HIROTTON|彼の描くものはアート、そして類似の無いアティテュードとスピリット

HIROTTON|彼の描くものはアート、そして類似の無いアティテュードとスピリット

interview by CHINATSU MIYOSHI photo by PAPAN

スケボーカルチャーやハードコア、パンクスピリットなど、自身のルーツやアティテュードに深く根差したメッセージ性の強い作品ながら、ポスカやペンキを駆使した『新鋭ポップアート』として注目を集めているペインター HIROTTON(ヒロットン)。ポスカというありふれた道具を使って描き出す作品には、「愛でる楽しさ」と同時に「思考を捉える強い概念」が存在している。アートはカジュアルに楽しむものだけど、ただのファッションシステムのひとつに成り下がっていくのは耐えられない。今日の1日や生き方に影響を与えるインスピレーションを感じたい。そう思っている人にこそ、彼のようなアーティストは必要なのではないだろうか。

 

 

HDM:以前はロンドンに住んでいたそうですね。

HIROTTON:大阪芸術大学に通っていた時期に、チョッパー(※大阪を拠点に活動するスケーター)さんたちと大阪の三角公園でよく遊んでいて、同じ『OSAKA DAGGERS』っていうスケートクルーの仲間でもあるんですけど、そのチョッパーさんがスポンサーを受けている『HEROIN SKATEBOARDS』がその頃はロンドンが拠点で、そういったのもあって三角公園で沢山の外国人に出会いました、スケーターだけではなくいろいろなタイプの。それでロンドンに住んでいる友達も増えて、その流れで住み始めたんです。

 

HDM:ロンドンに行くまでは、絵はまったく描いていなかった?

HIROTTON:そう。それまでは絵は全く描いていなくて。ロンドンではスクワット(※空き家や空きビルなどを占拠した家屋)やシェアハウスで暮らしていたんですけど、そこでの同居人たちがクリエイティブな活動をやっている人間が多くて。そこに居た絵描きの友達や、HEROIN SKATEBOARDSのクルーにも絵描きがいたので、そこからの影響ですね。

 

HDM:そこで見たものはどんな絵だったの?グラフィティとか?

HIROTTON:いや、何て言うか…「落書き」(笑)。ペンで好きなことを好きに描いていくっていうようなラフなものでした。

 

HDM:そういった環境の中で、観るだけでなく自分も描いてみようと思ったのはどうして?

HIROTTON:最初の動機は本当に遊び半分みたいなもので。仲間たちが、上手くはないけどスタイルのある絵を楽しんで描いているのを側で見ているうちに、「俺も描こうかな」って。

 

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HDM:そこから実際にペインターとしての活動はどのように?

HIROTTON:帰国してわりとすぐにグループ展を東京でやったんですけど、それがけっこういい評判をもらえて。その頃には、自分で制作した露光期でオリジナルのTシャツなんかを製版から自分で作っていたりしていました。

 

HDM:最初は遊び半分だったものがどんどん真剣になっていったということは、描くことにすごく手応えがあったということなんですね。

HIROTTON:俺ね、ロンドンに居た頃から肩の脱臼癖がひどかったんです(笑)。酷い時には、寝返りうっただけで外れるくらい。帰国してすぐに肩の手術したんですけど、術後すぐは手しか動かせない状態だったので、その療養期間中にひたすら描きためたものを最初のグループ展に出したんです。もうその頃には、絵を描くことが自分の中では一番落ち着くという精神状態になっていましたね。

 

HDM:ペインターを職業として、生業にしていこうという決意があった?

HIROTTON:いや、そういう野望とか確信めいたことは無くて。ずっと他の仕事もしていたし。

 

HDM:何の仕事?

HIROTTON:帰国してから、とある外資系の家具メーカーで空間デザインの仕事を2、3年くらいやっていました。だけど去年の11月に大きな個展をやるとなった時、作品数も多かったし大きな作品もあったので、仕事と両立させながら作品を制作するという状況が厳しくなってきたんですよね。だから、何というか「腹を括って」個展だけに集中するために仕事を辞めました。

 

HDM:すごくいい展開になったね。作品は、平面も立体も作るの?昨年の個展『KNOCKING AT THE DOOR OF MY BRAIN』では、リアルな家が展示してありましたよね?

HIROTTON:あの家は、個展会場を運営しているのがENZOさんという舞台美術をやっている方で、俺が好きでよく描いている家の絵を立体作品にしようと提案してくれたんです。作ってもらった家の外観内観を俺がペイントするという見せ方だったんですけど、あの家のペイントのために、毎日…それこそ住み込みのように朝から晩までずっと描いてて(笑)。

 

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HDM:どうして家を描くのが好きなの?

