THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

interview by HIROYUKI ICHINOKI

 

台風直撃の日比谷野音ライブなどで迎えた結成20周年から2年、ようやく届けられたTHA BLUE HERB 7年ぶり5枚目のフルアルバムは、客演なしの全30曲、実に150分にも及ぶCD 2枚組のセルフタイトル作。ただただ前を向いて歩んできた道のりにあって、自らに“挑戦”を課した今回のアルバムは、グループの新たな名刺とするべく作られた。日々の営みにも目を向けることとなった彼らの音楽は、その根をさらに広げ、ILL-BOSSTINOはここで他者の目線でもリリックを書き、ラップしている。孤独な闘いのずっと先で人と交わる境地に至ったその世界は温かくも強い。

 

 

HDM:曲でも歌われてますけど、今回のアルバム制作に入る前にはいつものように旅に出てたんですよね。

ILL-BOSSTINO:うん。普通に行ってたよ、いろいろ。

 

HDM:アルバムの構想もそこで?

ILL-BOSSTINO:まあ年中アルバムのことは考えていたから頭のどこかにはあったとは思うけど、旅の空でずっと煮詰めてたってことはないよ。旅は旅だから。

 

HDM:かつて曲のアイディアを求めてっていったのとは旅の意味合いも変わってきたってことですか。

ILL-BOSSTINO:かもね。昔はどっか海外行ってずっと籠ってリリック書くっていうのが多かったけど、今は逆に息抜きのほうが大きい。今回に関してはほとんど北海道で書いてたしね。

 

HDM:アルバムの制作自体はどのように始まったんですか?

ILL-BOSSTINO:野音終わって次はアルバムだなって話になって。やったことないことにトライしてみようって感じでずっと俺らきてるから、野音だってそうだったし。昔から2枚組のアルバムはずっと作ってみたいと思ってたんだよね。正直不安もあったけど、挑戦してみて良かったね。

 

HDM:まして今回も客演なしのアルバムで、プレッシャーみたいなものはありませんでした?

ILL-BOSSTINO:そういうプレッシャーはなかったね、客演がいないのは俺ら的にいつもどおりだし、楽しかったよ。気づいたら3枚組(の曲数)まで足を踏み入れちゃってたから。ただ、そろそろアルバムとしてまとめるにはここかなってところで止めたんだ。

 

HDM:そうなんですね。デジタル主流の今にあって、CD 2枚組、2時間半に及ぶヴォリュームを世に問うこと自体もいわば挑戦だと思うんですけど。

ILL-BOSSTINO:THA BLUE HERBは今年22年になるんだけどさ、配信だのサブスクだのっていうのはその歴史の中で言うと後半の3年くらいのトレンドなわけよ、俺にしてみたら。音楽聴くのはそれこそレコードとかから始まってずっと音楽聴き続けてるわけで、’70年代、’80年代、’90年代、’00年代って時間の中で発表されてきたいろんなレコードとかCD買って音楽を楽しんできて、あこがれて、自分たちの音楽を作ってみたいってとこから始めてるわけじゃん。ある意味ずっと続く音楽の歴史の枝にいるわけ。それで考えると、1、2曲じゃアーティストとしての評価にはならない。どうやってアーティストのこと評価するかって言ったらやっぱりアルバムなわけで、俺はね。だからそこは俺的に揺らいでないっていうか、アーティストとして評価されたい、残りたいって思ってる。だから、アルバムを作らないと始まらない、そこに忠実に残しただけだね。

 

HDM:ともあれ、7年ぶりのアルバムっていうのももちろんありますけど、[TOTAL]の次のアルバムって考えるとカラーはだいぶ違いますよね。前作は震災後っていう時代のムードに後押しされた内容とも見えましたが、今回のアルバムは人々の暮らしやラッパー的な日常により引き戻した世界というか。

ILL-BOSSTINO:アルバムのコンセプトなんて作る前には考えてないよ、今まで一度も。その時代時代、その局面局面で自分のまわりに起きたことは別に震災に限らずこれまでずっと影響されてるから、そこは作品に絶対抽出されるし、曲が7割8割できたときにやっと全体の構造が見えてくる。今回も最初から決めてたのは2枚組を作ろうってことだけで、それ以外で考えてたことはないね。

 

HDM:アルバムにセルフタイトルをつけたことにはやっぱり意味を感じますけど。

ILL-BOSSTINO:[TOTAL]から7年経って、俺自身ソロアルバムも出したけど、その間に日本のヒップホップもまた変わったからね。プレイヤーもたくさん増えたし聴いてる人も増えて、THA BLUE HERBを昔聴いてたとしても今聴いてない人、新たに聴いてくれるようになった人たちも、名前は知ってるけどどういう感じのヤツらなんだろうなっていう人たちもいる。そういう人たちがアクセスしやすいように俺らも(過去のカタログを)デジタル解禁したんだ。ただ、俺らにしてみればそこにあるのは全部昔のことだから。ここからまた始めようって意志だよね。

 

HDM:とはいえ、そのときそのときベストを尽くしたっていう満足感はもちろんあるわけですよね。

ILL-BOSSTINO:勿論あるよ。でもそんなのすぐ終わっちゃうよ。満足はしてるけど、昔の話だよ。

EVENT INFORMATION

THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

5th ALBUM[THA BLUE HERB]RELEASE TOUR


8月17日(土)RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
8月23日(金)町田CLASSIX
8月24日(土)中野heavysick ZERO
8月26日(月)名古屋CLUB QUATTRO
8月27日(火)京都MUSE
8月29日(木)広島CLUB QUATTRO
8月31日(土)福岡DRUM Be-1
9月01日(日)那覇Output
9月03日(火)大阪CLUB QUATTRO
9月04日(水)金沢AZ
9月06日(金)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
9月07日(土)熊谷HEAVEN’S ROCK (VJ-1)
9月10日(火)東京LIQUIDROOM
9月13日(金)郡山PEAK ACTION
9月14日(土)水戸CLUB MURZ
9月15日(日)川崎BAYCAMP 2019
9月18日(水)仙台enn 2nd
9月20日(金)山形Sandinista
9月22日(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK 2/3 (VJ-4)
9月23日(月)つくばOctBaSS
9月28日(土)夏の魔物 2019
9月29日(日)江ノ島OPPA-LA
10月2日(水)札幌KRAPS HALL
10月4日(金)北見UNDERSTAND

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