KOPERU&ISSEI|距離の近さが作らせたアルバムに人となりが映りこむ

KOPERU&ISSEI|距離の近さが作らせたアルバムに人となりが映りこむ

interview by HIROYUKI ICHINOKI

梅田サイファーを出発に、R-指定、DJドイケンと結成したコッペパンを経て、KEN THE 390主宰の『DREAM BOY』からソロデビューを果たすなど活動中のKOPERU。ヒューマンビートボクサーとして、またBASIやSHINGO★西成らの楽曲を手掛けるトラックメイカーとして、そしてERONEやDOTAMAなどラッパー勢出演の『日清どん兵衛CM東西対立編』をはじめとする映像も数々手掛けるISSEI。そもそもはKOPERUのPV『Dream On』の監督をISSEIが務めたことから始まったという2人の交流が、アルバム『カマトト』として形になった。本作は昨年、KOPERUが『フリースタイルダンジョン』初の賞金獲得者となったのをキッカケに本格的に制作が始まったもの。ISSEIが手掛けたPV群と共に楽しんで欲しいと彼らは言う。今や、音楽を離れても北堀江のアンテナショップ『kelp』のオーナーとスタッフとして毎日顔を合わす2人の“こころやすい関係”そのままに、勢いに溢れた楽しげなアルバムの裏に見え隠れするものとは。

 

 

HDM:今回の『カマトト』を聴くと、なんかいろいろ溜まってる思いもあるのかなと思ったんですが。
KOPERU:ああ、そうですね。基本的にネガティヴなんと、人に対して些細なことでイラッとしてしまうんで。
ISSEI:卑屈というか。KOPERUも俺もいわゆるB-BOYとかファンキーなお兄ちゃんって感じではなくて、クラスで言う窓際側のタイプで偏見に満ち溢れてるというか、「どうせアイツはアレやろ」みたいな(笑)。まあギャグっすけど、そんなん曲にしてみたらおもろいんちゃうかなみたいな。トラックも、今までは聴き心地のいい、柔らかめなヒップホップをよく作ってたんですけど、ライヴで盛り上がる曲をどんどん作って行こうってモードでやりました。

 

HDM:これまでの各々の作品とのカラーの違いも大きいし、もっと言うとCREEPY NUTSの活躍に触発された部分もあるのかなって。
ISSEI:「これ、CREEPYと被るよな?」「これ、CREEPYと被らへん」ってのは正直、俺らが曲作る中で何回も挙がった議題なんすけど。
KOPERU:なんやったっけな、『助演男優賞』かなんかの時にCREEPYが自分らがやろうとしたアプローチをやってきた時があって。
ISSEI:サーフ系(のトラック)な。
KOPERU:そうそう。で、中々形にならんくて自分らで揉んでたらCREEPYが出しちゃって「クソー」みたいな。そういうのがいちいち出てきてしまうんすよね。
ISSEI:そこでどっかと被るのはよしにしても、CREEPYと被るのだけは避けていこうっていう。ただ、リリックに関しては皮肉的やったり偏見の目やったり、R(-指定)とKOPERUってアプローチが似てるけど、そこは多分お互い全く寄せてもなくて、人間としてのキャラなんで。

 

HDM:『Snack』の「キャラメルばかりじゃ何か味気ない」っていうラインは、KOPERUさんの前回のアルバムのことを言ってるのかなって勘ぐっちゃいました。
ISSEI:(笑)。そういう意味で言ってんのか?
KOPERU:(笑)。いや、そのラインとかは言葉遊びの範疇で。最初、テーマっていうテーマもなく、僕が書くのメチャメチャ遅かったんで、「とりあえず何でもいいからリリック書け」みたいなんで書いてったらだんだん面白くなってきて、歌詞のフレーズをいっぱい入れていくっていうのが結構好きやって。でも、たぶん自然と出てるんでしょうね(笑)。自分のグチ、小ネタみたいなんはちりばめたりしてるんで。
ISSEI:だから結果、いろんなテーマで曲は書いてるんですけど、KOPERUっていう人物像、人生観が全部に反映されてると思ってて。

 

