END|90年代のハードコアやアンダーグラウンドカルチャーの匂いを継ぐアート

END|90年代のハードコアやアンダーグラウンドカルチャーの匂いを継ぐアート

interview by CHINATSU MIYOSHI

今にして思うと、90年代という少し前の時代は本当に刺激的だったと思う。現代への布石とも言えるカルチャーの潮流のほとんどは、ここから始まっているのではないだろうか。特に、ストリートに関しては。当時生まれた特別なあの匂いやスピリットを、自身のアートワークの指針とするアーティスト、END。かつて手描きのフライヤーやレコードジャケットに見たグロテスクでポップなタッチのキャラクターや、一転して繊細な筆遣いで描く線描画など、懐かしくも新しい彼の作風は、時代を経て多くのアーティストやストリートキッズたちを虜にする。

 

 

HDM:ENDさんの作風の特徴は、特に90年代に派生したスケーターやバンドカルチャーの、あの匂いですよね。
END:そうですね。フライヤー以外にも、あの当時に出回っていた7インチのレコードジャケットとかTシャツとか、90年代を象徴するバンドカルチャーが好きで。もちろん音楽としてもファッションとしても好きなんですけど、僕は特にその時代から生まれたアートワークが好きなんです。それに影響を受けて自分でも絵を描いてみるようになってから、仲間やそのネットワークで活動しているバンドのジャケットやフライヤー、Tシャツのデザインなんかをやるようになって。

 

HDM:あの時代は、グロテスクでポップな絵が特徴でしたよね。エド・ロスのラットフィンクとかグレムリンとか、キャラクターアイコンがファッションや音楽のカルチャーにすごく影響していました。
END:うん、うん。ゾンビとかね(笑)。僕はもともと美しいもの、綺麗なものにあまり興味が無くて。整っていたり清廉としているものよりは、雑多だったり汚れていたり、そういうものに魅力を感じます。昔から、ウルトラマンの怪獣でも人気がなくて駄菓子屋の隅っこにいつまででも余っているような存在に惹かれるタチで(笑)。なんかね、まったく完璧じゃないし、雑で抜けているものに妙に心惹かれるっていうか。一見すると誰でも描けそうなくらいラフで、独特な歪みを持った雰囲気がいいなって思うんですよね。違和感こそが魅力っていうか。

 

 

HDM:絵は学んでいたんですか?
END:グラフィックデザインの学校に行っていたんですよ。だから正式に学んだことで言うと、手描きのイラストっていうよりはイラストレーターを使ったデザインのほうでしたね。でも絵を描くこと自体は昔から好きなことだったから、手描きするようになったのも自然の流れではあったかも知れない。

 

HDM:その手描きの絵が、現在のスタイルになったわけですね。
END:もともとはハードコア・パンクを中心としたバンドやスケーターカルチャーが好きなキッズでした。ライブに行って、そこで友達を増やしてっていうことを日常的に楽しんでいたんですけど、そういうシーンで知り合ったアパレル業界の友達と一緒に遊んでいくうちに、Tシャツのデザインを頼んでもらえるようになって、そこから少しずつバンドからもデザインを発注してもらえるようになって。やり始めた当初は描くのにも時間がかかっていたし、「なかなか筆が進まないんだよ」とか言ったりして、生意気にもアーティスト気質を見せたりしていたんですけど(笑)、それでもコンスタントに絵の依頼をもらえるようにはなってきたんですよね。

 

HDM:これまでアートワークを手掛けられたアーティストは、国内外から錚々たる面々が並んでますが。
END:ほんとに、凄く嬉しいです。やっぱりSNSの普及というのは大きかったですね。僕の絵を見た相手が気軽にメールで依頼をくれたり、そういうことができるようになったっていうのは。BRAHMANは2010年のツアーから何度かツアーグッズなんかを手掛けさせてもらったんですけど、キッカケはたまたま共通の友人のブランドの展示会でTOSHI-LOWくんに会ったときに画集を見てもらって「いいね」って言ってもらえてすぐ、彼らのライブのフライヤーを描くことになって。

 

 

HDM:基本的に描かれるのは、好きなバンドだけですか?
END:やっぱり自分の土台の部分を考えると、自分自身が好きな音楽だったりバンドじゃないと描きたくないというのはあるんです。そこはいまでも大事な部分だと思っているんだけど、最近は少しずつですが、ジャンルやカテゴリーに縛られる必要もないという気持ちも出てきましたね。要は、相手と出会ったときの感覚や筋を大事にしたいというか。そこが一致すれば、例えジャンルやカテゴリーが自分にとって未知のものでも構わないって。僕が一番嫌だと感じるのは、簡単なセルアウトなんです。メジャーだけでインディーズは一切やらなくなるとか、そういう名声やお金目的だけなことにはなりたくないし、ならないと思う。僕は、ローカルバンドのフックアップもやっていきたいし、本当に個人的にいいなと感じる相手と関わっていきたいと思っているので。

 

