JESSE ROYAL|“ニュー・ラスタ・ムーヴメント”の牽引者 3年ぶりとなるジャパンツアー
現行のレゲエシーンを代表するアーティストの一人!ジャマイカよりJesse Royal(ジェシー・ロイヤル)がビルボード1位を獲得したニューアルバム『Lily of da Valley』を引っさげ、3年ぶりに待望の再来日を果たします。では「Jesse Royal」とは一体どんなアーティストなのか…というのをハーデストマガジン読者のみなさんのために今日は少しおさらい。
冒頭で“現行のレゲエシーンを代表するアーティストの一人”と書きましたが、ここ数年、世界のレゲエシーンの中では、オールドスクール回帰がひとつのブームになっていまして、いわゆるダンスホール系とは一味ちがった、70年代にBob MarleyやDennis Brownがやっていたような「“古き良き”なレゲエを現代によみがえらせよう!」という動きが活発化してるんです。これら一連の流れは「NEW RASTA MOVEMENT」とか、「REGGAE REVIVAL」というふうに呼ばれ、あの有名ファッション誌『VOGUE』や、世界的メディアカンパニー『VICE』で特集が組まれたりと、近年多方面から注目を集めております。このムーブメントを牽引するアーティストの一人、CHRONIXXは昨年フジロックで来日したことも大きな話題を呼びました。
今回来日するJesse Royalも、そんな「REGGAE REVIVAL」ムーブメントの中心アーティスト。そもそもはCHORONIXXと同じくMAJOR LAZERが制作したミックステープで世界的な注目を浴び、『Modern Day Judas』のボスによって一気に頭角をあらわします。
また、親日家としても知られ、2015年にはジャマイカで活躍する日本人プロデューサーユニット“GACHAPAN”(現在解散)の全面プロデュースのもと、ミニアルバム『HOPE & LOVE』をリリース。そしてそれにともなう大規模なジャパンツアーも敢行。日本人関連で言うと、直近ではmedzプロデュースで、実の母が亡くなった悲しみを歌った『GIVE THANKS』もヒットを飛ばしております。
と書いてきましたが、ここまで書いたらアーティストの生の声も聞きたいのが人情というもの。みなさんお馴染み、ジャマイカ在住の“元祖バイブス姐さん”ことOKAMAIさんから緊急インタビューが届いておりますのでご一読あれ!
HDM:アルバム『Lily of Da Valley』のリードシングルでもある『Generation』のMVについてお話を聞かせてください。
Jesse Royal:Remus(レーベル『Xterminator』(※1)の創始者Philip ‘Fatis’ Burrellの息子)や、ディレクターとコンセプトを話し合ってサウンドトラックを聴いて、作られたイメージを映像に入れるのではなく、自然な今起きてるリアルな状況をチームで話し合って映像に入れたんだ。ロケは「ソロフィル」というゲットーでおこなった。ソロフィルのそばのスタジアムガーデンというところに僕も住んでたからたくさん一緒に育った友達がいる。悲しいけどたくさんの知り合いが他界してる。ゲットーのど真ん中にいたわけじゃないけど、同じ一人の人間が毎日この世を去っていくのを見てたよ。そして普段愛をもらってない人たちが多い場所でもある。ソロフィルってとこは昔のジャマイカの曲、Mighty Diamonds『Right Time』で「Solofill is gonna b a battlefield」って歌詞でもあるように、住んでるヤツらは当時から政府から良い扱いを受けてない。マーカス・ガーベイ(※2)が裏切られて殺された場所でもあるんだよ。「ソロフィルの人たちはマーカス・ガーベイをライス&ピースの為に裏切った」って歌ってるんだ。わかるかな?マーカス・ガーベイを支持してた場所だったのに他の政治家のリーダーがそこで会合をして、単純にお金も食べるものもなかった彼らはそっちについていって。政府がマーカス・ガーベイを地域の人たちを巻き込んで仕組んで(人々の意識の中から)殺したんだ。その地域の人は実際なんでもよかったんだよ。それは騙し合いの戦場だってことで。
でも、僕はソロフィルにたくさんの友達がいて、両親のいない子供たちもいっぱいいて。常に僕の気持ちはそこにあって、『Modern Day Judas』のMVもそこで撮ったんだ。ジャマイカを代表する僕のプレイスだ。貧しいけど才能のある素敵な子供がいっぱいで、俳優になれるようなローカルタレントもいっぱいいて、スクリーンではその強さ、力を見せつけてくれたよね。
僕は若い子にチャンスをあげたいんだ。ただご飯をあげるだけでなく、彼らに夢を見させて大きな可能性を抱かすこと、ゴールに向かう気持ち、プライドなどすべてを活気づけさせたいんだ。「なんでソロフィルで撮ったの?」ってことをよく聞かれるんだけど、子供たちは親を見てて、結局解決策がないままその親と同じ過ちを犯すことが多いんだ。お父さんが家を出てって、お母さんは新しい彼氏と住みだして、そいつがお母さんに暴力をふるう。子供たちはそういう日常を見てる。それを見て子供も育つから、子供も大人になって同じことをする。それは違うんだよって、子供たちに教えなきゃ。お互い面倒みなきゃ。家族が一番大きい存在で大事なはず。ひとつ何かがおかしくなったらそこからヒビがはいってどんどんおかしくなる。ジャマイカは素敵な国なはずなのに、みんな何か欠けている。家族のつながり、子供たちの関わりかた、両親への理解、男女の関係性、家族で常に近くにいて、新しい、いい家族を作ってシンプルに。そういう見方でいい家族を作っていくと子供たちも良くなると思ってるんだ。
HDM:『Generation』ではStephen Marleyの息子であるJo Mersa Marley(つまりBob Marleyの孫)をフィーチャリングしてるけど、このコラボに至った経緯は?
