日本語ラップを新たな地平に導くネクストステージに立った“ANARCHY”渾身の新作

日本語ラップを新たな地平に導くネクストステージに立った“ANARCHY”渾身の新作

interview by BUNDAI YAMADA photo by UG

ANARCHYの2年ぶり待望のニューアルバム『BLKFLG』が絶賛リリース中だ。かねてより特別な思いを口にしていた、ザ・ブルーハーツの『チェインギャング』のカバーを始め、聴きどころは満載。日本語ラップを新たな地平に導くネクストステージに立ったANARCHY渾身の1枚。新作への思いを本人に聞いた。

 

 

「これからっすよ。ほんま、(革命を)起こしたいと思ってるっす。その為には僕だけの力じゃ無理なんで。シーンがひとつになって、もっとね…おもしろくしたいじゃないですか。それが俺の中での革命かもしれないし。俺らみたいなやつらがテレビに出たり、トップチャートに入るような時代が革命でしょ。だから、革命なんてまだ「か」ぐらいしか起きてないです。もうちょいですね」

 

こちらの「革命的な新作」という感想にANARCHYはそう答えてくれた。

 

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HDM:今回は前作『NEW YANKEE』から2年の月日を要しています。生みの苦しみのようなものがあったのですか?

ANARCHY:結構ありましたね。俺はこのアルバムまで1曲を何回も録り直したことがほぼなかったんですよ。これまでは1回スタジオ入ったら、その曲を録り終えて、また次のスタジオ…という感じで。今回は3回くらいずっと同じ曲やったりとか、無駄ではなかったですけど、必要以上にスタジオを使いましたね。

 

HDM:そういう制作になった理由が、特に何かあったのですか?

ANARCHY:もちろんいつも通りサラッと書ける曲もあるんですけど、サラッと書きたくないなっていう思いの方が結構デカかったんですよね。制作自体はいつも通り始めていったんですけど、2年間くらいちゃんと日にちを開けたいと思ってたんですよ。「まだでえへんの?」って言わせたいくらいの気持ちもあったし、『NEW YANKEE』を出して、初めの1年は作らなかったです。いつも3ヵ月くらいでバッと作るじゃないですか。でも、今回はなんかじっくり作りたいっていう気持ちだった。カッコよく上手くより、もっとメッセージをちゃんと伝える方法があるかなみたいな発想の録り方をしたんですよ。俺、完璧とかあんまり言ったことないじゃないですか。今回はまあまあ完璧なんですよ。そういうアルバムができて良かったですね。

 

HDM:今「もっとメッセージをちゃんと伝える」というお話が出ましたが、この作品からどういったメッセージをリスナーには一番感じ取って欲しいですか?

ANARCHY:それはちょっとわかんないんですけど…音楽って聴く時によって感じ方も違うじゃないですか。だから、その人にとって何かハマる曲がこの中にひつでもあればいいなとは思いましたね。それで、いろんな曲を作りたいと考えました。

 

HDM:言われてみれば、今回のアルバムは客演の楽曲を例にとっても、それぞれ個性がまったくバラバラですね。

ANARCHY:確かにそうかもしんないですね。いろんな個性を引っ張り出してきた感じで、自分が持っていない個性の人たちを呼びたいと思ってた。それがCRAZY BOY(『HELLA RICH』)、JOHNNY、YDIZZY(『NO FEAR』)の3人、プロデューサーのCHAKI ZULUもそうなんですけど、今回関わってもらった人は、自分ができない事とか、自分が持っていないものを持ってたり、俺が影響される人だったりしますね。

 

HDM:なるほど。ちなみにCRAZYBOY(三代目J Soul BrohtersのELLY)さんから受けた影響を伺いたいです。その影響は凄く意味があるものなような気がしたので。

ANARCHY:まぁ形は違えど、自分で「極めたい」と思って表に出て、あそこまで成功できている時点で、俺も悔しい思いもあるし、刺激にもなるし。彼からは何かいい影響をもらってますね。一緒にやろうよってだけじゃなくて、一緒に普段遊んでるところから、音楽以外のところでも繋がる部分とか、考え方が一緒の部分とかが結構あって。だから何か曲が変な方向に行くっていうイメージが逆にできなかったっす。絶対、面白い曲できるなって。

 

HDM:さらに掘り下げると、どこが面白いのだと思いますか?

