THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

interview by HIROYUKI ICHINOKI

 

HDM:歳を重ねることで体力や気力の面で違いはありませんか?
ILL-BOSSTINO:若いころできたけど今できないことなんてほぼないね。そんなのありえないでしょ。まだ、47だよ。一番いいじゃんと思ってるね。アドバンテージしか感じないよ。

 

HDM:そこでやっぱり今を見てもらいたいし、今こそがグループのベストというわけですか。

ILL-BOSSTINO:もちろんその時代その時代、俺らはベストを尽くしてたけど、それも若いころのベストで、今47歳の俺らにとっての100パーセントのベストかっていうとそうじゃない。もっとできる。やっぱり今の俺らのベストを完全な形で提示したいってずっと思ってたし、ましてや最近ほとんど誰もやってないような2枚組をあえて作ったんで、これで俺らがどういう人間かっていうのを作品にして、もう1回名刺代わりに知ってもらいたいとも思ったしね。それでセルフタイトルにしたって感じだよ。

 

HDM:O.N.Oさんとの曲作りはどうでした? 今回は全体にシンプルで温和なトラックが多いですよね。

ILL-BOSSTINO:テクニカルなところに関してはまったくタッチしてないし、それについてこうしようよっていうのもまったくない。メロディとか質感をこういうふうにしてほしいってことは伝えたけど。

 

HDM:サウンドの方向性は特に決めてなかったと。

ILL-BOSSTINO:1曲ずつ作ってく中で滅茶苦茶(意見を)戦わせてるけどね、毎回。でも、全体がどうのっていうような話になったのは最後の1、2カ月だと思う。それまでは1曲単位でカッコいい曲を作ってこうってだけの話で、リリックとビートを持ち寄って、俺の中でフィットしなければこういうのを作ってほしいってイメージを伝えて、また作ってもらってっていうようなことを延々繰り返してたね。

 

HDM:じゃあ歌詞が先にあることが多かったんですか?

ILL-BOSSTINO:逆ももちろんあるけど、制作終わったあとのライブのことを考えると結局、これを外で表現していくのは俺だから。やっぱり俺が乗せたいっていう音じゃないと歌えない。だってそのビートでこの先何年間もライブをやってくわけだから。そこは妥協したくなかったし、妥協したっていいことないからね。ずいぶん俺も言ったし、O.N.Oも根気よく付き合ってくれたよ。

 

HDM:リリックはラッパーとしての日常や現在・過去はもとより、亡くした友との別れの光景や、今の日本の苦々しい現状、戦争を体験した世代の思いを引き受ける曲などさまざまで、BOSSさん自身にとどまらず、第三者の男女それぞれの目線で歌った曲が対になる形で並んでたりもしますね。

ILL-BOSSTINO:2枚組になると全部一人称でやっても単調だし何か新しい視点の曲を作りたいなっていうのはもちろん動機のひとつ。普通に街歩いてる人たちの人生を観察して、仲間も含めいろんな人の話を聞いていろんなパーツを組み合わせて、一人の人格を作って曲にしていくってことはやりたいと思ってたし、[路上](’02年のセカンドアルバム[SELL OUR SOUL]に収録)みたいな海外の話じゃなくて、日本の普通の日常なんだけどみんな身に覚えがあるけど、誰も気にも留めずに流れていくようなとこにフォーカス当てた曲を作ってみたいっていうのはあったよ。

 

HDM:そうした曲にせよ、かつてビーフのあったラッパーのヴァースからのサンプリングや、数々の同業者の名前が挙げてたりすることにせよ、つながり、共感の上にある音楽という側面も見えるし、これまでの歩みをひとつひとつ踏まえた上でのアルバムとも言えて。

ILL-BOSSTINO:そうだね。実際それがあったから今があるとしか言いようがないよね、やっぱり。ファーストがあったからセカンドもあるし、それがあったからサードもあるし、ライブなんて全部そうだしね。いざこざも含めて全部あったから今ここまで来たっていうのは事実だから。それは常に出てくるし、いろんなトピックがあるよね。やっぱりまわりの人間の日常の話を聞いても曲にしたいなあとか、これは曲になるでしょっていうことがそれぞれあるからさ。みんないろいろあるじゃん、生きてりゃ。

