ELLE TERESA|ヒップホップ生まれヒップホップ育ちの新世代ラップ談義

ELLE TERESA|ヒップホップ生まれヒップホップ育ちの新世代ラップ談義

interview & photo by BUNDAI YAMADA

ELLE TERESAのインタビューは念願だった。普段はあまり日本人のヒップホップを聴かない付き合いの長いDJから、アップされたばかりの『Coca Cola』(2015年10月)のYouTubeを教えてもらったのが、ELLE TERESAの存在を知った最初だった。どんな曲かは説明するまでもない。Diplo X CL X RiFF RAFF X OG Macoの“Doctor Pepper”のビートジャック。コカインでもペプシコーラでもない、純粋にコカコーラの歌。ノリが適当で良かった。まだ10代とのことだった。それから少ししてWOOFIN’の編集者に会った時、「日本で今気になるラッパー」という話になり、ELLE TERESAの名を答えると、残念そうに「つい最近自分でインタビューしてしまった」と言われた。そして、出たばかりのELLE TERESA最初のミックステープ『Ignorant Tape』を送ってくれた。

 

その後、ELLE TERESAが客演に参加しているYuskey Carterの『YABAI』がYouTubeにアップされているのを見た。「タトゥーを入れる昔の彼氏/一生残る私の名前入り/ごめんね、結婚とか無理」と水鉄砲を片手にビーチでラップするELLE TERESAは相変わらず良かったし、「X JAPANのHIDEみたいに自由」と、HIDEのTシャツを着たYuskey Carterがラップしているのも良かった。

 

初めてELLE TERESAとYuskey Carterに会えたのは、今年、土浦で開催されたゆるふわギャングのライヴだ。この日の目的はゆるふわギャング。ステージ上のRyugo IshidaとSophieeは眩かったが、更にELLE TERESAのライヴを見ることができ、個人的に得した気になった。この夜、ELLE TERESAとYuskey Carterにインタビューのオファーをして、2年越しの念願が実現した。

 

 

HDM:普段は2人で音楽を作っているんですか?

ELLE TERESA:レーベルは一緒なんですけど、お互い個人個人でやってる感じですね。2人の名義の曲以外は基本1人で作ってます。

Yuskey Carter:もともと、自分は仲間と『FLY DUNK』というレーベルをやっていたんですけど、エルが出てきたくらいのタイミングで、自分の名前にちなんだ『West Carter Music』というレーベルを始めました。このレーベルを始めたのが『Coca Cola』の時からです。

 

HDM:ELLE TERESAさんがラップを始めたのはいつからですか?

ELLE TERESA:1年半くらい前ですね。

Yuskey Carter:『Coca Cola』がラップを始めて半年ぐらいじゃない?

 

 

HDM:何かキッカケがあったんですか?

ELLE TERESA:エルは元々ダンサーだったんですよ。

Yuskey Carter:その時に俺のビデオに出てもらったりして。一緒にいる時なんかにエルがよくKOHHとMony(Horse)の歌を歌ってたんで、「自分でやってみれば?」と言ったんです。ビートジャックのやり方から、こういう風にやってみなって。そうしたら1カ月で10曲くらい作ってきて、「こいつヤベエな」って。そこからですね。

ELLE TERESA:最初にKreayshawnの『Gucci Gucci』のリミックスを作ったんです。『Ignorant Tape』に入っているアレが1番最初に作った曲です。

Yuskey Carter:そっからかな。それで自分のアルバムに速攻で入れて。それが今から2年くらい前ですね。

ELLE TERESA:エルが17歳の時ぐらいです。

 

HDM:高校は行ってたんですか?

