NORIKIYO|HARDEST MAGAZINE 2015年1月発刊号掲載

NORIKIYO|HARDEST MAGAZINE 2015年1月発刊号掲載

interview by BUNDAI YAMADA photo by PAPAN

 

2014年12月、NORIKIYOが6thアルバム『如雨露(じょうろ)』をリリースした。13年12月に傑作アルバム『花水木』を発売して以降、リミックスアルバムを含め、本作は実に4枚目のアルバムとなる。この1年間シーズンごとにアルバムを発表し、夏にはリキッドルームで初のワンマンライブを開催した。精力的な活動を続けるNORIKIYOに、新作『如雨露』から記念碑的な一夜となったワンマン、2015年のNORIKIYO、次作の青写真まで、徹底的に話を聞いた。

 

 

「進化というよりは、今、自分が持っているもの、自分の引き出しをもの凄い勢いで開けた時期だったと思う。この(『如雨露』リリースまでの)1年間は『花水木』を作ったテンションでずっと作っていた。怒濤のように毎日机に向かってインストを聴いて、詩を当て込んでいく。その作業が楽しくてしょうがなかったし。ただ『如雨露』は、『雲と泥と手』を作り終えたときにはもう作り始めていたんだけど、『花水木』とか、今までとは違うことをやりたかった」

 

このNORIKIYOの言葉は、「この1年の多作によって実感できた、革新的な進化の手応えはあったか?」という問いに対する答えだった。インタビュー中、NORIKIYOは「今までとは違うことをやりたかった」と繰り返し口にしたが、この言葉通り、本作品はこれまでのアルバムとはまったく違う手触りの作品に仕上がっている。それでいて、キャリアの中でもっともNORIKIYOらしいと表現したくなるような作品でもある。

 

「恋愛の曲ばかりができたので、そういう曲をいっぱい入れたらおもしろいんじゃないかなと思って。国産のヒップホップをディグして聴いているわけではないので、ほかにもこういうのを作っている人もいるのかもしれない。でも、この割合、こういうアルバムはなかったんじゃないかなと思ったんですよね。『NORIKIYOってディスする人でしょ』みたいな、世の中の人たちがそれを求めてるのもわかっていますし、書こうと思えばいくらでも書けますけど、俺はそこに面白味を感じていない。今までで一番最低のアルバムじゃないかなって俺は思ってますね(笑)。自分では結構おもしろいんじゃないかなと思ってますけど」

 

HDM:前作『雲と泥と手』はアルバムの作りそのものが、前々作『花水木』を聴いていると、より楽しめるというところがあったと思うんです。簡単に言えば、リミックスは原曲を知っているからこそ楽しいという部分がある。でも『如雨露』はたしかに、明らかに違う。

NORIKIYO:そうですね。リリックも今までしたことのない書き方をしている。それは、難しいことをやってるいと言いたいのではなく、自分の人生を歌うというよりは、現実にもとづいたフィクションという意味ですが。必ずしも自分の人生を切り売ったものではないというか。そういう作り方ができないよりは、できたほうがいいと思ったんですよね。例えば、映画の曲を書いてほしいと言われたとき、それがギャング映画だったとして、僕はギャングだったことはないですが、ギャングだったらどうだろうという想像力を働かせて書く。あたかも本当にギャングでもあるかのように表現できたら、それはおもしろいんじゃないかなと。

 

HDM:今作で言えば、必ずしも自分の人生を切り売ったものではないという楽曲群の中心、大半を為すのが、「恋愛」の曲というのはおもしろいですね。

NORIKIYO:なんていうのかな…たぶん、僕が恋愛の曲とかをいっぱいだしたら、みんな『は?』ってなると思ったんですよ。『どうしたの?』みたいな。だから『は?』っとさせたかったんですよ。作り方に関してはたぶんヒップホップと言われている手法で曲を作っているのかもしれないけど、できあがったものはべつにヒップホップと言われなくてもいいやと思っていて…。例えば、誰もブルーハーツをロックだとかパンクだとは言わない。ブルーハーツはブルーハーツじゃないですか。彼らは「ロックだぜ」と言うのかもしれないけど、ロックのブルーハーツというより、先にまずブルーハーツがくる。尾崎豊は尾崎豊で、「尾崎の音楽」みたいな。僕もそういうところにいきたいんですよ。僕もそういうものが作りたい。べつにヒップホップ畑の人が、僕のアルバムを「ヒップホップじゃねぇ」とか、「ポップ」だとか好き勝手言ってくれてかまわないし。ただ、いわゆる日本語ラップと言われているものから逸脱したかったんですよね。そういうものより色濃く自分というものをだしたかった。

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