吉住海|人体の構造に魅せられた美しきドローイング

吉住海|人体の構造に魅せられた美しきドローイング

interview by CHINATSU MIYOSHI

彼のドローイングを初めて見た時、その繊細さと緻密さに驚いた。彼は現在、服飾専門学校に通う学生で、これほどの技術と感性があっても今のところ明確に絵描きを志しているわけでもなさそうだ。ドローイングは呼吸のように彼の日課となっている。暮らしの視界の中に入ってきた美しい曲線や筋肉の隆起に挑発されるように、ペンを走らせる。その日々が、意図せず彼の絵のクォリティをどんどん向上させていっているのだと思うと、腕やセンスをあげる為に必要なものは、よく聞く「血の滲むような努力と鍛錬」だけというわけではなさそうだ。ほとんどフェティシズムに近いような羨望や執着心、愛着に敵う“努力”などあるのだろうか。

 

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HDM:今は19歳だったよね?

吉住海:はい。今は服飾系の専門学校に通いながら、アルバイトをやっています。

 

HDM:家族について聞いてもいい?

吉住海:両親が友禅染めの職人で、空間デザイン業界とアパレル業界で働いている2人の姉がいます。

 

HDM:クリエイティブな家系だね。ファッションの世界に向かおうと思ったきっかけって何だったの?

吉住海:一番上の姉が美術系の高校のデザイン科に進学して、そこで学んでいたことがすごく面白そうだったんです。それで、僕も同じ高校のファッションアート科に進学しました。そこから現在の服飾専門学校に進んだんです。僕が好んで描いている絵は、雑誌から抜粋した海外のコレクションで見るスーパーモデルが多いんですけど、素材として外資系の雑誌を見ているうちに、ファッションというクリエイティブに興味が出てきたんですよね。

 

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HDM:どうしてスーパーモデルが好きなの?

吉住海:造形美として、同じ人間とは思えないほど美しいというのが一番魅了されている部分ですね。骨格も含めて描いていて楽しいし。日本はカワイイ文化がもてはやされるけど、世界基準ではもっと精巧な、格好良い存在感が重宝されているように感じていて。筋肉の隆起とかラインとかを緻密に描き込むことが好きなので、電車に乗っている時にも、つい目の前に立っている人の身体のラインを見て…手が動くというか「描きたい」って衝動に駆られますね。

 

HDM:フェティシズムに近いね。

吉住海:はい(笑)。

 

HDM:現在はファッションの専門学校に通っているけど、これだけの画力があるのに絵の道には進まないの?

吉住海:実はいま…少し考えていて。最初はまったくそのつもりはなかったんです。絵で食べていけるなんて思っていなかったですし。専門学校では、いまはパターンを引いたりファッションの基礎を学んでいるんですけど、楽しい反面、精神的には絵を描いている方が楽しいって思えてきて。

 

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HDM:そう言えば、海外の雑誌からイラストのオファーが来たんだよね?

吉住海:はい。アメリカで創刊されたばかりの『ベーシックマガジン』という、ファッションとアートの雑誌なんですけど、僕のインスタグラムを見た人からダイレクトメッセージが来て。内容はハイブランドのコレクションの写真を絵に起こすという作業だったんです。全部で7つのスタイリングを描いたんですけど、自分の好みじゃないルックを描くのは、すごく筆が遅くなりましたね(笑)。でも、いい経験になりました。

 

HDM:絵はどれくらいの頻度で描いているの?

吉住海:絵は毎日描いていて、やっぱり描くことが一番楽しいですし、描けば描くほど上達していくのが面白いです。

 

HDM:周囲に描いた絵を見せた時、何か言われる?

吉住海:通っている学校の先生には…「あなたの絵は面白くないね」って言われました(笑)。

 

HDM:ムカつくね(笑)。

吉住海:(笑)。でも、自分でも特徴が無いなって自覚はあるんです。

 

HDM:それは、雑誌の写真を模写しているだけ、という意味で?

吉住海:それもあるし、それ以外に描くものでもオリジナリティが無いっていうか。どうやったらそれは手に入るんだろうって思いますね。

 

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HDM:難しいよね。人がやったことを上からなぞっているだけでアーティスト面してるクソもいるもんね。好きなペインターはいるの?

吉住海:ミュシャ(アルフォンス・ミュシャ/1860年生まれ。アール・ヌーヴォーを代表するペインター。ポスター、カレンダーなど多くのデザインを手掛けた)は好きです。あとは、画家というより、好きな作品がいくつかあります。オリジナリティを持つことに成功した画家やデザイナーは、その独自性を必要とされた作品やコラボレート作品などを手掛けられているじゃないですか。それがすごく羨ましいなと思います。

 

HDM:著名なモデルとかブランドも含めて“アイコン”を使うという手法は、それこそアンディ・ウォーホルがその大きなパイオニアと言えるのかも知れないけど、それも「ウォーホルが描いた」というバリューがあってのことだもんね。アイコンだけなら、誰にでも描けるものだし。

吉住海:そうなんですよね。自分が描くことによる価値は、どうやってつけることができるんだろうって、今はまだ全く自信がないんですけど(笑)。

 

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HDM:でも、やり続ける価値はあるよね。あなたの、この高い技術を隠さないように。

KAI:今はまだ、評価してもらいたいが為に描いているというところも大きくて。インスタグラムに載せるのも、このイラストのモデルさんに「イイネ」されたら嬉しいな、とか。そういう気持ちもあって(笑)。

 

HDM:実際にイイネもらったことある?

吉住海:はい。有難いことに沢山あります。ブランドでは、MOSCHINO、MARC JACOBS、TOMMY HILFIGER、VALENTINO、KEITA MARUYAMAなどです。モデルではALESSANDRA AMBROSIO、LILY ALDRIDGE、SARA SAMPAIO、KARLIE KLOSS、TEDDY KWEENLIVAN、MARTIN CONTE、福士リナ、MARJAN JONKMAN、KATHERINE MOORE、LINE BREMS、JAC MONIKA、LAUREN DE GRAAF、多分ここらへんはパリコレなどで活躍しているモデルさんで知らない方も多いかと思いますが。あとVALENTINOとMOSCHINOのインスタ公式にイラストを載せていただいたこともありました。有名な方々なのでお時間もない中たとえ1秒でも自分の絵を見て評価していただいたのだと思うと嬉しいですよね。VALENTINOは大好きなブランドなので、公式アカウントで見つけた時は心臓が止まりそうでした(笑)。海外のブランドはファンからの絵をよくリポストしています。やはり日本よりも芸術に対して強い関心があるのかなと思います。日本人は肩書きがなければなかなか評価してくれないと思いますね。良いと思ったものはたとえ僕みたな一般人でも堂々とリポストしてくれるのですから。雑誌の依頼もそのいい例だと思います。

 

HDM:個展や展覧会はやらないの?

吉住海:通っていた高校の先生がカフェギャラリーを持っていて、そこを無料で貸してくれるってお話をいただいたので、時間があればやってみたいなって考えています。

 

HDM:これから何でもできるよね。何かやってみたいことはあるの?

吉住海:パリとかニューヨーク、とにかく海外には今すぐにでも行きたいくらいなんです。海外のクリエイティブのレベルに触れてみたいって思います。

ARTIST INFORMATION

吉住海

1997年神奈川県横浜市生まれ、京都府育ち。2016年京都市立銅駝美術工芸高等学校ファッションアート科卒業。2017年現在上安子服飾専門学校ファッションクリエイター科在学中。
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