曲からはみ出して笑いが広がる“餓鬼レンジャー”ならではの新たな世界

曲からはみ出して笑いが広がる“餓鬼レンジャー”ならではの新たな世界

interview by HIROYUKI ICHINOKI photo by HIROYUKI UCHIUMI

MICADELICやソロで活動してきたDJオショウをメンバーに迎えた“新生”餓鬼レンジャーが、新作『キンキーキッズ』をリリース。これまでにない形でスキットも随所に盛りこんだアルバムは、「人を楽しませずにはいられない」グループのテイストをその構成込みでブロウアップさせた作品に。すっかり“新たな扉”を開いちゃったグループから、MCの2人とDJオショウの3人のお話をどうぞ。

 

 

HDM:メンバー加入以前に、近年はオショウさんがライブのバックDJを務めることもあったようで。

ポチョムキン:まあ、ちょこちょこ一緒にやってたから、コアなファンはインスタとか見て、「こいつら付き合ってんじゃねえか?」「あ、やっぱり…」みたいな感じで思ってる人も多いかもしんないですけどね。

YOSHI:最初は3、4年前にGPが別の用事でライブ参加できなくて、急遽声をかけて。実際ステージを一緒にやってみると、賑やかさも含めて想像以上にバッチリで。それから何回かピンチヒッターでお手伝いしてもらっても打率10割で、「ヤバイぞこいつは」と。

DJオショウ:一緒にやってて餓鬼レンジャーは、スクラッチとかのDJが煽る要素とか、そういう「今時いらねえんじゃねえか」っていう要素を結構大事にしてくれるし、フザけることも全く問題なく受け入れてくれて、「もっとやれよ」ぐらいの感じで言ってくれるから、僕のやりたいこととバチッと合って。

 

HDM:じゃあ両想いだったわけだ。

DJオショウ:それまではセフレ関係みたいな感じで。ライブ楽しいからまたやりたくなって…でもメンバーではないし…「俺たちってどういう感じなのかな」みたいな、ずるずるした状況が続いてて…「私、一体あなたのなんなの?」って迫って、今回、晴れてセフレから脱出できました。

 

HDM:ハハハ。実際にメンバーとして声をかけたのはいつ頃なんですか?

YOSHI:このアルバムの制作前だから、2年前とか?「MICADELICの方は大丈夫?」なんて聞きながら。

ポチョムキン:いや、聞いてなかったと思うけどね(笑)。その途中に僕たち「メンバー募集」っていう血迷ったことも始めつつ、水面下ではRYO the SKYWALKERさんに「メンバー入りませんか?」ってこともあったり。

 

HDM:えー、マジですか(笑)?

ポチョムキン:飲みながらの与太話ですけどね。

YOSHI:軽いノリでな。「RYO君入りません?」って。

ポチョムキン:それはさすがに形にならず、流されて。

 

HDM:でしょうね(笑)。そこからオショウさんのメンバー加入を経て、このアルバムの制作に。

DJオショウ:アルバムイントロ終わって1発目『NO PLAN B』のサビでターンテーブルとマイクがぶつかり合うんですけど、「これがヒップホップの面白さの基本じゃねえか、なんでみんなやんねえんだよ」っていうところを自分の名刺代わりに叩きつけて。

YOSHI:制作前に即戦力になる曲を作ろうとしてたんだと思うんですよ、すぐに現場を上げれるっていう。

DJオショウ:だから「お、DJガシガシこすってるな」みたいな雰囲気のざっくりしたものを多めに入れようと思って。

 

HDM:それはそうと、今回のアルバムはスキットの重要性がかなり高くなりましたよね。前々作にもスキット自体はありましたけど、数も多くなったし。

ポチョムキン:そうなんすよ。今「スキットがいい」って言われるのが1番嬉しくて。「でしょ?」って。

 

HDM:アルバム聴くと、スキットのキャラ要員としてDJオショウさんが入ったんじゃないかぐらいの。

ポチョムキン:そうなんですよ。ただDJできるとか、スクラッチできるとか、だけならほんと必要ないんで(笑)。

DJオショウ:これからのバックDJは、「スクラッチ」「DJ」はもちろん、あと「演技力」がないとダメですよって。よくアルバムに入ってるレコーディングの合間の軽い雑談程度のじゃなく、脚本の方もお招きして、練習ガッチリやって、「もう1回録り直そう」みたいなことを何回もしたんで。