HDM:意識せずともリリックに現状なり思うことなりがふと顔出すと。それもお互いの距離が近いからでしょうね。
KOPERU:そうですね。ただ、今まではホンマに自分の世界観、自分の頭ん中だけでいろいろ作って行くって感じだったんすけど、僕ホンマに書けなさすぎて、今回ISSEIさんとほぼ合作という感じで。
ISSEI:「このトラックは思い浮かばないっすね」「じゃあこっちでどう?」「これやったら行けます」みたいのは結構ありましたし、2人で書いたラインは多いっすね。『どうせ』って曲とかはKOPERUの人生観ってよりは、ホンマに2人のただの偏見、あるあるネタですし。
KOPERU:あるあるの漫才やってるみたいな感じで。(制作の)後半とかは2人で爆笑しながら書くみたいな(笑)。

 

 

HDM:逆に音についてはどんなやりとりが?
ISSEI:KOPERUはどんなビートにも抵抗がないから、俺ん中でやりやすかって。「こんなんどう?」って言ったことをすぐ吸収してやれるからこそ、俺好みのビートに乗せてもらえたのかなって。

 

HDM:ISSEIさんにとっても、これまで作風の中心にあったベイシックなヒップホップ感のあるビートが今回ほぼないですよね。
ISSEI:そうすね。オールドスクールなサンプリングとかチョップはするけど、ビートの打ち方がエレクトロ系やったりベースミュージックやったり。俺自身がホンマ超雑食で、DJする時もなんでも回すし、意識的じゃないですけどヒップホップ聴かない期間がちょいちょいあるんすよ。自分ん中で流行りがあって、それによって作るビートも違いますし、カッコいいと思ったらそれやるし。それが出てるかもしんないすね。
KOPERU:僕自身、それがよかったとも思います。僕バトルとかでもDJ PREMIERのトラックとか流れたらめっちゃ嫌な顔してまうんですよ(笑)。聴いていいなあとは思うんですけど、ラップするってなったら、ああいうしっかりと当ててくるビート感はいなたすぎて。

 

HDM:言ったら今回のアルバムのトラックは真逆ですもんね。BPMも早い曲が多いし。
ISSEI:ビートメイクとしてヒップホップのルールを無視した楽しみ方は今回出してるし、ヒップホップじゃないって言われても別にいいし。

 

HDM:だから音にしてもラップにしても、お互いにとってこれまでのイメージを変える1枚になったのかなって。
KOPERU:今まで「可愛い」っていう感じで言われることが多かったんですけど、これができて、ISSEIさんとライヴをしていくことによって、それが「カッコいい」になっていくというか、「ライヴ渋かったっす!」って言われてそれが嬉しかったりとか。
ISSEI:「可愛い」言われすぎてるから。KOPERUを知っていく上で、「こいつ何も可愛ないで」っていうのが自分の中であったんですよ。

 

HDM:はは。それもこのアルバムでわかるっていう。
ISSEI:ドス黒いし、ちょっと危険思想も持ってるし(笑)。『Yummy Yummy』って曲も、人肉を食う主義のヤツが主役で最終、愛の裏返しで女性が男性を食べちゃうカニバリズムの曲なんですよ。
KOPERU:今回唯一のラヴソングですね。
ISSEI:いつもは一緒に作ってるんすけど、それは何も言わずパッて書いてきて。最初は引いたんすけど、KOPERUがそういう映画なりマンガなりを好きなのも知ってたし、僕も興味ないわけではないんで、そういう部分大事にしてったら可愛いってていうのがなくなるし、KOPERUらしさが磨かれんのやろなと思ったんで。
KOPERU:この部分見て「可愛い」って言われたら相当その人もヤバイと思う(笑)。

 

HDM:でも、「食べちゃいたい」みたいな表現の延長だと思えば、普通に聴けちゃえそうな気もしますけどね。
ISSEI:そうかもしんないす。だとしたら気付かない人もいるかもしんないですけど、他の曲で比喩が多い分、どストレートにサイコな小説読まされたみたいに胸クソ悪くなることを期待して、最後に(笑)。
KOPERU:あれですね、洋画より邦画的な胸クソ悪さで、「あーあ」みたいな。
ISSEI:映画でもオチが胸クソ悪い映画って意外と覚えてたりするし、ブラックミュージックとは違う意味で黒い部分を出せるんかなと思ったんで。「アルバムに入れるの?」みたいになってたけどな、KEN(THE 390)さんとかは(笑)。

