HISATOMI|成熟しない愛がもたらすロマンティックと哀愁劇

interview by SEIRA YONAMINE photo by JUNYA S-STEADY

 

大阪出身のレゲエDEEJAY、HISATOMIが恋愛をテーマにしたコンセプトアルバム『哀愁愛集』を完成させた。「愛とは哀愁だ」と謳った本作品。確かに、“愛”というものは完成しないからこそ熱く燃え上がるのだろう。つまりはアバンチュール。そこに虚しく残った“哀愁”をテーマにアルバムを作ってしまうんだから、一体どれだけロマンチックな男なんだと…。「恋愛は一番人間的な部分だ」とインタビュー時に語っていたので、正にこれまでに見せたことのないHISATOMIの人間性がここにあり。

 

 

HDM:6月7日に発表されたミニアルバム『哀愁愛集』は、ラブソングだけを収録したコンセプトアルバムになっていますが、最近恋愛で何かあったのですか?改めて、このアルバムを制作した経緯を聞かせてください。

HISATOMI:元々テーマをひとつに絞ったコンセプトアルバムを作りたいなってずっと思ってたんですね。で、実際にやるってなった時に、誰もが喜んだり悲しんだりしている事って「恋愛」なんちゃうかなって思って。僕の知り合いで、お金も地位もある人がいてるんですけど、そんな人でも恋に関しては上手くいかなくてめっちゃ悩んだりしてて。そういうのを見てたら、1番人間的な部分が出るテーマやなって思います。それに、「みなさん少なからず恋してるよね?」って(笑)。

 

HDM:なるほど。私はてっきり「最近恋愛で何かあったのかな?」って思いましたが…(笑)。

HISATOMI:俺は…特にないかな(苦笑)。

 

HDM:完成して、今の気持ちはどうですか?

HISATOMI:ラブソングがあって、ダンスホールがあって、応援歌みたいなものもあってていう、いろんなフレイバーがあれば無理なく飽きずに聴いてもらえると思うんですけど、「恋愛」っていうひとつのテーマで色を出していくっていうのは、やってみて意外と難しかったですね。自分的にはチャレンジした作品になってます。

 

HDM:制作中、どういうところが難しかったですか?

HISATOMI:同じアルバムの中で、言い回しとか韻とか被るのが個人的に好きじゃないんで、リリック面は結構時間がかかりました。収録されている『無敵のモテ期』の中で、モテ期を表す言い回しで「脂のった、寒ブリみたいに旬のタイミング?」ってリリックがあるんですけど、こういう表現を考えてる時間が長かったですね。時間はかかりましたが、言葉が枯れた感は感じなかったんでまだまだ書けそうです(笑)。

 

HDM:アルバムのテーマとして「愛とは哀愁だ」と謳っていますが、何故そう思うのですか?

HISATOMI:僕も今年で34歳になるんですが、まあ、嫁もいなければ彼女もいてない、現在まで恋を実らせたことのない生物なんで…それはもう「哀愁」ですよ(笑)。

 

HDM:哀愁がにじみ出てますね(笑)。恋愛の曲は、基本的に実体験を元に歌っているんですか?

HISATOMI:恋愛観みたいな「気持ち」の部分は実体験を元にしてることが多いですね。エンターテイメントだから全てのストーリーが体験談ってわけでもなくて、気持ちの部分を伝える為にいろんな要素を足して曲作りをしています。ストーリーを作るっていう意味では。例えば、実際に彼女と行ってたのは家の近くの汚い喫茶店だったかも知れないけど、歌の上では沖縄の綺麗なカフェてことにしとこう、みたいな(笑)。

 

HDM:リード曲『THINK ABOUT U』はかなりキャッチーでノリノリな曲ですよね。1度聴いてから、すぐ口ずさめる様な中毒性がありますよね。

HISATOMI:トラックはMICHEL★PUNCHさんに作ってもらいました。BRUNO MARSやPHARRELL WILLIAMSみたいなアメリカンポップスをイメージした感じですね。レゲエ的にはワンドロップ系でアコースティックなラブソングはよくあるけど、そうじゃない曲を作ってみたいなと思って。曲のBPMもレゲエには無い感じに仕上がってます。とにかく楽しいラブソングを作りたかったんですよ。全然好きな子は振り向いてくれないけど、ひたすら自分の気持ちを表現し続けるポジティブ野郎、みたいな(笑)。