YOSHI:「気持ちこめて!」とか言われてな。

 

HDM:ヘエ~。

ポチョムキン:サンドウィッチマンのラジオやったりネタ書いてる作家さんがヒップホップ大好きで、一緒に飲んでる時にお願いしたら、曲の前フリになるようなスキットの基本的な台本を全曲分書いてくれて。今回のスキットはそれを元にフリースタイルでアレンジしていくみたいな感じで。

DJオショウ:だから、ただただフザけてるわけではなく、きっちり全部次の曲に対する前フリとして機能してくれるように作ってあるし。

ポチョムキン:そうだね。『アゲマンボ』とかは曲のテーマ自体にフェミニストの方からクレームが入るという設定で…。ちなみに、アルバムの方にそれは入ってなくて、何曲かのスキットは初回特典の方に回したんですよ。

 

HDM:スキットが購入特典って(笑)。いまだかつてないんじゃないすかね、聞いたことないけど。

ポチョムキン:だから本物のマニアは、特典のスキットをiTunesにちゃんと取り込んで、完成版を作っていただきたいですね。

 

HDM:それ聴きたいなあ。アルバムに入ってるスキットもスベり知らずだし。

YOSHI:おかげさまで(笑)。

 

HDM:実際、もはやスキットは餓鬼レンジャーのアルバムに欠かせない要素になったんじゃないかとすら。

ポチョムキン:スキットでiTunes 1位を狙ってます。

DJオショウ:ねえよ、そんなチャート(笑)。

 

HDM:ハハハ。楽曲面では今回、NAOtheLAIZAさんはじめ、外部のプロデューサーも大幅に起用してますね。

YOSHI:前から「外部も入れよう」っていう話はポチョムキンとしてて、いろんな方からトラックも沢山いただいてて、その中から今回はこれっていう。それぞれが「こういう曲どう?」っていうところから、お互いの意見を取り入れて膨らませてっていう作り方でしたね、今回は。

 

HDM:じゃあ、ソロ曲があるのもその延長で?

YOSHI:それはポチョムキンからの提案で。どちらも“愛”について歌ってて。

 

HDM:ポチョさんのソロ『MILF』は、熟女ネタから入って、長谷川潤にたどりつく曲ですが。

ポチョムキン:まあ、オショウはほんっとーに熟女が好きなので、ウェルカムの意味もこめて一緒に歌えればなと。最初はサビんとこで「ジュクジュク」ってスクラッチ入れてよって言ってたんですけど(笑)。

 

HDM:対して、YOSHIさんの『L.A.S.D.』はまっとうな…。

YOSHI:と思われました?あれは『LOVE ASAHI SUPER DRY』の略なんですよ。

 

HDM:ああ…そうなんですね。

YOSHI:一聴したら多分、「なんだこのくさいラヴソングは」って思うんですけど、お酒っていうオチがわかって聴くと、全部当てはまるっていう。「眠れない夜」とか「君なしじゃ何もできない」とか、ただのアル中なんですけどね(笑)。だから『UPPER JAM』の時にあった『ルビーの詩』に近い。

 

HDM:なるほど。ところで、タイトルの『キンキーキッズ』はアルバムのとっかかりとして制作当初からあったんですか?

YOSHI:いや、それが出てきたのは制作の終盤。最初、『変』って言うてたよね?

ポチョムキン:そう。作る全然前にそれこそ「次のアルバムタイトル『変』にしない?」って言ったんですよ。「変な人達が変な曲作ってる」っていう感じで。でも、その時はみなさんあんまりピンときてないっぽくて。で、作り始めてこれを提案したらそれは満場一致で。

YOSHI:いろんなインタビュアーの方に言われたのが、「『キンキーキッズ』でありながらタイトル曲ないっすよね」っていう。「キンキーキッズ」とは?

