やっぱり聴かずにはいられない“BES”の3rd『THE KISS OF LIFE』
BESが3枚目となるアルバム『THE KISS OF LIFE』を完成させた。獄中からリリースされた前作『UNTITLED』から1年、その間に晴れて自由の身となり、DJ GEORGEによるMIX CD『BES ILL LOUNGE PART 2』をリリースするなど、精力的に活動していると言っていいだろう。内容は…BESのアルバムだ。悪いはずがない。タイトルの『THE KISS OF LIFE』の意味は“起死回生”だという。本作のエグゼクティブ・プロデューサーであり盟友I-DeA同席のもと話を聞いた。
HDM:いざ作品が完成してみて現状いかがですか?
BES:不安ばっかですね。やってる時は楽しかったっすけど…でも今回はそんな『REBUILD』の時みたいな生みの苦しみはなかったですね。一応、形的にはなんとかなりましたね、はい。先生(※BESはI-DeAをこう呼ぶ)の協力も得てですけど。
I-DeA:まぁ…そうっすね。年1(枚)は出さなきゃいけない人なんで。(刑務所から)『UNTITLED』出して、出てきてからMIX CD出して、その流れですね。流れ止めない方が良いんで。止めない方がいいって言いながら止まって、みんなが終わっていってる中、BES君は本当に止めないでできてるんで素晴らしいっす。
BES:アターっす。先生にお世話になりっぱなしで。
I-DeA:身を削った甲斐があります。
BES:(笑)。ありがて~!
I-DeA:身を削っても結局リリースに漕ぎ着けられない人も結構いて、それだと削った意味がなかったりするんですけど、形にできれば削った意味があるので、そこですね。そうじゃないと金も生み出さないし、俺も趣味に付き合ってるんじゃないんで。
HDM:BESさんのバースが金になるのはわかります。
I-DeA:まさに。そういう曲も見事に作れてるし。
HDM:1曲目(『I Wanna Shining』)からそこは出てますね。実際に唯一無二ですし。いつどのタイミングで聴いてもカッコいい。
BES:アタっす。今回は結構なんか思うようにしましたね。あんま欲望とか、そういう何て言うんですかね…そっち系のこととか色々ありましたし、それが上手くいかなかったのもありますけど…制作にはすごい集中できたので。だからすごく良かったと思いますね。あとから思い返すとちょっとこのリリックは恥ずかしいと思うかもしれないけど、だけど作ってる時はほんとすごく楽しかったんですよ。先生と一緒にバースを考えたりとかもしたんで。あと駄目だった、回ってない状態の時のバースをちゃんと録り直してハメたりとか、そういう作業もできたんで、良かったんじゃないかな~とは思いますけど。
HDM:I-DeAさんにBESさんがアルバムを作ってるお話を伺ってから、アッと言う間にできたなというイメージなんですが…2ヶ月くらいでできてませんか?
I-DeA:俺はアルバムを作ると言ってから、作り上げる為に動いた感じだったけど、BES君は出てきてから結構定期的に曲を録ったりしてたんで。
BES:はい、自分の金でもう録ってたんで。『Check Me Out Yo!! Listen』とか客演に入ってもらうのには時間かかりましたけど、『Mic Life』はそうですね。MICHINOちゃんとの『How Many Mc’s』も既に録ってましたし、ガッテム君(LORD 8ERZ)の『Jail』はもっと早い段階…去年の冬くらいの段階で出来上がってました。
I-DeA:あとKNZZ君のとのやつ(『Breathless』)も。
BES:上がってましたね。去年の夏にはできてました。
HDM:既に結構できてたんですね。
I-DeA:そこからアルバムにするっていうことでBES君がブラッシュアップしていって…っていう感じだったすね。
HDM:いま客演の方の名前が結構挙がったので、ここで少し掘り下げて伺います。
BES:はい、もう昔馴染みばっかっすね。
HDM:SHAKUさんは初めてじゃないですか?