 

HDM:MVもアメリカンな感じですよね。

HISATOMI:ミュージカルチックに演出しました。映画の『ラ・ラ・ランド』みたいな(笑)。最近ボリウッド映画とかのインド映画にハマってるっていうのもあって。まあ、「DEEJAYが歌いながら踊るっていうのはどうなの?」って思う人もいると思うけど、俺自身が面白いと思えたことはやっていこうって。

 

 

HDM:三木道三『I SAY』のサンプリング、『I SAY Remember』凄く好きです。この曲をサンプリングしようと思ったのは?

HISATOMI:ずっと三木道三の『I SAY』が好きで。俺がHISATOMに改名する前のKOH-SONSAN名義でやってた時から教科書みたいに三木さんの曲を聴いてて。自分にとって好みのリリックを作る人で、韻の踏み方とか、歌詞の落としか方とか、ちょっとお調子者みたいなキャラも全部好きで。2~3年前にRED SPIDERのJUNIOR君と『問題ない』って曲を作る時に、三木さんが作詞をプロデュースすることになって制作に入ってくれたんです。そこで初めて仕事とかをご一緒させてもらって。その頃からずっとサンプリングをお願いしてて、やっと今回それが実現できました。

 

HDM:念願が叶ったんですね。

HISATOMI:そうですね。経緯も含め収録曲の中でも特に思い入れのある曲です。

 

HDM:KIRAさんとのフィーチャリング曲『ONE MORE DANCE』はダンスホールな仕上がりですね。

HISATOMI:この曲は現場でかけてくれるサウンドマンもいて嬉しいですね。30代の人達のツボをついてるんじゃないかなと思っています(笑)。その世代の人たちがレゲエを好きになりだしたくらいの頃、2000年代初期の少し懐かしい感じをイメージしました。最近では音楽もファッションもオールドスクールな流れがきてるんで、若い人達にも新鮮な感じで聴いてもらえるんじゃないかなと。

 

 

HDM:収録曲の中で、1番挑戦したと思う曲は?

HISATOMI:それは完全に『KUSO BITCH』ですね(笑)。

 

HDM:アハハ!タイトルからして衝撃ですもんね。具体的に何が挑戦だったんですか?

HISATOMI:まず、単純に「KUSO BITCH」っていう言葉が汚すぎる(笑)。曲中でこんなに「KUSO BITCH」を連呼してるヤツはなかなかいてないですよね。この曲は賛否両論はっきり別れると思います。ぶっちゃけ、この曲を出した後に、ツイッターのフォロワーが200人ほど僕の元を去って行きましたし(笑)。そういう意味でも挑戦した曲です。綺麗なことばかりを歌うのが俺のやりたいことじゃない、って最近よく思ってて。

 

HDM:そういう面を表現してくれる方がリスナーからも親近感が湧くんじゃないでしょうか?

HISATOMI:うん、誰でも愚痴くらい言うし。腹の立つことを黙って受け入れられる人の方が珍しいと思うしね。

 

HDM:ちなみに、実話ですか?

HISATOMI:実話って言っていいのかな…まあ、女の子だって浮気もするよね?っていう(笑)。

 

HDM:『無敵のモテ期』いわゆるギャリスチューンですが、これも実体験を元に(笑)?

HISATOMI:いや、これは創作物語ですね。「無敵のモテ期」がきたらいいなって願って書いた曲です。欲望のままにスラスラ書けました(笑)。

 

HDM:今回のアルバムは全体を通して、まるで恋愛群像劇を見てるみたいです。

HISATOMI:そう言ってもらえる為に作ったアルバムですね!曲数もそんなに多いわけじゃなから、1曲1曲時間かけて作れました。今、納得いくものができました。

 

HDM:ラブソングを書く時はどういうタイミングで書くんですか?

HISATOMI:女の子と遊んでる時とか、恋愛要素が入った本読んでる時とか。映画観たりとかシチュエーションは様々ですね。

 

HDM:ちなみに、最近インスピレーションを受けた本や映画、出来事は何ですか?