 

HDM:そう思うのも歳を重ねたからこそ、長く活動を続けてきたからこそなんでしょうね。

ILL-BOSSTINO:ただ、続けたくてやってきたわけじゃないから。前よりもいい曲を作りたい、前よりもいいライブをやりたい、今よりも上手くなりたい、理由はそれだけ。前のアルバムよりもいい作品を作った、昨日のライブよりも今日のほうが絶対よかったって満足して眠りにつきたい。それを繰り返すしかないよね。

 

HDM:ひとつのことを続けていくのも才能だと思うんですよ。自分を信じてるからできるんだろうし、そこでやめてく人もたくさんいるわけで。

ILL-BOSSTINO:かもね。でもわからない、やめてった人のことは。それこそいろいろあるでしょ。やりたいけどやれなかった人だっていると思うし、もうやりきったと思ってやめた人だっているだろうからね。

 

HDM:まあ、それぞれに事情はあるでしょうけど。

ILL-BOSSTINO:みんなそうだと思う。俺たちはまだ自分たちに満足してないだけの話で、べつに音楽だけが人生じゃないからね。子育てや仕事、親の介護、いろいろあるけど、それぞれ大変で、価値のあることだし、そういうことを犠牲にしてまでそもそも音楽やるのか?って感じだと思う。今言ったようなことのほうが人生にとっては大事だからね。逆にそういう日常とちゃんと向き合わずに生まれるヒップホップなんて俺は聴かないね。

 

HDM:なるほど。それを踏まえてになるのか、あえて聞きますがアーティストとしてこれからの身の処し方については今どんなふうに考えてますか?

ILL-BOSSTINO:今回なんて特にそうだけど、やっぱり自分の限界を超えたいと思ったのが動機だし、自分に対して勝ちたいっていうのとほかのラッパーに負けたくないっていうのはやっぱ常にある。自分には勝ちたいけど、他人には勝ちたいとは思わない。他人には負けたくないと思うんだよ。この違い、わかる?俺にはその違いがとても大事なんだよ。そこに夢中になって作ってるだけで、それが最終的にどう残っていくかっていうのまでは考えてないね。

 

HDM:野音のサバイバルのようなライブ、そして今回のアルバムを経て、また一から始めるっていうことですか。

ILL-BOSSTINO:それしかない。また一からだよ。野音にしたって昔の話だ。たった一回のことだし、ライブの質で言ったらあれがベストだとは思わない、ぜんぜんイケる。よく語ってくれる、雨が過酷だったかどうかって俺たちの話じゃなくて、天気の話じゃん。

 

HDM:すいません(笑)。これまでの曲や歩みもこみであのライブの光景はやっぱり強烈だったので。

ILL-BOSSTINO:まあそういう意味では印象的な日にはなったよね。だから不満は何もないし、いい日だったと思う。でも2年前だからさ。

EVENT INFORMATION

THA BLUE HERB|全30曲 150分の“挑戦”となったアルバム2枚組

5th ALBUM[THA BLUE HERB]RELEASE TOUR


8月17日(土)RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
8月23日(金)町田CLASSIX
8月24日(土)中野heavysick ZERO
8月26日(月)名古屋CLUB QUATTRO
8月27日(火)京都MUSE
8月29日(木)広島CLUB QUATTRO
8月31日(土)福岡DRUM Be-1
9月01日(日)那覇Output
9月03日(火)大阪CLUB QUATTRO
9月04日(水)金沢AZ
9月06日(金)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
9月07日(土)熊谷HEAVEN’S ROCK (VJ-1)
9月10日(火)東京LIQUIDROOM
9月13日(金)郡山PEAK ACTION
9月14日(土)水戸CLUB MURZ
9月15日(日)川崎BAYCAMP 2019
9月18日(水)仙台enn 2nd
9月20日(金)山形Sandinista
9月22日(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK 2/3 (VJ-4)
9月23日(月)つくばOctBaSS
9月28日(土)夏の魔物 2019
9月29日(日)江ノ島OPPA-LA
10月2日(水)札幌KRAPS HALL
10月4日(金)北見UNDERSTAND

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