RYO the SKYWALKER|“原点回帰と刷新”今の自分に忠実になり生まれた作品

RYO the SKYWALKER|“原点回帰と刷新”今の自分に忠実になり生まれた作品

interview by CHINATSU MIYOSHI photo by JUNYA S-STEADY

ジャパニーズレゲエというまったく新しい音楽・カルチャーが日本を席巻し、いわゆる“ムーブメント”を起こした最重要人物の1人がRYO the SKYWALKERだ。強く攻撃的であり、ときに色っぽく飄々と飛び回る、まさに変幻自在のスタイルを持つ彼の存在の仕方は、現在まで多くのオーディエンス、そしてアーティストたちをも魅了してきた。最新作『SUPER DANCEHALL ME』のテーマの大きな軸になっているのが“心機一転”という言葉だ。これまでのキャリアで確実に自分の手の中にあるもの、そして今は必要のないもの、今から手にいれるべきもの。あらゆるものをもう1度見つめることで刷新された自己が、この新たな楽曲すべてに詰まっている。人生は続けば続くほど、その内容はどんどんシンプルになっていくのが理想だ。特に、自分のアイデンティティに関しては。

 

 

HDM:アルバムの資料に「心機一転」「自分を見つめなおして」という気になるキーワードがあったから、それって原点回帰と刷新、どちらの意味なんだろうって気になっていました。

RSW:なるほど。改めてそう聞かれると、そう言えばどっちの気持ちもありますね。テーマというか、制作している途中で見えてきたものが「自分」と、あとは「リセット」なんです。1度ゼロにして、ストレートに自分とレゲエという音楽に向き合ってみて、今何ができるのかっていうことをまたここから始めてみたいと思って。そうすることで自分の役割を再確認したいとも思ったんですけど、それって原点回帰でもあるし、同時に刷新でもあると思いますね。そこに辿り着いたからこそ、今回のアルバムのタイトルが『SUPER DANCEHALL ME』になったんですけどね。

 

HDM:それってすごくシンプルなタイトルだなと感じました。

RSW:レゲエシーンも凄く裾野が広がっているし、レゲエという音楽ジャンルも一般的に認知されるようにまでなってきましたけど、自分という軸に立って改めて考えてみると、俺にとってのレゲエはやっぱり“ダンスホールレゲエ”が主体にあるし、それが自分のスタイルの看板にもなっていると思う。過激な部分も含めて、レゲエが持っている面白さっていうものを特に強く感じるものは、自分にとってはやっぱりダンスホールレゲエやし。レゲエというひとつの括られたジャンルではあるけれども、グローバルミュージックとしての魅力も凄くありますから。そこを強調したかったっていうのはありますね。

 

HDM:10数年前に“ジャパレゲ”というジャンルが確立されるほど大きなムーブメントがあったことが今に繋がっていると思うんですけど、そのムーブメントを起こした中心の1人としてRYOさんはいらっしゃいました。レゲエというコアなジャンルにここまでのポピュラリティを持たせたというのは大きいことでしたよね。

RSW:それはね、当時から自分が少し意識していたところでもあったんですよ。ポピュラリティを持たせようと言うよりももっと単純に、レゲエに触れてもらうための階段役として自分と自分の音楽があったらいいな、くらいの感じで。日本語を使った面白いDeeJayスタイルを世の中の人たちに見せたら「なになに?」って、面白がって寄って来てくれるんちゃうかなって思ったから。

 

 

HDM:そのポピュラリティは、今でも…今作でも重要視されていたんでしょうか。

RSW:うん。でも、昔に比べたら今はレゲエのスタイルも出揃っていて、その数あるうちから聴き手が好きな人を選べる状況になっているんだと思うから、そうなると自分はもっとシンプルに、自分が思うレゲエのアティテュードに沿いたいと思って。そこをもう1度突き詰めたいっていうか。

 

HDM:「リセット」というと、具体的に何を残して、何を置いてきたんでしょうか。

RSW:結局はね、1番の核の部分っていうか…自分ができるのはこれまでずっとスタイルとしてやってきた“自分節”やし、そこはブレることはないんですけど、歌うトピックや使う言葉に関してのこだわりも、一旦チャラにしたいなって気持ちがあって。

 

HDM:どういう意味ですか?

