ちゃんみな|女たるもの“寂しくて震える”時代は終わった

ちゃんみな|女たるもの“寂しくて震える”時代は終わった

interview by CHINATSU MIYOSHI

TV番組の高校生RAP選手権の出演を機に、巧みなマイクスキルと同時にその挑発的なキャラクターで一躍ポップスターラインへと歩みだした“ちゃんみな”。メジャー進出を果たしたファーストアルバム『未成年』は、怒りを怒りとして、愛を愛として、そのままストレートに曝け出す彼女の攻撃(口撃)性が存分に発揮されている。従来のフィメール・シンガーを受け身型とするなら、彼女はその対極にある攻撃型のアーティストであるのかも知れない。それくらい、彼女の言葉には若気…いや、只の“思春期の至り”ではまったく片付けられない濃厚な存在感と痛烈なパンチ力がある。

 

 

HDM:ちゃんみなちゃんは『高校生RAP選手権』で一躍有名になったけど、どういう音楽で育ってきたの?

ちゃんみな:人生で一番最初に出会った音楽というと、クラシックだったと思います。

 

HDM:そうなの?意外だね。

ちゃんみな:そう(笑)。バレエやピアノを習っていたから。チャイコフスキーとか。それから1歳半くらいの頃かな?テレビで…それが誰だったのかちゃんと記憶していないんですけど、すごくキラキラしたお姉さんが画面の中で歌っているのを見て、すぐに魅了されて。その時のメロディーはすごく印象に残ってる。そのイメ−ジが自分の中ですごく残っていて自分もこうなりたいって思って、お母さんに「歌手になりたい。なってもいい?」って。

 

HDM:そこから今のルーツができたんだね。

ちゃんみな:あと、バレエを習っていた時期に同じスタジオでヒップホップダンスの教室も開かれていたんですけど、そこに通っている人達の世界観にも憧れました。髪をピシっとひっつめてレオタード姿の当時の自分から見ると、髪を染めたりパーマあてたりして、ピアス開けてて、派手で自由にお洒落していたり。あと、見学に来てた入れ墨だらけのお母さんも衝撃だったし(笑)。

 

HDM:ヒップホップダンスの、そのスタイルにまず刺激を受けたんだね。

ちゃんみな:そうですね。それからヒップホップダンスの教室を見学させてもらったんですけど、「私、バレエよりこっちの方がいい!」って、すぐにクラス変更しました。

 

HDM:じゃあ、しばらくは歌うというよりもダンサーとして活動していたの?

ちゃんみな:そうなんです。歌はね、お母さんが習わせてくれなくて。何で習わせてもらえなかったのかという理由は後から聞くことができたんですけど、母としては「誰かに習うと、その人が築いた模倣から抜け出せなくなる」という懸念があった…とは言っていたけど、真実はわかりません(笑)。もしかしたら、単に月謝が高かっただけだったかも知れないし(笑)。でも、歌手になりたいって気持ちはずっと変わらずに保っていて。小学校5年生くらいの頃に発表会で初めて人前で歌う機会があったんですけど、緊張し過ぎてガチガチで。もう恥ずかし過ぎてその時の映像なんて見たくないくらい。それが悔しくて悔しくて、もっと巧くなってやる、頑張ろうって。

 

 

HDM:ちゃんみなちゃんのスタイルとかリリックを見ていたら、いわゆるアンダーグラウンドな現場からのたたき上げだと勝手にイメ−ジしていたけど、すごくポピュラーな世界に魅入られて始まったんだね。

ちゃんみな:そうなんですよ。この見た目と態度だし、そういうイメ−ジを持たれていることってすごく多いんです(笑)。

 

HDM:たぶん、世間的には歌手と言うより“フィメールラッパー”という印象の方が強くあるよね。ラップという手法はどういう経緯で?