ELLE TERESA:行ってたんですけど、なんか辞めましたね(笑)。なんだろうな。高校卒業して意味あんのかなって。やりたいことやって成功すればいいやと思って辞めました。

 

HDM:潔いですね(笑)。

ELLE TERESA:ぶっちゃけこれで成功しなかったら10年20年後、コンビニとかでしか働けないし。だから本当にこれで成功するしかないんですよ。

Yuskey Carter:俺は高校だけは卒業しろって言ってて、エルも「行ってる行ってる」と言ってたんですけど、実は行ってなかったっていう(笑)。

ELLE TERESA:(笑)。でも高校卒業してる人は尊敬します。エルは中学とかもちゃんと行ってなかったし。だから(音楽に)必死になれるっていうのはありますけど。

 

HDM:ご両親は理解があったんですか?

ELLE TERESA:エルが中学の時に離婚しているんですけど、もともとお父さんもお母さんもダンサーで。お母さんがスタジオの経営者で、それでエルもずっとダンスをやっていた感じですね。お母さんに教わっていたというよりは、スタジオなんで講師もいっぱいいたし、その講師の人たちに教わっていました。昔からTLCとか、BIGGIE、2PAC、REDMAN、METHOD MANを超聴かされていたんです。

 

HDM:それはある意味英才教育ですね。

ELLE TERESA:正直最初は日本語のラップには抵抗がありました。っていうか、日本語ラップの曲を全然知らなかったんですよ。でも、「やってみなよ」と言われて、自分でやってみたら良いかもと思って。それで始めたんですけど。エルの曲と昔の日本語ラップって違うと思うんですよね。それは日本語ラップを聴いてこなかったからかもしれないです。

 

HDM:ヒップホップでは、誰の曲が好きなんですか?

ELLE TERESA:え~、なんだろうな…でもその、REDMAN、METHOD MANは結構好きでした。

 

HDM:そんな19歳最高ですね。

ELLE TERESA:ずっと親に聴かされてて、中学くらいまでは「毎日こんな曲聴かされてマジでなんなの?つまんねぇんだけど…」と思ってましたよ。スタジオにはDJブースがあって、レコードとかも凄いあって…みたいな環境だったこともあって、お父さんがそういう音楽をよくかけていたんですけど。

Yuskey Carter:俺はエルのお母さんの方が先に知ってました。エルも中学くらいの時からクラブにいて、その時くらいにはもう知っていましたけど。

 

HDM:ELLE TERESAさんはクラブにずっといたんですか?

ELLE TERESA:そうですね。クラブくらいしか楽しいことがなかったかもしれないです。

Yuskey Carter:それで面白いと思って、当時、地元のヤツらを50人くらい集めてPVを撮ったことがあるんですけど、その時に女の子はエルが1人だけいて…みたいな、そっからだよね。

ELLE TERESA:そっからだね。その時は15歳。まだ高校入るか入らないかくらいだと思います。

 

 

HDM:ひとつひとつが早いですね。それでも90年代のヒップホップを通りつつ、ここ最近はトラップが面白いんですか?アルバムのタイトルも『PINK TRAP』ですね。

ELLE TERESA:トラップをやりたかったですね。別に昔の曲を聴いても忘れないし、普通に好きですけど。またそういう音楽をやりたいと思うかもしれないし、別にどれをやらなきゃいけないっていうのはないと思ってるんですよね。いつもその時にやりたい音楽をやればいいかな。今回はこういう音楽をやりたかったって感じです。ただ、エルのイメージ的にはトラップは、21 Savageみたいなちょっと男男したサグい感じがあったから、それをエルがやったらどうなるのかって。その時に『PINK TRAP』という言葉が思いついたんです。ピンク好きですし、だからタイトルは「女の子のトラップ」って意味かな。『Ignorant Tape』はYuskeyが考えてくれたんですけど、『PINK TRAP』は私が「コレがいい」と言ったんです。意味は特に無い、みたいな。

Yuskey Carter:いいじゃん、「エルの罠」みたいな感じでって。

 

HDM:確かにいいですよね。甘い罠って感じでイメージが湧きます。ビートジャックも含めて、女の子が日本語でトラップをやっているのを聴くのは新鮮でした。

Yuskey Carter:こんなことを言ったら怒られるのかもしれないけど、ヒップホップはミーハーな音楽だと思ってるんですよ。他の音楽に比べて、フロウの仕方も乗り方も動きもそうだし、ファッションもそうだし、どんどん変わっていく。自分自身もミーハーなんで、それをただ追うってことじゃなくて、合わせていかないと追いていかれる部分はあると思うんですよね。