 

 

HDM:ともあれ、この『カマトト』は全編通じてKOPERUさんのラップ力の高さも改めて感じるアルバムだなあと。
KOPERU:それはよく言われますね。
ISSEI:KOPERUのラップって面白いのが、だいたい最初スキャットなんですよね。だからある意味メロディ先行っちゃメロディ先行なんですけど。
KOPERU:その方が書きやすいんすよね。言葉さえ入れちゃえばいいんで。
ISSEI:KOPERUのラップはパーカッションに近いと思ってて、ビートとビートの間を埋める接着剤として音的に気持ちいい。そこはむっちゃ大事にした部分で。
KOPERU:結局、口がめちゃめちゃ気持ちよかったら全然飽きないんすよ、ライヴしてても。

 

HDM:究極、文章とラップを分けるところもそこじゃないですか。
ISSEI:リリックだけの曲は飽きる。ヒップホップの面白味は歌詞も0じゃないすけど、聴こえ方が重要で、KOPERUにもそれを凄く表現してもらいたかったし、「このリリックこう捉えられるっすかねえ?」みたいになってる時に「いや、そこまで考えんでええねん。聴こえカッコいいから。言いたいことだけバシッと言ってればいいから」っていうぐらいのラフさで書かせたのはあるっすね。

 

HDM:歌詞の意味や内容を伝えるだけなら極端な話、別に文章でもいいわけですもんね。
KOPERU:僕らが考えるようなことでカッコいいこととかキレイなことなんてあんまりないし、キレイな言い方するより汚い言い方して、それを遠回しに理解してもらう方が性に合ってるんかなと思いますね。
ISSEI:俺も西成で育ってますし、大阪のゲットーも知ってるし、人生も結構壮絶なんすけど、俺がラッパーやったとしてもそういうとこは出さないと思う。キャラじゃないんで。KOPERUもそうで音楽として気持ちよけりゃそれでいいし、そん中にちょっと面白いことを入れてったらKOPERUらしくなるんで。
KOPERU:それをしてたら自分の生い立ちもちょっとしたエッセンスとして自然と出るんで、そうやんのが1番自分らしいかなと思います。

 

HDM:アルバムを完成させた今の気持ちは?
KOPERU:このアルバムで歌ってることが普通の会話の中で似たような感じで出てきたらメッチャ嫌になるっすよね(笑)。「こいつウゼえ」みたいな。でもそれこそ『Yummy Yummy』みたいなの書いてもいいんや、歌詞ん中で「死ね」なんて言ったことなかったっすけど、言ってもいいんやって、今までの自分からしたら肩の荷が下りたというか、いろいろつけてた装備を外してガキの部分を見したみたいな、そんな軽さがあるっすね。
ISSEI:KOPERUみたいに凝り固まってないタイプのラッパーと今後もやっていきたいし、ヒップホップを通したオルタナティヴなダンスミュージックが好きなことも今回気付けた。もちろんKOPERUと(これからも)ライヴや音源もやっていきますけど、KOPERUの何にでも化けれるラップが俺は凄い好きなんで、他のプロデューサーとやった曲も聴きたいなっていうのはあります。
KOPERU:昔から背中を押してくれるしっかりとしたブレインになる人が誰かいて一緒にやることが多かって、それこそコッペパンで曲作る時も、テーマをバンって持ってくるのはRで、それにいろんな要素を入れてくのが僕みたいな感じやって。だから、そうですね…。
ISSEI:(1人で)できへんみたいやな(笑)。相方いる症候群か(笑)。
KOPERU:やどかりです(笑)。

RELEASE INFORMATION

KOPERU&ISSEI|距離の近さが作らせたアルバムに人となりが映りこむ

KOPERU&ISSEI / カマトト
DREAM BOY
DBMS-039
2000円(税別)
2017年6月14日発売

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