ちゃんみな:こういうことを言ってしまうと、生粋のラッパーの人達には凄く嫌な顔をされてしまうと思うんですけど、本当に、気付いたらラップをやるようになっていたんです。自然と身に付いたというか。当時、好きで聴いていたBIG BANGとかの真似をやっていたんですけど、その時は彼らの歌い方がラップと呼ばれているものだとは知らなくて、単純に「歌唱の延長線上にある歌い方のひとつ」という認識でしか無かったように思います。だから人真似が嵩じて、ラップができるようになったという経緯ですね。

 

HDM:一番面白いと思ったのはリリックの攻撃性なんだけど、女性シンガー…ましてやポップス路線にいる人としては結構な内容を言い放っているよね。

ちゃんみな:ありがとうございます!自分としてはそこまで攻撃的なつもりも、自分の精神や環境をあからさまに晒しているつもりもなくて、むしろまだ控えているくらいなので…性格悪いのかな(笑)。

 

HDM:ここまで言いきれるのは、一周まわって性格いいんだと思うよ(笑)。「先輩達 緊張した方が身のため そろそろ始まるからね席替え」「病院行って診てもらいな 病名はたぶん老化だろうな」(両リリックとも『未成年 feat.めっし』)とか、気持ちいいくらい挑発的。『Princess』も、タイトルに反して総攻撃…(笑)。

ちゃんみな:ハハハ!ひどいですよね(笑)!『Princess』はね、すっごくムカつくことがあって、「この怒りをどこにぶつけたらいいの!?」って、その怒りのぶつけどころとして2日で書き上げた曲です。

 

 

HDM:何があったの?

ちゃんみな:やっぱり…人前に立ってパフォーマンスするという経験で実感させられたことなんですけど、自分がそれまで大切に大切に育てていたはずの実力や気持ちも、そういうのぜんぶ見ないでブスだとかデブだとかいう言葉でぶった切られるんだなって。

 

HDM:ムカつくね。

ちゃんみな:人前に立って自分のやりたい音楽をやるということは、賞讃と同時に「死ね」とか「ブス」とか、そういう言葉も否応なく投げつけられるんだなって。そういうことが、自分の人生の中に降り掛かってくるとは思ってもみなかった。ラップも歌も超ヘタクソなのに顔が可愛いからっていう理由だけで支持されるとか、そういうヤツらと世の中に本当に腹が立って。「人が見るのはそういうところだけなの?」「あたしが大事に大事にやってきた音楽はどこにいったの?」ってずっと考えていました。

 

HDM:ちゃんみなちゃんはすごくキュートだよ。そういう腹が立つ出来事で得た怒りの沸点が高いうちにできた曲だから、その熱量をそのまま感じられるよね。エネルギー昇華する能力に長けているよ。

ちゃんみな:もうね、ピアノとかガンッガン叩いて作って(笑)。出来上がった時はもう本当にスッキリしましたね。

 

HDM:女性のシンガーというと、“一般的”にはわりと恋愛モノで、しかも不遇な状況を切々と歌うものが多いじゃない?ちゃんみなちゃんは恋愛モノも当然歌ってはいるけど、それとは対極にいるというか、基本的に「タフであること」を見せてくれる存在だと思う。

ちゃんみな:私ね、すごく思うんですけど…こんなことを言うと本当に怒られてしまうと思うんですけど、音楽をやっている人は30歳で定年退職した方がいいと思うんです。

 

HDM:ハハハ!でもどちらかと言うとそこからが働き盛りだけど!

ちゃんみな:あ、もちろん人によることですよ(笑)!パワフルでエネルギッシュな30歳オーバーの人たちももちろん知っています。でも考え方が古いのって、もうそこから進みようがない気がするじゃないですか。長年培ってきたスキルや関係性は素晴らしいものだとは思いますけど、新鮮な感覚とか新しいやり方、スタイルにしろ価値観にしろ、やっぱり年々衰えていくものだと感じることがあるから。

 

HDM:30歳隠居説はちょっと同調しづらいけど、でも、確かに新鮮な感覚や新しい世界は、10代のちゃんみなちゃんには敵わないと思うね(笑)。なんか、その生意気さと真面目さと可愛さのまま、好きな音楽を続けていって欲しいです!

ちゃんみな:もちろんです!ありがとうございます!

 

RELEASE INFORMATION

ちゃんみな|女たるもの“寂しくて震える”時代は終わった

ちゃんみな / 未成年
VICTOR ENTERTAINMENT
VICL-64723
2300円(税別)
2017年3月8日発売

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