ELLE TERESA:例えばちょっと前まで、みんなふっといパンツだったじゃないですか。で、急に細くなった。で、また太くなってるんですよね。A$AP Rockyとかも、太くなったり。だから、マジで回るんだなと思いました。音楽に関して言えば、エルも今はトラップをやりたいと思ってますけど、ヒップホップは今どんどん歌っぽくなってるというか、どんどん、なんでもありみたいになってる。LiL PEEPわかりますか?歌手なんですけど、そういうのが最近は興味ありますね。超カッコいい。

Yuskey Carter:パンクみたいな感じだよね。自分たちの世代の環境は、またエルとは全然違うんです。俺は2PAC、EMINEMを聴いていた世代でしたけど、Diplomatsを知って、ここでまた1段階変わったじゃないですか。あそこら辺で超ヤベエってところから、次はいきなりA$AP Rockyが現れて、それでまた変わってみたいな。それに合わせて、ファッションもどんどん変わっていってるし。新しいヤツらはどんどん現れてくるんで、それを受け入れないといけないなって。最近は縦の感じがなくなってきてると思いますけど、それでも日本のシーンでは上の人たちはあんまり下のヤツらと絡んだりとか、そこまでしないですよね。外人とかは若いヤツが出てきて、いいなと思ったら速攻でフィーチャリングする。そういうことをやっていくと上の世代もそれを取り入れて新しいことをできるし、そうやってどんどん変わっていくのがヒップホップかなと。エルが出てきた時も「なんだこいつ?」って人も多かったと思うんですよ。今になってだんだん認めてきてくれているけど、実際自分の周りのヤツらにしても「う~ん?」って感じだったし。でも俺は絶対こいつヤバいって初めから思ってやってました。やってみないとわかんないなって。女の子に関しては、外国だったらMissy Elliotがいて、あれはちょっと男系のスタイルで。そこからNicki MinajとかIggy Azaleaだったり、ちょっと可愛い、ポップなラッパーが出てきた。女の子は女の子っぽいキャラっていうのがあったけど、日本人の女の子のラッパーには、エルみたいなタイプは俺の知っている限りはいなかったんですよね。だからこれまで女の子のラッパーと一緒にやりたいと思わなかったんですよ。初めてエルだったらいいな思った。やっぱ男じゃ書けない、単純に「なんとかだわ」とか、これ男には言えないなっていうのをバンバン出してくる。

ELLE TERESA:エルが思っていたのは、女なのに「だぜ」とか、「私はよー」みたいな。「なんでそんな言い方するのかな?」って、そういうことは感じてました。「だぜ」とか言わなくない?女なのにって。

 

HDM:ELLE TERESAさんには無理してる感がないですよね。確かにフィメールラップで、あえて男の土俵で勝負しているのを聴くのはしんどい部分があるのも確かで、それだったら自分の土俵を作った方がいいというか。

ELLE TERESA:なんかエル、めちゃくちゃ負けず嫌いなんですよ。絶対謝りたくないし。ヒップホップってちょっと前まで、女の子は男の子に憧れて、男の子の言葉を使ってラップをするみたいな。それって結局「男に負けてるじゃん」って思うじゃないですか。やっぱり男社会なんですよ、アメリカとかを見てても思うし。それがマジでエルはイヤで。「なんで男社会なの?」みたいに思っちゃうし。それを塗り替えたいですね。「男社会の音楽ヒップホップ/意味がわからない/主役私/ちょい役は無理」(『Make Up』)ってリリックでも言ってますけど。男を見下してるとかじゃなくて、エルが主役になりたい。そういう気持ちはありますね。男を音楽でまくってやりたいっていう。女が主役になりたい。女を売ってる女の子のラッパーがもっと出てきたら面白いなと思うし。でも、そこでもエルが1番でいたいって思うけど。

