ほな、さいなら」やな。

 

 

HDM:そう言えば前に、「生粋のラブソングに挑戦してる」って言ってたのを思い出したけど、それが今回のアルバムに収録されている『あんた』ですよね?

SHINGO★西成:そうそう(笑)。

 

HDM:その時、ラブソングの参考資料としてテレサ・テンを聴いてるって言ってたから、なるほどと思ったよ(笑)。これって、SHINGO★西成的“歌謡曲”でもあるよね。
SHINGO★西成:わかってもらえたなら嬉しい(笑)。ラブソングはわりと作ってるねんけど、こういうストーリーテリングのリリックは初めてやな。

 

HDM:しかも女形の語り口でね。
SHINGO★西成:ストーリーテリングの歌が凄く好きやし、それを自分でも歌ってみたいなって思って。内容に関しては、このエリアにはそういう物語になるような関係や環境が多いから。風俗で働いているひとりの女の人に「なんで身体売る仕事してんの?」って聞いたら、「彼氏が喜ぶから」って言ってて。それで相手の男はその金使ってちんたらしてるとかさ。それって…まあ、なんて言うか…“愛情表現”としてそれが成立する感覚になってしまうっていうのって…ちょっと…やんか。でも、その2人の間にはそれが当たり前のようになってて。そういうのって根本的に“寂しさ”があるからなんかなと思う。

 

HDM:この歌詞にある女性像ってね、同性としてマジで大嫌いなタイプだわ(笑)。弱々しく待っているだけの、こういう鬱屈した姿勢でいるっていうのがね、腹立つ(笑)。
SHINGO★西成:ハハハハ!千夏ちゃんはそうやろうな(笑)。

 

HDM:でも、同時に「女ってこういう感じ」というのが確かにあって。これって、もの凄く“女の性質”の本質を突いている。そしてそれを書いたのが、男であるあなたというのがまた…。
SHINGO★西成:(笑)。でもこの曲での歌い口調は女形やけど、恋愛関係における情けなさって男も女も一緒やで。例えば、高い金を出してプレゼントしたバッグをそのまま質屋に持っていかれてしまうとか、情けないヤツいっぱいおるやん(笑)。更に質屋に持っていかれてても、「それはそれでいい」という男の価値観とか、俺の理解できない領域の男もいるから、人間ってホンマおもろい。

 

 

SHINGO★西成:修羅の道は、ちょっと魅力的でもありますよね(笑)。今回のアルバムは『I・N・G』とリンクすると言いましたけど、その大きな要点としては『ILL西成BLUES』のアンサーソングのように『KILL西成BLUES』が入っていたことなんです。この曲は、どうして?しかも「KILL」。
SHINGO★西成:今日、そう言われてホンマに『I・N・G』の感覚と近いって自分でも思ったからビックリした。でも『ILL西成BLUES』の続編やアンサーとして『KILL西成BLUES』を作ったわけじゃないよ。と、言うよりも『ILL西成BLUES』の時にも考えたり思ったりしてたことを、今回の『KILL西成BLUES』に入れた。

 

HDM:関連する言葉があるから、勝手にそう思ってました。
SHINGO★西成:まあまあ、そうやろね。フックも同じやし。今回のアルバムではとことん毒吐いて、自分の中の膿を全部出そうと思ってたから。西成では音楽以外でもいろいろ…ボランティアとか地域の活動もやってるんやけど、俺が前に立ってやっていることで、この街と街に住んでる人がまた世間やメディアから注視されるようになったりすると、「住みにくい街にしやがって」とか言われることもあるよ…うん。でも、俺はこの街がめっちゃ好きやし、だからこそ憎いねん、この街が。だから、俺やったらそれが歌えるんやって思う。100%愛してるから、100%以上憎いねん。でも松居一代さんとは違うで、ホンマofホンマ。

 

HDM:(笑)。全部の感情を使ったこのアルバムは、生々しさがより強くて最高ですね。そして、やっぱりSHINGOさんは粋な男!
SHINGO★西成:ありがと(笑)!粋な男とかヒーローみたいな、俺の事をそう思ったり言ったりしてくれるんはホンマに嬉しいし、憧れる言葉やけどね。いつかそうなりたいな。

 

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