ANARCHY:うーん、まずねぇ、ああいうポジションにいながら…彼ね、スターじゃないですか。そういうところにいながら、俺らと一緒にストリートで遊べる感覚があるという時点で良いもの持ってるなっていうか。俺の良さもわかってくれてるし、「やるやん」っていう(笑)。ラッパーやな。一緒にいてラッパーやって思わされることが結構ある。

 

HDM:そうなんですね。それはとても興味深いです。JOHNNYさんとYDIZZYさんに関してはいかがですか。

ANARCHY:カッコいいなと思った2人です。ラップ以前に、まず見ていてもカッコいいし、面白い。それでラップも良かったらいいなっていう。そういう思いから、1回曲をやってみようというのが始まりですね。実際録ってみたら面白くて、なんかカッコいいやんって思って。で、アルバムに入れようかという流れですね。「誰」って思いました?思いますよね。

 

HDM:ラップも音も、まったく新しい印象を受けました。元々一度やったことはやらないのがANARCHYさんだと思うので、これまでANARCHYさんと違うのは当然としても、聴いていて、新しいヒップホップだと感じました。特にCHAKI ZULUさんのビートに関して、特にそう思ってるのかもしれません。

ANARCHY:CHAKIは結構引っ張り出してくれたかもしれないですね。僕が選ばないトラックとかもそうやし。引っ張ってくれたなっていう感じはしてます。あとは言葉が頭に入りやすいようにはしたいなと思ったんで、削ったりする作業もした。余計なことを言って、言いたいことがボケるのも嫌だなと思ったので。全曲通して意識したのはそういうことですね。

 

HDM:その象徴的な楽曲がCHAKI ZULUさんがアレンジを手掛けた『チェインギャング』のカバーですね。(ANARCHYの)肩に歌詞を英訳したタトゥーが入っているほどの思い入れのある楽曲です。

ANARCHY:俺が好きなのもみんな知ってくれてたし、これはカバー申請の許可をもらって、始まった感じですね。やっぱり好きな分だけプレッシャーもでかいので、どうしようかという思いはありましたけど。

 

 

HDM:これだけ完成された楽曲で、ANARCHYさんらしさが感じられるというのは、本当に素晴らしいことだと思いました。こういう楽曲ができるようになったというだけでも、本当にメジャーに活動のフィールドを拡げた大きな意味という気がします。アルバムの度にANARCHYさんは毎回変わるので、今回はこう変わったのだと思いましたが、今までで一番過激というか、ぶっちゃけた作品だなという印象を受けました。特に『SO WHAT?』ほど方言を使った楽曲って、過去にあまり記憶にない気がします。

ANARCHY:(方言が)結構出てるっすもんね。確かに、ちょっと剥き出しソングかもしれませんね。やっぱり自分らしく言った方がいいなと思った。この曲はこのアルバムに必要な曲ですね。作っといてよかったです。音選びの時点で、よくこのトラックを選んだなみたいな。いい意味で古くも感じるというか。スタンダードな、俺がカッケーと思ったヒップホップのトラックという感覚で耳に入ってきた。ちょっと前なら選ばなかったかもと思うトラックなんですけど、今だからこそ選べたし、だからこそ、ああいうリリックになったのかもしれない。

 

HDM:世間一般的にメジャーに行ったり活動のフィールドが広がると「変わった」だとか、「昔の方が好き」と言われがちです。そういうことは実際にありますか?