 

 

HDM:男女関係なくラッパーは絶対「自分が1番カッコいい」と思っていてほしいですね。

Yuskey Carter:昔、先輩に「自分に自信持ってないヤツがアーティストをやっていても、自分がカッコいいと思ってないのに他の人がカッコいいと思うわけがない」と言われたことがあるんですけど。自信を持ってやらないと、結局誰が見てもカッコよくないですよね。

ELLE TERESA:エルは早く男たちをまくりたい。

Yuskey Carter:うるせぇ(笑)。

ELLE TERESA:普通にそうじゃない?なんだかんだ「女だから」ってなるっていうか「やっぱ女じゃん」みたいな。「女だから何?」みたいな。ソフィソフィ(Sophiee)とも結構そういう話をしてます。

 

HDM:アルバムの後半13曲目の『FUCK MORNING』辺りの流れが個人的には好きなんですけど、ここら辺も女の子にしか歌えない世界観が表現されているというか。『Make Up』も女の子しか書けないトピックですし、ゆるふわギャングを客演に招いた『CHANEL』の「シャネルは裏切らない」というリリックも独特のラインですよね。やっぱり、この言葉は男には出てこない。

ELLE TERESA:シャネルは裏切らないですよ。シャネルは永遠だよね。でも、シャネルは小物しか持ってないんですよ(笑)。ウォレットが欲しいんですけど、高いので。

 

 

 

HDM:そういう、好きなものに忠実というか、感情に素直な言葉。その感覚自体のセンスがいいんだと思います。それは一種の才能ですね。

ELLE TERESA:ないですよ才能なんて。未だに自分の曲に疑問っていうか、声の質とか、自分でもやっぱりなんか違和感を感じる時はあるし。まだ完璧じゃない。みんながエルに違和感を持ってるように、エルも自分にそう思う時があるというか。たまに「こんなんでいいのかな?」と思う時もあるし。でも、それがエルなのかなと思う。

Yuskey Carter:ビートジャックすると基本的に結構ディスられるんですよ。俺らがやるビートジャックって、外人のフロウをそのままやってるんですけど、要は…何て言うんですかね…ビートジャックというよりはカバーというか、フロウは一緒でそれを日本語に変えてるだけなんですけど、それをやるとディスってくるヤツとか多いんですよね。でも、俺らからしたら、それはフロウを吸収する遊びの感覚なんです。

ELLE TERESA:みんな1曲1曲に対して深く追い求め過ぎだよね。

 

HDM:世代独特のセンスなのかもしれないですが、そう言い切れること自体、僕はオリジナリティを感じます。ただ適当でもエモい部分はしっかりあって。最後の曲『Bad Bitch 19 Blues』にしても、安室奈美恵さんを好きでこういう曲ができたというのが伝わってきますし。これはなかなかできないと思います。

ELLE TERESA:好きですもん、むっちゃ。

Yuskey Carter:本当はPVも出そうと思ったんですけど、色々考えてやめました。結構いろんな人に言われて、マズイかなって(笑)。

ELLE TERESA:ストリートだからね。でも、(安室さんにも)聴いて欲しいですね。

 

HDM:こういうモロに女の子曲を作る時って、特に気持ちというかモードの切り替えみたいなのってあるんですか?

ELLE TERESA:ないですね。普通にビートが来て、「あ、これこういう系だな」って。その時に思ったことというか。リリックに関しては、ただ「これ嘘じゃん」と言われるの嫌だから、ちゃんとあった出来事を歌ってる。嘘を吐きたくないし。エルの曲に「タトゥーを入れる昔の彼氏/一生残る私の名前入り」ってリリックがあるんですけど、本当にエルの名前を入れた元彼が2人いて、手彫りで(笑)。中学生の時の話ですけど。そういうのをリリックにするのが結構好きですね。そういう実体験を形に残しておきたいんです。やっぱ忘れるじゃないですか、そういう出来事って。だから、言ったら、もう日記ですよね、本当に。

 

 