ポチョムキン:「キンキーキッズ」っていうのは正義のヒーローで、イントロでも言ってるけどパーティを煽るような音楽、男女の出会いを加速させるような音楽をもっと日本に蔓延させて、世界平和を願うスーパーヒーローなんですけど、マスクをかぶると変身して、ピカーッと光ると女性を全部透視できるっていう。

 

※キンキー(KINKY):英語「(性的に)異常な」「変態の」という意味。

 

HDM:それ、正義なのかな…(笑)。

ポチョムキン:むしろね。普段は相席居酒屋でバイトしてるんですけど(笑)。

 

HDM:そういう設定か(笑)。あと、フツ―にいい感じのトラックやタイトルなのに実際の内容が酷い内容だったりとか、いい意味の裏切りが随所にあるのも餓鬼レンジャーらしいのかなって。

ポチョムキン:そっちばっかり求めてたら逆にこれもあるかもしれないですよね。『超越』っていう僕らとしてはハードコアめな曲を1発目に出して、しょっぱな聴いたら裏切られるっていう感じ。むしろ『ONE』とか『超越』の方がアルバム全体では浮いてますからね。

 

HDM:逆に、『ONE(feat. SUGAR SOUL & JESSE)』にはグループとしての良心を感じました。これは震災キッカケで作った曲ですよね。

ポチョムキン:震災に関してはこの曲だけじゃなく、継続的に現場で募金箱出したり、僕の個人的な熊本のつながりで曲作ったり、イベントやらしてもらったりしてて。SUGAR SOULさんも熊本在住で、東京でも熊本でも自分が手を上げてチャリティイベントやったりしてるから、曲作るってなった時にまずSUGAR SOULさん誘って一緒にやれたら1番自然だなっていうのがあったし。JESSEはJESSEでチャリティ的なことやってて、「一緒にやれたらいいよね」って結構前から言ってたんで、このタイミングじゃないかなと思って。ジャンルの壁を越えるっていう意味でも『ONE』だし、単純につながるって意味での『ONE』でもあるし、ヴァースの中では1人っていう意味の『ONE』もあって、震災キッカケではあったけどそれだけじゃない、いろんな角度で聴かせられる曲にはなったかな。

 

 

HDM:『超越』ではTWIGYさんと呂布カルマさんをフィーチュアしてますね。

YOSHI:マイクリレーものを今回考えてる時に、いち日本語ラップファンとして、ポチョムキンからTWIGYっていうリレーを見てみたかった。そこに何組かのアーティストが候補として上がったんですけど、パチーンとパーツとしてハマったのが呂布カルマ。孤高の天才達というか、独自にオリジナルなラップをしてるメンバーが集まって、楽曲聴いてもそれぞれのスキルが集約されたなと。

DJオショウ:TWIGYさんが入るんだったら、『証言』のTWIGYさんのヴァースに「前座でライムが牙を剝く」っていうカッコいいラインがあったんで、これはどうしても使わなきゃいけないって使命感にかられて、コスリネタで使いました。

 

 

HDM:客演絡みという点で、女優の伊藤沙莉さんとの『Miss PenPen』も入ってますよね。これは彼女主演の映画『獣道』の主題歌にもなってて。

ポチョムキン:ブラジルで「Miss BumBum」っていう世界で1番キレイなお尻を決める大会があるんですよ。そこへのオマージュっていうか。『Miss PenPen』は、今明かされるんですけど、「世界で1番叩きたくなるお尻はあなたですよ」っていう曲なんですよ。

YOSHI:うん、今聞いた(笑)。なるほどー。制作の時に確か、タイトルとお尻の説明をポチョから受けて、パッと思い浮かんだのが2 LIVE CREWのジャケ。そっから「マイアミベースっぽい感じどう?」って提案して、餓鬼レン流にアレンジし化けるとこうなったっていう。

 

 

HDM:アルバムを通して曲作りの点で何か苦しんだようなことはありました?

YOSHI:毎回苦しんでますよね、僕の場合。ほんとに性格上「楽しんで歌詞書けない人だなあ」ってつくづく思いました。ただ、それこそさっきの「使命感」で言うんだったら、今はもうほんとに少なくなった“ライミング”、俗に言う“固い韻”に未だにこだわってて。はっきり言うと、ストーリーとかをもうちょっとわかりやすくする為には(韻は)捨てた方が早いんですよ。でも、日本語ラップの長い歴史の中で今もかっちし踏んでる。これはひとつの頑固職人というか、「文化だなあ」なんて思うと、やっぱり使命感があるし、ツイッターとかで、「楽曲レベルで韻が固いの、FORK(ICE BAHN)とか、LITTLE(KICK THE CAN CREW)とか、YOSHIだ」って言われるとやっぱ嬉しいし、そこの部分の苦労は毎回ありますよね。どう?苦労は。

