INNER VISION|日本とアメリカ 2人のアーティストによる3日間だけの共演

INNER VISION|日本とアメリカ 2人のアーティストによる3日間だけの共演

interview by CHINATSU MIYOSHI photo by UG special thanks to NAOSHI IMAI

10月6日から3日間だけのアートショー『INNER VISION』が、渋谷WAG GALLERYで開催された。日本、そして海外でも活躍の幅を広げるペインター“HIROTTON”と、彼の盟友であるカリフォルニア在住のアーティスト“BB BASTIDAS”によるダブルネームで行われた今回の展覧会は、HEROINとELEMENTからリリースされた彼らの最新デッキ、そしてこの日のためだけに描きおろされた作品が並んだ。デッキ以外の最新作のほとんどが彼ら2人による“共作”だ。お互いの意思疎通を繰り返し、カリフォルニアと日本を行き来して1枚の紙上に描かれた絵は、BBのサイケデリックでピュアな思想や想像と、HIROTTONの緻密で鮮やかな色彩の融合により、相反と調和の不思議な世界観で成立していた。それはまるで、この2人のアーティストの息の合った即興をライブで観ているような錯覚を起こさせるようなものだった。HIROTTON、BB、彼と共に来日していたELEMENTのファニーなスケーターたち、この特別な機会に立ち会えたすべての人達に大きな感謝を。そして、今回は会場でBB BASTIDASにインタビューを試みた。

 

 

HDM:ペインターになろうと思ったのはいつ?

BB BASTIDAS:17歳のときに、友達とサンフランシスコにスケートトリップに行って多くのアーティスト、ミュージシャンと同じ家に泊まったんだ。そんな経験をしたのはそのときが初めてで。そのスケートトリップがキッカケで自分がやりたいことが明確になったんだ。人生にとって、自分がこの先何をしたいのかが早い段階で知れることは重要だと思う。そして、アーティストとして生きる道は無限にあると思う。それは自分の作品を売って生きるということだけではなくて、グラフィックデザインや、壁に絵を描いたり、映像や写真を撮ったり…今もいろいろな可能性を試しているよ。

 

HDM:あなたの絵は古代や現代、宇宙など、時代や時間、対象などすべてのカテゴリーを超越して融合させたような不思議な魅力があります。まるで、現代のシャガールみたい。

BB BASTIDAS:そうだね…(と言いながら、段ボールの切れ端にペンでスケッチを始める。ピラミッド、エッフェル塔、人間の形など)。俺は小さな頃からUFOとか古代文明にとても興味があるんだけど、きっと多くの人は古代文明がどうして今の文明にまで発展したのかということを真剣に考えてみる機会があまり無いと思うんだ。でも、俺にとってそれはとても興味深いものだし、そのことについてよく考えることがあるんだ。例えば、ピラミッドやエッフェル塔、東京タワーがつくられたことの背景には何か重要な意味があったと思う。以前、パリでエッフェル塔を実際に見たときに思ったんだけど…(エイリアンの絵とエッフェル塔の先端から無数の線を描き足す)これを創ろうと考えた人は、彼の人生とは違う何かとコミュニケーションをとるためにつくったんじゃないかと思ったんだ。

 

 

HDM:もしかしたらそうかも知れない(笑)。不思議なことって沢山あるよね。そういう思考や想像が、あなたの特別な表現に繋がっているんだね。

BB BASTIDAS:うん、俺は物事の背景のことに凄く興味があるんだよ。アートプロジェクトのためにそれを調べたりすることもあるけど、学生の頃に戻ったような感覚なんだ。

 

HDM:あなたはアーティストであると同時にスケーターでもあるけど、日本のスケートカルチャーやスケートシーンはどのように見えている?