HDM:このリリックは刺さりました。入れた元彼の方が刺さったと思いますが(笑)。

ELLE TERESA:多分超刺さってると思います、彼らからしたら。「こいつ書きやがった」って(笑)。

 

HDM:(笑)。今後さらに活躍して、存在がでかくなったら、それも勲章ですね。

Yuskey Carter:そいつらの為に頑張るしかないよね。

ELLE TERESA:なんでそいつらの為に頑張んなきゃいけねぇんだよ(笑)。

 

HDM:まぁそれはそうですね(苦笑)。「生意気それが私/ムカつくし言うよ正直」(『反対の反対』)とリリックでも言ってますし、本音だから聴いていても感じ悪くないからいいです。まさに嘘を吐いてないのが伝わる。

Yuskey Carter:ミックステープにはそういうアホな曲というか、要素を1個は入れたいんですよね。Diplomatsとかもフザけてるの多いっぽいし。ギャグっぽいけど、カッコよければいいというか。ヒップホップはカッコよくなきゃいけないから。

ELLE TERESA:なんか、ヒップホップジョークみたいな。例えば私たちの『世界はマネー』もリミックスなんですよ。『$ave Dat Money』って曲があって、それを歌ってるのはLil Dickyって名前のコメディアンなんですけど、むっちゃ曲もカッコいいんですよね。

Yuskey Carter:ミックステープは、カッコいい曲、恋愛ソング、爽やか系とかがあっても、面白い要素を1個は入れたいとは考えています。フザけてる要素もヒップホップには入ってると思うので。

 

 

HDM:Yuskeyはエルさんの曲にヴァース入れる時、意識することってないんですか?エルさんは新鮮な天然素材だし、温度を合わせるのに苦労があったりとか…。

Yuskey Carter:エルの曲にヴァースを入れる時に意識することは…まったくないですね。っていうか、俺が育てたんで(笑)。

ELLE TERESA:言うねぇ~。でも全部適当だよね。適当に作ってても、「超いいな」って曲は全然出てくるし。全部適当だから、「これ!」みたいなのないです。「これきた!」みたいな。そういうのは力んじゃって逆に良くなかったりするし。

Yuskey Carter:適当に作った方がいい曲ができる時はあるよね。難しい言葉を使うとダサいっていうか。そういうのは結構最近思ってることですね。いかに日常的な言葉をカッコよく聞かせるか。自分が聴いていても、普段使わない言葉がいきなりリリックに入ってくると「ウッ」と思っちゃうし。そういうのはありますね。だからエルと作る時に、特に意識していることはないけど、適当でいいやっていう。自分のソロより気が楽っていうのはあるかもしれないです。

 

HDM:なるほど。2人の音楽を聴いていると、いい意味で向き合わなくていいというか、純粋にBGMとして聞き流せるみたいなのは、今の2人の話に理由があるのかもしれないです。言葉だけでなく、声の、音の要素の魅力が強いというか。

ELLE TERESA:ガヤとか。MadeinTYOってわかりますか?

Yuskey Carter:Big Seanと曲をやったりしている。

ELLE TERESA:MadeinTYOが所属している『Privateclub Records』名義で『Vroom』って曲があるんです。この曲はそこまで売れてはないですけど、フックが「フェラーリサンフェラーリサンフェラーリサンヒューン」ってやつで、これって「フェラーリサウンド」が「ヒューン」って言ってるんですよ。フェラーリが通る音みたいな(笑)。ただそれだけなんですけど、カッコいいんです。こういうのは結構パクりますね。

Yuskey Carter:俺らはそういう吸収は早いよね。

 

 

HDM:確かにそれを寝かせても仕方ないですもんね。

Yuskey Carter:本当にナマモノなので早く出さないと。リリックでも先に出したもの勝ちだと思うんですよ。真似した真似されたの世界だと思うし、外人もそうだと思うんですけど、誰が早くやったのかっていう。だからできたら本当にすぐ出したいし、服でも新しいのを買ったらすぐ着たい。もったいぶっても意味わかんないし。俺がエルを凄いと思うのは、ペースが本当に超早い。とにかくサボらないっていうか。