HISATOMI:『ブラックミラー』っていう1話完結型の海外ドラマがあって、SNSとかPCなんかのデバイスが今より進化した近未来設定で、作中ではほとんどの人が眼の中にPC的なものを埋め込んでて、眼で見たものは全部データとして残ってて、いつでもモニターに写して観れる、みたいなストーリーなんですけど、これ、当然浮気相手との映像も残っちゃうわけで、修羅場の時は大変なことになりますよね(笑)。本当にそんな時代になるんじゃないかと思って、少しビビリながら観ましたね(笑)。

 

 

HDM:今回、沢山のラブソングを制作しましたが、HISATOMIさんのリアルな恋愛観を教えてください。

HISATOMI:「恋愛って何か?」俺も知りたいんですよ(笑)。こんなにラブソングを書いてもわからないんですよね。

 

HDM:哀愁漂ってますね~(笑)。アルバム発表後、何か新しい恋愛はありましたか?

HISATOMI:アルバム制作後、特に色っぽい出来事が無いのでなんとも…逆にアルバムを聴いて、世の女性諸君は僕の良さに気づいてもらえたら嬉しいです(笑)。

 

HDM:恋愛観で昔と今で変わったことはありますか?

HISATOMI:ありますね。昔は彼女が1番近い存在だと思っていて、「何でも言わなアカン」「何でもわかってなアカン」って思ってましたけど、意外とそうじゃないこともあるのかなって思ってきました。「包み隠さず全部話す」っていうことが、逆に上手くいかない原因になることもあるだろうし。馬鹿正直に裏側まで全部を話したとしても、得することもそんなに無いかなと…そう考えるようになりました(笑)。

 

HDM:恋愛で悩む若者に何かアドバイスをするなら?

HISATOMI:俺からできるアドバイスなんてあるんかな…「悩んでるくらいなら次いってまえ!」ですかね(笑)。

 

HDM:今回のアルバムを聞いて、改めてHISATOMIさんって、いわゆる“ジャパレゲ”というジャンルに捉われていない音楽スタイルですよね。

HISATOMI:今は自分がハマっているビートに乗せて曲を作っていきたいと思っています。でもその中で一貫して、「こういう歌詞面白いな」って思うものはハメ込んでいきたいですね。小説を読んでるような、そんなリリックをこれからも書いていきたいって思っています。レゲエが好きな人はもちろん、そうで無い人も、僕の音楽を好きになってくれる人が少しでも増えたらいいなって思っています。演者が“ひとつのジャンル”になってる人。HISATOMIじゃなきゃ聴けないスタイルを確立して行きたいですね。

 

HDM:HISATOMIさんがアーティストとして音楽を通して、特に伝えたいことを教えてください。

HISATOMI:今はまだ「俺らがやってる音楽やライブはなかなか面白いんやで!」ってことですかね。自分が人様に人生論を伝えるにはまだまだ未熟です(笑)。

 

HDM:2003年にマイクを握りだしてから14年が経ちましたが、自身の音楽性やモチベーションに変化はありましたか?

HISATOMI:歌でちゃんと飯を食えるようになってきてから変わりました。趣味じゃないけど、楽しいだけでやってる時はまだ甘さがありました。曲を制作するにあたって、今までは「これで完成!」で終わらせてたラインを厳しく追及するようになりました。やり方やあり方が変わりましたね。ワンマンライブも、3000、4000円のチケットを購入して、俺だけを観に来てくれるわけだから100%楽しんでもらいたいし、ワンマン以外のイベントでも「スベってる場合じゃない」という気構えでやってます。

 

HDM:最後に、今年の夏の予定は?

HISATOMI:今年も野外フェスに色々出させてもらいます。ハイエストマウンテンや、9月10日のBIG WAVEだったり。12月22日には渋谷Gladでワンマンもやります。是非遊びに来てください!

EVENT INFORMATION

HISATOMI|成熟しない愛がもたらすロマンティックと哀愁劇

HISATOMI ONEMAN 『LIVE IN TOKYO』

日程:2017年12月22日(金)
会場:渋谷Glad
時間:開場17時 / 開演18時
料金:前売3500円(D代別) / 当日4500円(D代別)
出演:HISATOMI

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