ローホー|音楽というものは人間の断片 もしくは人間そのものだ(HARDEST MAGAZINE 2018年4月発刊号掲載)

ローホー|音楽というものは人間の断片 もしくは人間そのものだ(HARDEST MAGAZINE 2018年4月発刊号掲載)

interview by CHINATSU MIYOSHI photo by JUNYA S-STEADY

 

彼の曲である[浮き草]を初めて聴いたとき、ブルースの哀愁と渋み、そして韻を踏みながら突きつけられる言葉の羅列に一瞬で心が奪われた。…というより、心が振るえたという表現のほうが正しいように思う。彼の音楽のバックボーンは多彩だ。世界、そして日本のロックとブルース、ヒップホップ、レゲエ…自分だけの音を形成するために揃ったありとあらゆるジャンルが見え隠れする、言い換えればたったひとつのカテゴリーにおさめることが不可能なもの。彼の音楽には人格があって、それは表層的で安っぽいものを嫌い、リアルな精神で生きることを望んでいる。色っぽい気分になったかと思えば辛辣なことを言い放つ。まるで人間そのもの。本当に心から…量産など不可能な、唯一無二の本当の音楽を見つけたような気分だ。

 

 

HDM:たしか、2013年の参議院選挙での、三宅洋平氏が渋谷ハチ公前で開催した[選挙フェス]に参加していましたよね。

ローホー:そう。実際のあのフェスの現場の空気は…SNSで拡散されて伝わっているものなんて、たぶん100分の1くらい。何千、何万人の熱気と願いと思考が渦巻いていて、同時に凄く殺伐としてた。集まった人の意識がひとつのデカい塊みたいに感じて、全身が焦げてバラバラになりそうなくらい。「今までの日本の歴史と闘う1人なんだ」ということを嫌でも自覚させられる経験でした。あのフェス直後の自分をいま思い返してみると、なんとなく鬱っぽくなっちゃってたくらいエネルギー消耗してましたね(笑)。

 

HDM:映像で見ても、完全にカオス状態でした。

ローホー:あれを経験したあとは今までの刺激では物足りなくなってて。外で知り合い(のレベルミュージックとされるアーティスト)に会ったときに「ああ、選挙お疲れ〜!大変そうだったね」ってラフなノリで声を掛けられたときに、その言葉と態度に傷ついたりして。あの現場に立っていない人たちと同じ感覚を共有できないのは仕方がないんだけど。

 

HDM:そうですね。関心のない人には、ただのお祭りに見えたかも知れない。

ローホー:うん。でもあのフェスが開かれる直前まで、事務所では「これは音楽フェスをしてるわけではない!」って怒号が飛び交ってて。福祉や沖縄の基地のこと、それ以外でも現在の日本が抱えているあらゆる問題を見つめ直して、全部ひっくり返さないといけないという強い気持ちがありました。そんな空気感の中に自分もいきなり放り出されたから、少しパニックにもなりながらも、すぐにそのモードでその場に立てて。

 

HDM:そのすべてが終わったあとに空虚になったの?

ローホー:そう。そのときは、今まで自分がいた環境や信じてやってきたことがすべて終わったような気がして。鬱っぽくなったっていうのは、これから自分が何をするべきなのかということをまた考えないといけない時間だったんだと思う。今までレベルミュージックだとか言って音楽をやってきたけど、「本当にレベルのところを本気で目指しているのか?」という問いが生まれてきて。フェス以前の自分は見解も浅かったし、そのときなりに懸命になって自分の音楽をやってはいたけど、もうそのときの自分には戻れなかった。いまの自分がやるべき音楽、いまの自分が持っている感覚を共にできる仲間と生きていきたいと考えるようになって。自分の中で起こった空虚感と、今までの自分と今の自分とのギャップに折り合いをつけたくて、1カ月間くらい和歌山の海辺に籠ってましたね(笑)。

 

HDM:(笑)。だけどそこまでになるくらい、一度空っぽになれたのは良かったですね。

ローホー:人に何かを伝えるには、ただ大きい声で叫ぶだけじゃダメなんだということを知りましたね。それに、俺は自分の中の思考や独り言を、演説ではなく“音楽”として伝える術を持っていることは幸福なことなんだって、改めて気づいた。

 

HDM:そこからはどうしたんですか?

ローホー:相変わらず空虚な時間を過ごしていたんですけど、ある日、以前バーで知り合ったおもしろい先輩に、「おまえ、日本を出てアジアでライブやってみないか?」と言われたんです。そのときの俺は自分が何をすればいいのかもわからなかったし、今までいた場所に戻ることもできない。逆に言ったらもう何でもできるという状態だったこともあって、「やります!」って即返事して。「世界だ!」って。これからの自分が一生をかけて追いかけられる的がようやく見つかったって思って。

 

HDM:それが初めての海外?

ローホー:それが2016年の話なんだけど、2014年に1人旅でヨーロッパにライブ行脚という名の貧乏旅行をしました。5000円くらいのギターを買って、現地で知り合ったヤツらの遊び場に連れていってもらったりして。2週間くらいかけてロンドン、バルセロナ、あとスペンのイビサ島を巡ってきました。そのときの俺が決めてたルールがね、現地では「めっちゃかわいい子か、めっちゃ悪そうなヤツに道を聞く」ということだった(笑)。

RELEASE INFORMATION

ローホー|音楽というものは人間の断片 もしくは人間そのものだ(HARDEST MAGAZINE 2018年4月発刊号掲載)

ローホー / Garage Pops
ローホー / P-VINE RECORDS
RH-002
2200円(税別)
2016年3月16日発売

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