Jesse Royal:その日は待ちわびてた果実が実ったような、凄くいい日で、僕らはBIG YARDスタジオにいたんだ。そしてRemusとRiff Raffとこんなニュースについて話してた。特に自分たちが直接関係してるわけじゃないけど、どう思うかを話し合ってたんだ。人々はラスタを見た目で話すことがあるけど、ラスタは心の中にある愛で生きてるんだ。お金以上に人間を、憎むことより大きな愛を、戦争でなく平和を、永遠にできるだけ継続することが大事だってことを理解するのが必要なんだって。僕らの世代は、単純で愚鈍な世代じゃないはずなんだ。僕らは世界で何が起こってるか見てるし、考えてるし、戦争は価値のないことだって知ってる。みんなが間違ってると思うことには戦っていかないといけないし、すべての人に権利がある。戦争にだけじゃない、自分が何になりたいか、何をやりたいのかに対しても戦っていかないといけないんだ。この曲のコンセプトはそこからで、こんな会話とバイブスでできた曲なんだ。そのあと、リリックが天から降ってきた。Joは歳も近くて、まるでいとこみたいな存在だからさ、彼の熱いバイブスを入れたかったんだ。考えてたことをお互い愛を持って現実にできたことに凄く喜んでる。ドラムパターンもグルーヴもちょっと違ってこれはよくあるレゲエってわけじゃないんだ。…でも、矛盾するかも知れないけど、僕がやることはすべてレゲエだ。バックボーンだから。先人たちが築いてきたもの、教えてくれたことを僕もやってる。Peter ToshやBob Marley、Jimmy Cliff、U Roy、Yellowman、Super Catが毎回背中を押してくれた。そして作り上げたレゲエヒストリーのひとつのチャプターに僕らもいるんだ。おもしろいもんで、『Generation』はアルバムの中でも凄い強い曲になって、世界中のサポーターから共感するって愛を受けて、「僕は一人じゃない」って気持ちが強くなった。今回、日本でみんなで歌うのを凄く楽しみにしてる曲でもあるんだ。
HDM:前回の日本で一番思い出に残ってることはなんですか?楽しみなことはなんですか?
Jesse Royal:正直に言って、どこにいてもみんなの強いエナジーがフルに伝わってきて、安全で平和な環境の中、新鮮で美味しいご飯を食べたり、滞在時間すべてがかけがえのない時間だったんだ。日本は僕にとって心の落ち着ける大好きな場所なんだよ。今回、アメリカでの3カ月のツアーを終えて、日本ツアーに入る。最後のショーは僕の大好きな場所でもある沖縄で、ジャマイカに帰る前にジャマイカを感じれる場所でもあるんだ。スピリチュアルなバイブスも前回行ったときに強く感じたんだよ。
HDM:今回ストリートブランド『MURAL』とのコラボでTシャツが出ますね。
Jesse Royal:MURALとのコラボレーションの話は長年考えてたことで、何回も日本やジャマイカでミーティングをして、お互いを理解し、リスペクトして今後のプランを考えていったんだ。若くて新鮮で勢いもあるものは木の根っことなる大事なファンデーション(基礎)だ。これから大きな木になるよ!アルバム『Lily of da Valley』のデザインをちょっとアレンジしてできたデザインを凄く気に入ってる。僕の案でラスタを象徴するダビデの星を入れてもらって、ペンダントにしたんだ。
HDM:今日は貴重なお話をありがとうございました。最後にあなたの来日を待ちわびてる日本のファンにメッセージをお願いします!
Jesse Royal:コンサート会場、サイン会場、みんな顔を見せに来てね。ショーに遊びに来てね。しばらくのあいだ素敵なキミたちに会えてないからね。行くのを凄く楽しみにしてるんだ。愛のある生活を送っててね。“小さな斧”(※3)がその地域にいるぜ!4月6日から4月16日まで僕がどこにいるか調べてそこで会おう!たくさんの音楽とたくさんの愛を君に届けるよ!世界に平和を。RASTA FAR I.
(※1)Xterminator
90年代一世を風靡したレゲエのレーベル。主にラスタ系のコンシャスネスあふれる作品でヒットを飛ばした。LUCIANOやSIZZLAはここで自身のキャリアを築く。
(※2)マーカス・ガーベイ
ジャマイカ出身の黒人解放運動家。「アフリカを見よ。今に黒人の王が誕生する」と、ハイレ・セラシエの即位を予言したという世にも有名なエピソードで知られる。のちのラスタ思想の形成に大きな影響を与えた人物。「ライス&ピース」とはジャマイカの郷土食で、「マーカスガーベィをライス&ピースのために裏切った」というのは、「飢えをしのぐために心を売り渡した」という意味。
(※3)小さな斧
Jesse Royalの通り名。自身の曲名でもあり、Bob Marleyの同名曲も共に有名。「一人一人は小さな斧だがいつか、バビロンシステムという巨木を切り倒す」の思いが込められている。
RELEASE INFORMATION

JESSE ROYAL / Lily of da Valley
Easy Star Records
ES-1063
2017年10月6日発売
EVENT INFORMATION

『JESSE ROYAL -LILLY OF DA VALLEY- JAPAN TOUR 2018』
2018年4月6日(金) 大阪@BROOKLYN PARLOR
2018年4月7日(土) 千葉@ROUTE FOURTEEN
2018年4月8日(日) 福岡@MAMMA MIA
2018年4月11日(水) 岩手@SICKth
2018年4月13日(金) 愛知@TRANSIT STUDIO
2018年4月14日(土) 神奈川@CLUB CITTA’
2018年4月15日(日) 沖縄@ROCKERS CAFE