HIROTTON:どうしてだろう…(笑)。一番最初に描いたのが、ロンドンで住んでいたシェアハウスの絵だったんですよね。家の絵、確かに多いですね(笑)。それもけっこうボロボロの家が好き。古いものが好きなんです。他には、動物、骨とか虫を描くのも好きです。

 

HDM:絵を描くきっかけはロンドンでの生活だったけど、それ以前に芸大に進学していたということは、芸術や美術の世界を志してはいた?

HIROTTON:芸大に通ってはいたけど、そこでデッサンの勉強をちゃんとしてきたわけではないので、絵を描くうちに陰影の付け方も独学で得た感じですね。

 

HDM:もともと、何かをクリエイトすることが好きだったんですね。

HIROTTON:うん、好きですね。小学校の頃も図工がすごく好きだったし。

 

HDM:先ほども話した、去年の11月にこれまでのキャリアで大きな個展『KNOCKING AT THE DOOR OF MY BRAIN』を終えて、現状は?

HIROTTON:すごく力を入れて挑んだ個展だったし、本当にたくさんの人が来てくれて、色んな嬉しい評価も貰えました。そこからの流れでデザインなどの仕事が増えたことももちろんなんですけど、こうやって取材してくれた媒体を通して、自分の存在を知ってくれた人が増えたこともすごく嬉しいです。

 

HDM:ペインターとして果たしてみたい目的は?

HIROTTON:「スケボーデッキのデザインをアメリカから出す」というのを目標のひとつにしていたんですけど、今年になってそれが叶ったから、目的がひとつ達成できました。仕事を辞めて時間が出来たので、自分がやりたい創作に時間を費やせるようになったことも大きいかな。

 

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HDM:これからの動きは?

HIROTTON:今年はサンディエゴや新宿でのグループ展もあったりで、個展をやれる余裕がなくて。個展として予定しているのは、来年の1月あたりですね。大きな作品を10点くらい作りたいなと思っています。

 

HDM:ペインター・アーティストとしての認知が増えていく過程で、自分の在り方はどう考えている?

HIROTTON:絵を描くことが仕事として成立することはもちろん嬉しいし、有り難いことなんですけど、あまりに商業的になってしまうのは良くないなって思ってて。ギャラや世間的なネームバリューに左右されたくないっていうか。自分自身のルーツ、根底にあるものを守りたいと思っています。そこがブレると、どんどん歪んでいってしまう気がするから。

 

HDM:植物とスカルとか…一見して相反するもの、女性的なものと男性的なものどちらも描けるんですね。

HIROTTON:どちらも自分が好きなものだから。細かいものを描き込むのがすごい好きで。植物や花とか、とにかくディテールがある対象が好きなんです。

 

HDM:作品において、タブーもある?

HIROTTON:特にタブーは無いんですけど、女の人の顔を描くのがすごい苦手で。

HDM:どうして?

HIROTTON:ディテールを描くのがすごく好きだって言いましたけど、人の顔の皺とかも描き込みたいんです。女の人でそうするとおばあちゃんみたいになっちゃうから、そんなの嫌でしょ、きっと(笑)。だから女性からの肖像画を依頼されても、殆どやらないんです。

 

HDM:確かに(笑)。じゃあ、ここ最近で影響受けたものって?

HIROTTON:何だろう?サンディエゴに行った時に現地の友達のアーティストのBB BASTIDASと一緒に動いていたんですけど、そいつはスケボー関係のデザインをやっているクリエイターで、一緒に大きなミューラルを描いたんです。そいつと出会ったのが2年前くらいで、この出会いから自分も大きな作品を手掛けるようになりました。面積が大きくなればなるほど、バランスをとるのが難しいんですけど、やらないと後悔すると思うから。ポスカの一番太いやつを使って…

 

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HDM:ポスカの消費量半端なさそう(笑)。

HIROTTON:一番太いやつってね、けっこうインク入ってるんですよ。

HDM:ポスカにスポンサーになってもらいたいよね。

HIROTTON:それね、何度も打診してみているんですけど、何のレスポンスもないです(笑)。

 

HDM:絵に添えられている言葉のインパクトも強いよね。こういったものは、何かからの引用?

HIROTTON:普段描いている言葉は自分が考えていることだったり、バンドの歌や台詞からの引用もあります。

 

HDM:作品には、しっかりとしたメッセージ性をもたせたいんだね。

HIROTTON:そうですね。パンクスピリットやハードコアのアティテュードにすごく影響を受けてきたから。社会的なこともそうだし、動物愛護だったり自然保護だったり。そういうメッセージは多いですね。

 

HDM:ところで話は変わるけど、入れ墨が入ってるの?

HIROTTON:うん。足に自分で描いた「家」の絵が(笑)。

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