HDM:今は、ネットメディアの発展で90年代ほどレコードだったりCDだったり、手で触れられて残せる“現物”に対する価値が希薄になってきていますよね。そういった環境の移行はどう感じていますか?
END:そうですよね。時代が移り変わるのも、テクノロジーが進化するのも本当に早いですからね。そういう時代の流れでも、僕らが愛好しているハードコアやパンクっていうシーンは、特に「反商業主義者」の集まりですからね(笑)、本質的な精神性で言うと。基本的には、情熱をもって何をやるかってことに帰着するような人間が多く集まっている世界だから。僕もね、フライヤーデザインに関してはお金もらってないんですよ。

 

 

HDM:そうなんですか?
END:うん。フライヤーっていうのは相手にとっての宣伝素材で、それを使って直接お金を稼ごうとしているわけではないから。その絵をさらにTシャツにするとかになったら話しはまた違ってくるけど(笑)、だけどあくまでもフライヤーとしてだけであれば、お金よりも、お互いのリスペクトだけで成立できれば。商業デザイナーであれば、それがフライヤーだろうがポスターだろうが、きっちりギャラは貰うんでしょうけど。

 

HDM:ご自身では、自分のことをどういう存在だと自覚していますか?
END:アーティストとしての自覚はありますけどね、一応(笑)。個展なんかで絵を売る感覚とは違うんですよね、フライヤーデザインは。個展の作品は自分がメインだけど、フライヤーは自分じゃなくバンドがメインだから。その事実在りきで成立する絵ですから。

 

HDM:ENDさんの作品は、和や東洋の雰囲気の緻密な作品とフライヤーで描かれるポップアートの両方がありますけど、ふたつを並べると同一人物の作品とは思えないくらい異色のものを描かれますよね。
END:そうですね。どちらも自分の大好きなテイストなんです。少し前の個展では和のテイストの絵を展示しました。和紙の上に線描画を描いたものなんですけど、これはもう、完全に自分の好きなものを好きに描いたもので。あと、和の絵を描くときには“縁起物”を描くのが好きなんです。達磨とかカエルとか、そういう古来から縁起を担ぐ存在として言い伝えられているものを。

 

 

HDM:基本的にモノクロであることにも、何か意味があるんですか?
END:どうだろう?そんな深い理由はないんですけど、単純に白黒が好きなんでしょうね(笑)。昔から、派手でガチャガチャしたものより、スッキリとしたものが好きなんですよね。

 

HDM:キャラクターやアイコンがお好きのようなんですけど、今までにもいろんなオリジナルキャラクターを描かれていますよね。これらのキャラクターたちはどうやって出てくるんですか?
END:これにはまったく深い思索も長考もなく、本当にふとした瞬間に頭に出てくるんですよ。例えば「ライスくん」だと、お米を見てそこから着想して…っていう、本当にそんな妄想の産物で(笑)。

 

HDM:海外では幼児がよく「イマジナリーフレンド」と呼ばれる、自分の脳内で創りだした妄想の友達と一緒に脳内で遊んでいると聞いたことがあるんですけど、それに近いですね(笑)。
END:へー、そういうのがあるんですね?うん、それに近いかも知れない。…え?ちょっと待って、それってヤバくないですか?40代の男が、幼児と同じように妄想キャラクターと脳内で遊んでるって、それ相当ヤバいですよ(笑)。ダメですよ!アブナイ!

 

 

HDM:(笑)。ところで今回、自身の作品集『START FROM END』第4弾が発売されるそうですが、どのような内容に?
END:基本は3年くらいを目処に画集を出してるんで、前に出した2014年の画集からちょうど3年間で描きためたアートワーク集です。内容もフライヤーからTシャツ、ジャケットカヴァーなどのアートワークや、今回の画集用に描いた絵などが中心ですね。

 

HDM:継続は力なりではないけど、こうやって作品集を4冊も出せたことについて何か思うとこはありますか?
END:そうですね、本当にアッという間の年月がすぎて、気づいたら絵がめちゃめちゃ増えてたっていう。好きなことを好きなだけできるのって最高ですよね。まだまだ描きたいものが多すぎて永遠に描いていきたいですよ。人にはいろいろな美学があると思うのですが、今のご時世、SNSなどで「自分」を簡単に人へアピールできる本当に便利な時代です。だからこそ逆に個人のスキルや世界観、面白みなどが厳選されるってことも同時に感じます。やり始めて「自分はこういうことをやってます!」っていうのは簡単ですが、その表現していることをどれだけ見てる人達が共感持てて、どれだけの人が自分のアートに興味持ってもってくれるかが大事なんですよね。結局、そういう人たちが自分の絵を気に入ってくれてるわけなんで。だから「好きなことを楽しんで続ける」…これが一番大切なことだと思いますよね。これからも5冊、6冊と出していきたいので、毎日想像を膨らませて絵を描いていきたいです。

 

HDM:2018年の抱負や展開は?
END:今年も作品を増やしてどこかで個展をやっていきたいなと思います。みんなを驚かせる作品を描きたいので、今からひっそり準備してます。ハードコアのフライヤーやジャケット、Tシャツアートなど今年もたくさん描きますので、ぜひみなさんチェックしてみてください。2018年も“NON STOP ART”ってことで!

RELEASE INFORMATION

END|90年代のハードコアやアンダーグラウンドカルチャーの匂いを継ぐアート

END / START FROM END4
64頁 / A4
限定400部
3000円(税別)
2018年1月26日

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