BB BASTIDAS:実は、日本のスケートシーンのことはまだあまりよく知らないんだ。俺が知っているのはHIROTTONやCHOPPER、そしてOSAKA DAGGERS。あと、今回ELEMENT JAPANのスケーター阿部涼太、瀬尻稜にも会ったんだけど、あいつらはヤバいね!アメリカのスケーターと似たバイブスを感じたよ。それ以外だと…最近はオリンピックに向けてトレーニングしているキッズが増えたと思う。

 

 

HDM:アスリートとしてのスケーターを育てようという人が増えたということだよね。

BB BASTIDAS:そうだね。それが正しいとか間違っているという話ではないんだけどね。あと、初めて日本の街を歩いてみた思ったのは…みんなSUPREMEのTシャツを着て、綺麗なNIKEの靴を履いて…うん、そんな感じかな(笑)。

 

HDM:その通りだね(笑)。初めての来日が個展で、しかも盟友であるアーティストのHIROTTONとの共作だったけど、今回の展覧会の手応えはどうだった?

BB BASTIDAS:オープニングパーティーには沢山のお客さんが遊びに来てくれたし、みんなが楽しんでいるところが見れたのが凄く良かった。俺たちの作品を見てエキサイティングしてくれたのもとても嬉しかったし、すべてが自分にとって良い経験になったと思うよ。初めての来日だったけど、今回の展覧会は大成功だったと思うよ。

 

 

HDM:HIROTTONとの共作にしたのは何故?

BB BASTIDAS:HIROTTONとは5~6年前にロンドンでミューラルペイントをしているときに共通の友達を通して会ったんだ。それからタイミングが合えば一緒にペイントをしたりしているよ。まず、彼の描くアートのスピードが好きなんだ。そして、一緒にペイントするときの感覚が近いからスムーズに進んで、良い作品ができるんだ。東京で一緒に展示をしたいというアイデアは実は1年半前くらいから出ていて、ちょうど同じ時期に彼はHEROINから、俺はELEMENTから新作のデッキを出すことになって、このタイミングしかないと思ったよ。

 

HDM:本当に凄くいいタイミングだったね。あのねBB、本当は…今日は約束の時間を「1:17」にしたかったんだよ(笑)。

BB BASTIDAS:アハハ!本当に(笑)?(と言いながら、笑顔で胸元に入っている「1:17」のタトゥーを見せてくれた)

 

 

HDM:どうして、あなたにとってこの数字が重要なの?

BB BASTIDAS:不意に時計を見たらいつも時計が「1:17」を示していたり、街を歩いていても「117」という数字がいつも目に入ってくるんだ。それが何を意味するものなのか…俺にも理由がわからないんだけどね。俺の父親が亡くなったとき、俺と父親は凄く近い関係にいたからかなり辛くて、それでシャーマンに会いに行ったんだけど、そこでDMTドラッグを処方されたんだ。それを摂取してから「1:17」という数字が俺に話しかけるようになったんだよ。

 

HDM:今回の展覧会のテーマ『INNER VISION』にも繋がる話だね。

BB BASTIDAS:そうだね。INNER VISIONって言葉は、俺がELEMENTのシリーズデッキをデザインし終わったときに浮かんできたんだけど、このフレーズは気に入っているよ。多くの人がINNER VISIONを持っていると思うし。この話は普通に聞いたらクレイジーでおかしな話だと思うかもしれないけれど、人はタイムトラベルができると俺は信じてる。一度、1969年のデンマークに行ったことがあるんだ。

 

 

HDM:本当に?タイムスリップしたってこと?

BB BASTIDAS:そう、俺にはその経験があるんだよ。1969年のデンマークでレッドツェッペリンのライブを観ていて、実際に17歳から21歳くらいの若い 観衆と一緒に地面に座ってたんだ。彼らの温度が伝わってくるほどリアルだっ たんだ。クレイジーだけど、そこで何かが「ドラマー以外のメンバーは魂を売った」 と言ったのが聞こえたんだ。すると突然その景色は消えて、友達の家のバルコニーに戻ってきていたよ。

 

HDM:凄くうらやましい経験だね。最後に聞きたいんだけど、BBが人生で一番大切にしていることって何?

BB BASTIDAS:自分にとって一番大切なことは、友達と家族。それ以外にも旅、スケボー、絵を描くこと…沢山あるけど、一番大切なことはそれらが続けられる環境にいることだよ。

 

  • facebook
  • twitter
  • pinterest
  • line
  • Tumblr