MOMENT JOON|来たるべきアルバムへと続く入口『Immigration EP』

MOMENT JOON|来たるべきアルバムへと続く入口『Immigration EP』

interview by HIROYUKI ICHINOKI photo by JUNYA S-STEADY

 

HDM:続く『マジ卍(Maji Manji)』はラッパーたちのみにとどまらず、安倍やトランプまでリリックに読みこんだ曲ですが。

MOMENT JOON:『マジ卍(Maji Manji)』は、三浦瑠麗の発言(注:フジテレビ系列の番組『ワイドナショー』において、北朝鮮のテロリスト分子が日韓に潜んでおり、大阪が特に危険だと発言。在日コリアンへの憎悪を煽るものとして批判が集まった)がキッカケで、それについて言いたいことばっと並べるだけだとアレだなと思って、このエネルギーを他のトピックまでチャネリングして作った。「マジ卍」って言葉はもう流行ってないですけど、女子高生が言ってたような軽い意味じゃなくて、今本当に危ない、ヤバイんだよって意味で僕が言ってるトピックに同感したり考えてる人々まで楽しめるんじゃないかなって思ったんです。実際それは正解でしたね。SKY-HIさんのライブで歌ったら、終わったあとお客さんから「凄いよかった!」「楽しかった!」って反応があったんで。でも「よく聴いたら楽しくなれる曲かな?」と思うんですけど。

アサシバ:ちょうどその時期に『This Is America』のパロディーで『This Is Japan』っていうのがTWITTERで話題になって、その曲への批判というか、カウンターとして『マジ卍』少し注目を浴びることもありましたね。

MOMENT JOON:そうですね。彼らは原曲の問題意識がぜんぜんなくて叩かれましたけど、「おもてなしの文化」とか「写メ撮ってマジ卍」とか言ってるの見て僕も皮肉が言いたくなって(笑)。

 

HDM:このEPはいわばそういう瞬発力で作った曲ものや、いい意味で聴き流せるような曲もあれば、制作中のアルバムのベースになるだろうより実像に近い曲もあるっていう内容で。

MOMENT JOON:そうですね。アルバムはもとの計画通りに進めますけど、(このEPは)曲単位で意味のあるものを作りたかったんですよね。

 

HDM:その中に生きづらさがふと歌詞になる瞬間があって。「生存以上生活未満」(『井口堂(IGUCHIDOU)』)ってラインにしても、「ヘイトと差別に恵まれてる~人生ってものは煉獄」(『Mother Tongue』)っていうラインにしてもシビアな話で。

MOMENT JOON:日本の人と結婚して永住権もらえるとか、そういう状況でもないので、そこらへんの不安は一生なくならないでしょうね。金銭的に安定するかもわかんないですけど、安定しても法的な身分は永遠と解決できないと思うんで。偏見にしても、音楽以外の仕事とか生活の場で感じることがない時期が続いて、忘れようとしたらそういうのがまた起きて、俺の立ち位置はここなんだなっていつも考えさせられるっていうか。

 

HDM:じゃあそうしたラインは意識せずとも曲書いていく中で自然に出てきたもの?

MOMENT JOON:そうですね。そういう内容じゃない曲を書いてもちょこっと出てきたり。例えばそれこそFutureとか、麻薬が好きなラッパーが全く関係ないラヴソング歌ってもそういう話が出てくるみたいに、今の自分にはそういう問題が欠かせないでしょうね。なので、今はコントロールせずに、自然に出てくるんだったら出てきていいなあと思っています。

 

HDM:ピアノ一本で歌う『Natasha’s Song』も、いわばそういう日々の問題の先にある曲ですよね。

MOMENT JOON:『Natasha’s Song』がこの中で一番古いんですよ。2年前に彼女のために作った歌にピアノを足して作った曲で。

 

HDM:空港はMOMENTさんにとって別れの場所だっていう話が前にありましたけど、まさにそういう曲で。

MOMENT JOON:前にビザの申請で断られて、韓国に帰る2週間前ぐらいに作った曲で、世に出すとは思ってなかったですよね。そのときはほんと、僕も彼女も死にそうなぐらい憂鬱で、この気持ちのまま韓国に帰っちゃったら彼女との関係もどうなるのかなあと思って。それで抱いてる気持ちをどんな形でもまとめなきゃいけないと思ったんです。彼女の家の近くの川沿いに座ってこれを歌って二人でずーっと泣いて、それで現実に向き合うようになったというか直視できて、これから私達はどうするんだって話もできました。

 

HDM:『Getaway Bike』にしても、手錠をかけられパトカーに乗せられてるところから始まってますが。

MOMENT JOON:それはメタファーでもファンタジーでもあって。警察のパトカーから彼女が脱出させてくれるって曲ですけど、本当にそう思うんですよ。入管とのトラブルとか、日本社会に適応して生きていくことにおいて、シバ(アサシバ)さんもプロデューサーもそうなんですけど、一番手伝ってくれたのは彼女だし、彼女がいなかったらできなかったと思うんで。

 

HDM:ともあれ、EPを完成させて今どんな気持ちですか?

MOMENT JOON:昔は僕が意図してた深いところまで読んでくれるかなって心配だった。でも今回は、そういうところまで読んでくれる人がいたら嬉しいけど、まずはただ楽しんでほしいなって思います。なぜかというと、次の『Passport & Garçon』では「えっ、MOMENTってこんなに難しい曲作る人だったの?」って思わせるほどコンセプチュアルなものを考えてるので。そのためにもアペタイザー(前菜)じゃないですけど、僕の生活とか考えに直結してる歌詞も入ってれば、イージーリスニングもできるものが入ってるものがよかったし、次のアルバムの入口みたいな役割を果たしてほしいなって。そういうことで慣れてないと、たぶんドン引きするでしょ(笑)。

RELEASE INFORMATION

MOMENT JOON|来たるべきアルバムへと続く入口『Immigration EP』

MOMENT JOON / Immigration EP
GROW UP UNDERGROUND RECORDS
GUR-007
1500円(税込)
2018年12月20日発売
※HARDEST ONLINE SHOP限定 先行発売

RELEASE INFORMATION

MOMENT JOON|来たるべきアルバムへと続く入口『Immigration EP』

MOMENT JOON "Immigration EP" L/S TEE & HOODIE
L/S TEE:5000円(税別)
L/S TEE + CD:5800円(税別)
HOODIE:7000円(税別)
HOODIE + CD:7800円(税別)

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