BES:SHAKU君はJOMOさんが教えてくれたんですけど、フックが超カッコよくて…彼も今アルバムをちょうど出したんですよね。で、俺も凄いカッコいい子だなと思って「フックをできないですか?」って、スタジオに連れてって聴かせて書いてもらって…そうしたらああなった感じです。まだ若いっすね。20代だと思います。
HDM:そうなんですね。僕は初めて聴いたのですが、カッコいいですね。もう自然に溶け合ってます。そして、MEGA-Gさん(『King City』)。BESさんとMEGA-Gさんが一緒にやると無敵感が漂ってます。上手すぎて。
BES:ああ、MEGA-G君は上手いですよね。これは去年(2016年)から話はしてて、やっとそういう機会が来てギリギリなんですけどお願いしてやってもらって。
HDM:STICKYさんも久しぶりですね。SCARSファンとしては嬉しい限りですが。そして、STICKYさんバースにも前向き感があるという。
BES:そうですよね。「頑張れ」って言ってますもんね。俺、初めて聞いたっすよ、そういうこと言ってるSTICKY。
I-DeA:珍しく(笑)。
HDM:この曲はKING104のバースも是非チェックして欲しいですね。KING104は本当にいいラッパーなので。今回は自分の中で課題だったり、どういうアルバムを作ろうというのはありましたか?具体的なヴィジョンというかコンセプトというか。
BES:なんか暗いことより明るいこと言おうかなとか、前向きな曲が多い感じにしようかなとは思いましたね。そんな後ろ向きじゃないんで、今。前向きなので、それが出ていればいいかなと思って。
HDM:確かに出てますね。だからそういうヴァイブスがSTICKYさんに伝わったりとか、そういうのもあるのかもしれないですね。いい感じなんですね。
BES:そうっすね。生活的にはそうっすね。あとはこれ(アルバム)が売れてくれれば…っすよね。アハハ(笑)。
I-DeA:そうっすねー。ついさっきPVあげたんですよ。なんで…やっぱザワつかれてますね、今。
BES:やった!『Check Me Out Yo!! Listen』、仙人掌とやったヤツですね。
HDM:BESさんに動きがあるとザワつきますよね。新しいものがあれば純粋に聴きたいし、PVがあったら見たいと思います。
I-DeA:音楽で金になるなら金にした方が良いっす。金になるっていうか、音楽で飯が食えてる人なんてスゲー少ないじゃないですか。びっくりするくらい少ないし、向こう(アメリカ)とかもそうだと思うんですけど、なかなかラップで金にできる人なんてごくわずかなんで。ラップで飯が食える…才能で飯を食うっていう意味で言えば、それがある人は立て続けにCDを出していく方が、日本のヒップホップ業界にとっては良いことだと俺は思ってるんで。BES君みたいなクオリティの高い作品、好き嫌いはあってもヒップホップとしてクオリティが高い作品。ヒップホップの一部分としてのクオリティが高い人たちがいっぱい年1ペースで作品を出していけばシーンが活性化すると思っていて、頑張って欲しいっす(笑)。BES君は知名度もあってスキルもあるし、なかなか謎の愛されキャラでもあるんで。
BES:ありがとうございます。
HDM:それはでもラップがカッコいいからですよね。
I-DeA:そうっすそうっす。結局ラップがカッコいいから、ヘッズの間から「作品出してくれ!」みたいな声が結構強いと思うんですよ。とりあえず作品だけ出してくれればいいやみたいな。
HDM:プロップスの世代を超えてる感じもありますし。
I-DeA:人によっては神扱いされるじゃないですか。その数が少なかったらあれですけど、BES君の作品を慕ってる人というか、BES君というアーティストに惹かれてる人って、そう少ないわけじゃない。そこそこいるじゃないですか。そのありがたみを感じつつ、良い作品を作って、CDを出してというそのサイクルを…
BES:止めなければ…
I-DeA:そうっす。このアルバムはその一環だと思います。
BES:もう新しいリリックも書いてます。次の作品の為に。あとインスト探してますね。今、外人のインストもんで作ろうと思っていて、ストリートミックスみたいなの。それをちょっと作ろうと思って。あれだと配信できないんで買うしかないんですよ。外人の曲って配信できないじゃないですか?それにどんどんいろんなヤツを入れて出しちゃえば、CDでしか売れないじゃないですか。それだとCDでも売れるのかな?みたいな。懐かしいのだとラップもしやすいし、カッコいいのだけを選んで渋いのだけでやろうかなって思ってます。最近は暇があって、誰かがレコード屋さんに行く時あればついて行って。ユニオンとかで掘って1枚買うとかやってますね。
HDM:本当に生活がいい感じっぽいですね。嬉しいです。最後におふたりからシメの言葉をお願いします。
BES:買ってください!聴いてください!ハハハ(笑)。聴けばわかるって感じですね。とりあえず聴いてもらって、賛否両論好きなように言ってくれって感じです。
I-DeA:これで終わりとかじゃない、ただの通過点でしかないんで。これからも次々出していくBES君の作品のひとつに過ぎないんですけど、「去年出た『UNTITLED』からここまで進化したよ~」っていう。「リハビリ頑張ってますよ~」って感じなんで、買ってねって感じです。
BES:先生にはすごいお力添えをしていただきまして、すごく感謝しております。これからも一緒に力を合わせてやればいいっすよね。だからこそ売れてくれなきゃこまる!っていう感じなんです。
RELEASE INFORMATION

BES / THE KISS OF LIFE
ILL LOUNGE
ILLNG-1
2600円(税込)
2017年3月22日発売