 

HDM:1番良い時に出したいと狙ってるうちに終わっているケースもありますもんね。

ELLE TERESA:そうですよね。片付けとか一応やるんですけど、苦手なんですよ。本当に自分の好きなことしかできないので、毎日できるということは、本当に音楽が好きなんだなって思いますね。もうずっと曲を作ってます。なかなか自分が好きでやりたいことって見つからないじゃないですか?だから今、好きなことをやった方がいいなって思うかな。その好きなものが1年後は好きじゃなくなってるかもしれないし。

Yuskey Carter:よく話すんですけど、暇すぎちゃって曲を作ってる時が1番楽しいんですよね。2人とも音楽か服かしか好きなものがない。

ELLE TERESA:あとは(撮影もインタビューも一緒だった)犬と。普段何をしてるのか謎っていうのは結構言われるんですけど、なんか曲作るのが今ある遊びで1番楽しい。苦じゃないんですよね。

Yuskey Carter:確かに遊んでるって感じだね。でも、Wiz KhalifaとかLil Wayneみたいな理想の作り方には近づいているのかな。アイツらも多分曲作るのが1番楽しいみたいな感じっぽいじゃないですか。その感じがいいよね。ずっと曲作ってるのがいい。

 

HDM:『PINK TRAP』はいつから作っていたんですか?

ELLE TERESA:本当は去年の12月にリリースするつもりだったんですけど、2月になってしまったんですよ。その間に周りでトラブルがいろいろあって。でも、実際は9月くらいに作り始めて、11月の時点でレコーディングは全部終わってました。

Yuskey Carter:『PINK TRAP』のジャケットの写真とか『Baby Tell Me Now』のPVを撮ってくれたのが、マイアミの友達なんですけど、滞在期間の問題で終わる前にギリギリのところで帰っちゃって、日本と違うからデータの入稿がやり方がわからないみたいな(笑)。そういうこともあったりして遅れたんです。

 

 

HDM:そうは言っても、曲数も20曲と少なくないのに2カ月かからずにできているわけですから、リリックは変わらず悩まずに書けてる感じなんですね。

ELLE TERESA:そうですね。あんまり深く考えないようにしてます。自分がめちゃくちゃ考えて書いたようなリリックって、人に伝わらないと思うんですよ。自分が考えなきゃいけないのに、人に伝わるかって言ったら絶対に伝わんないから。だから小学生でもわかる英語とか、そういうのじゃないと。トピックがどんどん増えていったらいいなとは思うけど、それはなかなか難しいな。

Yuskey Carter:その日に起こったことを書くというよりは、その時に思ってることを書く。そういう感じだよね。地方に行かしてもらった時も、ホテルで曲を作ったりするんですよ。そういう方がいいっていうか。Keith Apeが来てた時も、その場で録ってましたね。海外のアーティストは割とそのスタイルっていうか。Lil Wayneのドキュメンタリーを見ていても、移動中でもマイクを立てて録ったりするじゃないですか。あれを見た後にKeith Apeと遊んで、アイツらもそういう感じだったんですよ。Keith Apeは自分でずっとビートもいじってて、そこにOkasianとかもいて。その後にゆるふわと遊んで曲を一緒に作ったりしてたんだよね。そういうこともあって、また更にバンバン作れるようになった。

ELLE TERESA:なんかその方がリアルっていうか。例えばそこにいる人が、エルの作ったリリックを聴いて、「あ、これリアルじゃねぇな」ってなったらダサいじゃないですか。その場で周りにあることを明確に書けているかどうかだったり、そこの場面だったり。どこにいるかとか、そういうのがわかった方がおもしろいと思うんですよね。

Yuskey Carter:エルのリリックって聴いていて情景が思い浮かぶんですよ。それが凄いな。俺もいい意味で、そういう部分を吸収できてるし、一緒に作っていても面白いですね。自分たちも新しいこと、他のヤツらがやってないことを常にやりたいと思っているので。

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