RSW:今まで自分が挑戦してきたことのひとつに、テーマやトピックに対して似たような言葉や表現方法をなぞるようなことだけは避けるようにしていたんです。だから、自分のスキルとして「人と違う言葉選び、言葉遊びをいかにできるか」というのが重要だったんですよね。でもそれを経た現時点では、現場仕様のパーティーチューンとかギャルチューンとか、レゲエの定番と言えるトピックでもストレートに「騒げ!」という言葉を使えるようになったと思いますね。ゴチャゴチャややこしくせず、そのままの言葉で。あとは、今までの経験からゴリゴリじゃない歌い方もできるようになってきたのも大きな進化かなって思いますし、歌うトピックも年齢を重ねた今の自分やから言えることというのを優先して考えるようになりましたね。

 

HDM:個人的に、今でも脳裏に強く印象付けられているRYOさんが歌ったフレーズが「ガキがガキ産んでまた死なす(※アルバム『One Man Army』収録曲『HOW TO WALK IN THE SKY』)」なのですが、それこそ堂々と怒りをぶちまけて、容赦なくコキおろす、というのがRYOさんのひとつのスタイルとして見ていました。

RSW:ハハハ!確かに(笑)。このアルバムを作るときに今の自分と対峙したわけなんやけど、そこではね、当時のような攻撃性は出てこなかったんですよ(笑)。もちろん、社会風刺としての曲も怒りの曲も変わりなく歌ってはいるけど、目線感覚で言えば「外向き」より「内向き」になっているから。社会とか環境があって、それを受けた「今のお前は何ができるねん」っていう自問自答ですよね。

 

 

HDM:今作はその内省的なところがすごく出ていますよね。

RSW:そうですね。誰かのために向けた歌もあるけど、大きな部分ではほんまにね、自分に向き合った結果がこの作品という形になったと思います。…でもそうやって言われると、自分でも「そう言えば、最近外に向かって吠えてないなあ」って思いますね(笑)。

 

HDM:「ムーブメント」は、それが過ぎたときの代償というか、落差がどうしても生じるものだと思います。内状としては通常運転に切り替わっただけでも、世間感覚で言うと「もう過ぎ去ったもの」と認知されてしまうのがこの現象の面倒なところだと思うのですが、RYOさんはどちらも経験されていて、現時点ではどう感じていますか?

RSW:もちろん、ムーブメントと呼ばれるものが大きく起こったときには「この状況をどうにかキープしないと」という気持ちもありました。それは確かにあったけど、そもそもムーブメント自体が自分1人で作ったものでも無ければ、自分1人でどうこうできるものでも無いから、ムーブメントが来たり去ったりということをそこまで重要視する必要性もないような気がしますよね。

 

HDM:確かに、全体のシーンは個々のアーティストで作られているから、結局はそれぞれが自立していい音楽をやっていくことに帰着しますよね。

RSW:そうですよね。シーン自体はそうやってできあがっていくものだから、結局は自分がどう存在していくのかっていうことになるんですよね。

 

HDM:RYOさんは現場主義だから、シーンの移行をずっと見ていますし、現状はどう見えていますか?

RSW:そうやね。現状だと、結構ポップスと親和性を持った楽曲が新しい世代には人気なんだろうなというのは感じますね。確かに曲に関しては、今は歌詞よりメロディ重視という傾向を感じてはいるんですけど、僕はDeeJayの、あの独特でギョっとするようなスタイルが好きですし、やっぱりレゲエDeeJayでるある以上は「言葉をもって何かを伝える」ものだと思っているから。

 

RELEASE INFORMATION

RYO the SKYWALKER|“原点回帰と刷新”今の自分に忠実になり生まれた作品

RYO the SKYWALKER / SUPER DANCEHALL ME
BUSH HUNTER MUSIC
MHMR-0001
2800円(税込)
2017年8月2日発売

EVENT INFORMATION

RYO the SKYWALKER|“原点回帰と刷新”今の自分に忠実になり生まれた作品

『SUPER DANCEHALL ME TOUR』

日時:2017年11月10日(金)
場所:名古屋X-HALL -ZEN- / THEATER OSU
時間:開場18時 / 開演19時
料金:前売5400円(D代別) / 当日6400円(D代別)
出演:RYO the SKYWALKER with HOME GROWN

日時:2017年11月12日(日)
場所:大阪CLUB JOULE
時間:開場17時 / 開演18時
料金:前売5400円(D代別) / 当日6400円(D代別)
出演:RYO the SKYWALKER with HOME GROWN

日時:2017年11月19日(日)
場所:東京shibuya eggman
時間:開場17時 / 開演18時
料金:前売5400円(D代別) / 当日6400円(D代別)
出演:RYO the SKYWALKER with HOME GROWN

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