NORIKIYO|馬鹿と鋏と〇〇と

NORIKIYO|馬鹿と鋏と〇〇と

interview by HIROYUKI ICHINOKI photo by グレート・ザ・歌舞伎町

 

HDM:そこで今回のアルバムなんだけど、内容以前に、ジャケットがこれまでのテイストとまったく違ってて。

NORIKIYO:わかんないけど、あれは締め切り間際で焦ったんじゃないですか、デザイナーが(笑)。あと5日で締め切りだよみたいなときにデザイナーが家に来て、アイフォン向けられて「あいうえおって言ってくんない?」とか「もうちょっと目開いて」とか言われてパシャパシャ撮られて「これ何に使うの?」っつって(笑)。べつに俺はこういうのにしてくれとか一切言わないんで、「どう?」って言われて「いいんじゃない?」っていう。彼らは楽曲を聴いてからジャケットを製作してるんでいつも信用してますね。

 

HDM:はは、そうなんだ。アルバム自体の制作はどのように?

NORIKIYO:アルバムのタイトルが決まったのはいつだろう…4月か5月とかだったかな。入口と出口が決まると俺は早いんすよ。それで1曲目(『馬鹿と鋏と』)が書けたときにテーマが決まって、最後の曲をこういう出口にしたいなっていうのができたときに、通り道の景色を逆算していった。最後の曲に説得力を持たせるっていうか、映画とかでもあるじゃないですか、オチのために前フリが何個かあって、そういう伏線を回収していくみたいな。それがあればあるほどオチがドーンってくるし。そういうものが好きだからそうなったって感じなのかもしんないすけど。

 

HDM:『馬鹿と鋏と』の曲自体のテーマはどこから?

NORIKIYO:「馬鹿と鋏は使いよう」って言葉あるじゃないですか。そこから着想したんすけど、トラックは前作を作るときにあったトラックで、これを次のアルバムで1曲目にしたいなとはなんとなく思ってて。それが書けたときに『馬鹿と鋏と』ってアルバムにしようって。これは言うと野暮なんだけど、馬鹿と鋏と何なのかって言ったら、馬鹿と鋏を思いやり、愛を持って使うっていうことで。みんなどこかしら欠落してたり得手不得手あるわけだけど、何かしらキラリと光るものを持ってると思うから、それをどう使うかみたいな。そういうことを考えてもらいたいなあっていう。

 

HDM:前作の『Bouquet』は後悔の念が出発になったアルバムだって話を以前してたけど…。

NORIKIYO:『Bouquet』は個人的なアルバムなんで、自分の人生の話なんすけど、今回はもうちょっと俯瞰的な目線で、本名の俺が発信してるっていうよりはNORIKIYOってキャラクターがいろんなものを表現してる。だから自分の話もあるけど、友達の話が元になってるのもあるし、世の中とかを見て「くだらねえな」とか思ってることも言ってて、ただ辛辣なだけじゃなく、おこがましい言い方だけど、子供育てるみたいな(感覚)。説教してるときって嫌いで言ってるわけじゃないじゃないですか。「それお前ほんとにあとで困るよ」みたいなことだったり、「火さわったら熱いからやめときな」みたいなことだったり。興味なかったらべつに興味ないで言わないわけだし。

 

HDM:ことヒップホップやシーンに対しては、それが苦言として形になってて。

NORIKIYO:愛を添えて凄いやさしく言ってるつもりなんですけどね(笑)。プレイヤーはめちゃくちゃ多くなったけど、例えばトラヴィス・スコットがカッコいいってなったらみんな衣装までトラヴィス・スコットのマネして、ライブではねてるだけみたいな(笑)、それどうかなって。カッコ良さはひとつである必要はないし、クールなものだけじゃなくて、人の体温が感じられるようなダサカッコいいものでもいいわけで。これはちょっと違う話だけど、例えば俺が「雹と雪が降る 雹と雪が降る」っていきなり歌い出したら「お前どうした?」ってなるけど、あれはA-THUGが言うからカッコいいんすよ。ラップってそこじゃんっていう。MACCHOくん(OZROSAURUS)のリリックじゃないけど、「どの口が何を言うかが肝心」。やっぱほかの人が言えないことをいかにおもしろく言うとか、ありきたりの言葉だけどそれを自分のセンスで組み合わせたら響き方が違ってケミストするってことだと思うから、ラップの上手さってそういうことだと思うんすよね。5文字の韻を何回も踏むとか時間かければ誰でもできるでしょ。

 

HDM:そう考えると、ラッパーのキャラももっと幅があっていいと。あと、ネットを含めて自分の曲の受け取られ方にも思うことがあるでしょ?アルバム中の『可哀想な人達(feat. AK-69)』や『My Shot』しかり。

NORIKIYO:よかれと思って俺がシーンに対して提示したことの行間が読めない人がいっぱいいて、言い方乱暴ですけど、馬鹿にもわかるように説明しなきゃいけねえんだって思いましたね。おもしろいと思ったこと、プラスになるようなことはインターネットの大河に流していいと思うけど、みんな嫌がるからウンコは流すなよ、みたいな。それって便利なものを使って世界をダメにしていくみたいな行為じゃないですか。気分が晴れないから車でドライブ行ってスピード出し過ぎちゃって人轢いちゃったみたいな。事故ってみてさ「いや、ひくつもりじゃなかったんです」って言うけど、お前逆だったらどう思う?って話で。

 

HDM:そうした周りの状況を見て、作り手としても自分の意識が変わったり?

NORIKIYO:もちろんそういうのもありますし、それとはべつに例えば昨日自分が酒飲んだときの行動を思い起こして「うわ、ほんとに自分のこと嫌いになっちゃうわ」みたいなことは日頃からあって。そういうのは自分でどうにかするしかないし、自分で自分のことを嫌いにならないような時間の使い方をしてれば、自分を信じられるじゃないですか。それがいわゆる自信ってもんにつながるし。だから、根拠のない自信で若い勢いでバーッてやるのも素晴らしいけど、おじさんになってやっぱもう少し自信に裏打ちされてるものを考える歳になったし、自分自身そういうフェイズにきたのかなって。

RELEASE INFORMATION

NORIKIYO|馬鹿と鋏と〇〇と

NORIKIYO / 馬鹿と鋏と
YUKICHI RECORDS
YRC-054
3000円(税込)
2018年9月28日発売

  • facebook
  • twitter
  • pinterest
  • line
  • Tumblr