ポチョムキン:僕はちょっと反対かもしれないですけど、レコーディングが好きなんですよ。ただ、確かにずっと作り続けてるから、「もう言うこと別にない」っていうのもあって(笑)。「次、何を作ろうか」っていうアイディアが出てこないのは苦しいとこですけど、メンバーそれぞれがアイディア出し合えば、10数曲ぐらいは意外とすぐ作れるんで。

 

HDM:そうでしょうね。ともかく改めて眺めても、このアルバムはいろいろ仕掛けがあるアルバムだなあと。

ポチョムキン:やっぱ今回、スキットが重要じゃないですか。曲の聴こえ方も全然変わってきて入りやすいし。そういうとこわかってくれたら多分、前回、前々回のアルバムも、もっと好きになってもらえるはずなんですよ。

YOSHI:今話を聞いてて思い出したのが、昔、ビートたけしさんだと思うけど、実は泣かす方が簡単で、笑かすことはすごい技術がいるのに、それを世間の人はあまり評価しなくて、どれだけレベルの高いことをやってるかってことを言ってて。それ、結構俺たちにも当てはまるなと思ってて。

ポチョムキン:だってさ、笑えるスキットって結構リスキーでしょ、ヒップホップのアルバムで。寒いなあと思われるし(笑)。

 

HDM:何の世界でもそうですけど、コアなとこにいくほどシリアスなものをありがたがる、「それこそが全て」って感じありますもんね。

ポチョムキン:何でもそうだし、真面目な方が簡単ですよね、特に歳を取ってくると。フザけれる方が貴重なおじさん達じゃないかなあと思う。まぁそれがカッコいいかどうかの方が重要かもですが。

 

HDM:そうだと思います。歳を重ねて重厚になるのって簡単だし、大御所感だけで尊大な人って、どこの世界にもいますからねえ。

ポチョムキン:だから僕たち舐められがちっていうね。

 

HDM:そういうのをひっくり返す意味でも、『キンキーキッズ』で新たなアルバムのあり方を、ヒップホップ界に提示したんじゃないかと…(笑)。

ポチョムキン:確かに。これが評価されたらヒップホップの未来も明るいというか(笑)、やっと成熟してきた、時代が追いついたみたいな。

DJオショウ:将来的にはジブさん(ZEEBRA)とかをスキットだけでお呼びしたいですね。「今回、ラップはいいんですけど…」みたいな(笑)。

YOSHI:贅沢だねえ~。

ポチョムキン:でも、これ作っちゃったら次も多分スキット作るでしょ。

YOSHI:それを何枚か重ねて、スキットのベスト盤みたいの出したりとか(笑)。

 

HDM:ライブトークを集めたさだまさしさんのベストみたいな(笑)。…最後に何かあれば。

YOSHI:今のこのご時世、曲単位で買うところをアルバムで聴いてほしいのと同じように、2時間なら2時間のライブで我々を見てほしいっていうのもあるんで、SNSとかで情報調べてまた現場に遊びに来てください。

DJオショウ:2MC、2DJ、1ダンサーっていうパーティ感ある編成は他にないし、音源以上にもっと楽しいことライブでやってますんで。

RELEASE INFORMATION

曲からはみ出して笑いが広がる“餓鬼レンジャー”ならではの新たな世界

餓鬼レンジャー / キンキーキッズ
東雲レコーズ
JCC-0001
3000円(税込)
2017年8月2日発売

EVENT INFORMATION

曲からはみ出して笑いが広がる“餓鬼レンジャー”ならではの新たな世界

RANGER SHOW 2017『キンキーキッズ リリースツアー』

日程:2017年11月24日(金)
場所:福岡VooDoo Lounge
時間:開場18時 / 開演18時半
料金:前売3900円(D代別) / 当日4500円(D代別)
餓鬼レンジャー and more

日程:2017年11月25日(金)
場所:大阪CONPASS
時間:開場18時 / 開演18時半
料金:前売3900円(D代別) / 当日4500円(D代別)
出演:餓鬼レンジャー and more

日程:2017年12月9日(金)
場所:東京HARLEM
時間:開場18時 / 開演18時半
料金:前売3900円(D代別) / 当日4500円(D代別)
餓鬼レンジャー and more

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