ANARCHY:「この時は好きでした」みたいなことを言われるし、そういうのを武器に変えれるようにもなった。そういう人がいるし、俺ももうちょい反抗できるじゃないですけど…プラスですよね、すべてが。良いって言ってくれる人も、悪いって言ってくれる人も、押さえつけてくれる人も。俺みたいなラッパーがメジャーで挑戦できるっていうことはありがたいことでもあるし、そこの方が発揮できることの方があるじゃないですか。リングの上じゃないけど、戦えるところにいられるというのはありがたいことでもあり、だからそういう音楽に消化できるんかなとは思いますね。

 

HDM:では、そういう状況、ある意味ではとても幸せな環境にいて、現在何が見えているのですか?

ANARCHY:まだね…いつも言うんですけど、ただの大口野郎ですよ。でも、そういう自分が好きやし、いつまでもそうやってられるヤツっていないじゃないですか。みんな諦めたり、大口も叩けなくなるでしょ。俺は大口を叩いてたいんで。成長はしていると思いますけど、まだ、それぐらいですよ。やっとラッパーになれたかなって思えたかな。ここから…作った音楽がちゃんと評価されて、チャートに持っていけるぐらいの、ヒップホップの枠だけじゃないものにして初めて俺がやってきたことも報われる。俺がリアルになれるのはその時やと思うし。

 

HDM:ちなみに、今回の『BLKFLG』というタイトルはどこから来ているのですか?

ANARCHY:ANARCHYのロゴとしてこの旗のロゴを作ってきてくれて、いいなと思ったんですよね。そこからインスピレーションを受けて、それがアルバムのコンセプトにもなってきたんです。

 

HDM:そのコンセプトは具体的にいうとどのようなものなのですか?

ANARCHY:黒い旗というのを闘いの象徴にしているんですけど、「この旗は闘ってるANARCHYを応援しているんだよ」みたいなことをデザイナーさんに言われて、ああそういうことかと思ったんですよね。別に今までも闘ってなかったわけじゃないですけど、闘ってる自分にもう一度意識だったりを戻そうっていうか。そこまで自分について考えたことがあまりなくて、「ああ、そうか」と思わされる部分も結構あって、今の俺にぴったりやなと思った。

 

HDM:これまでも随分闘ってきた印象がありますが…いま改めて何と闘ってるのだと思いますか?

ANARCHY:なんですかね…。ちっちゃい、こじんまりと収まっちゃったヒップホップシーンをもっとでかくしたいとか…。それってみんなが言ってきたことじゃないですか。ちょっとづつでかくなってはきたと思いますけど、その壁をまだぶち壊せてない部分もあるし。今、ヒップホップが面白くなってきてるし、若い子もいっぱい出てきて、テレビでラップが見られるような時代にもなってきてる。俺らの先輩も、俺ら世代も、みんなヒップホップにそれだけの力があるって信じてやってきてて、それを実現するのが僕らの役目だし、そうやって次の世代とかにも繋げていきたいなと思ってますね。

RELEASE INFORMAITON

日本語ラップを新たな地平に導くネクストステージに立った“ANARCHY”渾身の新作

ANARCHY / BLKFLG
CLOUD 9 CLIQUEANARCHY
通常盤(CD)
RZCD-86143
2980円(税別)
2016年7月6日発売

ANARCHY / BLKFLG
CLOUD 9 CLIQUEANARCHY
初回限定盤(CD+DVD)
RZCD-86142/B
3980円(税別)
2016年7月6日発売

TOUR INFORMATION

日本語ラップを新たな地平に導くネクストステージに立った“ANARCHY”渾身の新作

ANARCHY 『BLKFLG TOUR』

日程:2016年9月9日(金)
場所:大阪クラブクアトロ
時間:18時半開場 / 19時半開演
料金:前売4000円(D代別) / 当日5000円(D代別)
お問い合わせ:夢番地 06-6341-3525

日程:2016年9月22日(木・祝)
場所:名古屋クラブクアトロ
時間:18時開場 / 19時開演
料金:前売4000円(D代別) / 当日5000円(D代別)
お問い合わせ:サンデーフォーク 052-3200-9100

日程:2016年9月24日(土)
場所:赤坂ブリッツ
時間:18時開場 / 19時開演
料金:前売5000円(D代別) / 当日6000円(D代別)
お問い合わせ:ソーゴー東京 03-3405-9999

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