6月3日公開 窪塚俊介とRUEED 実兄弟による初共演映画『スカブロ』
6月3日に上映開始された映画『スカブロ』は、神奈川県横須賀市を舞台に撮影された。米海軍基地が存在する横須賀市は異国情緒溢れる街並みに、多人種の人々が共存している。そんな独特な街で生まれ育った2人の兄弟が、突如現れたハーフの女性のお母さん探しを依頼され奔走する物語。本作には、地域コミュニティーとカルチャーをメインにキャスティングされた横須賀に縁のある様々なアーティストも出演するなど、ストリート要素もありながら、「愛」を謳ったハートフルな映画だと、矢城潤一監督はじめ、出演者、関係者は語る。そんな「スカブロ」で、主演の“海野龍助”を演じる窪塚俊介と、弟役“海野虎太”として役者デビューを果たしたRUEEDは実兄弟で初共演作を果たした。地域発信をスローガンに、生まれ育った自身らの地元を代表して本作に挑んだ2人に話しを聞いてみた。
HDM:兄弟で共演が決まったときの心境は?
窪塚俊介:2016年4月に監督(矢城潤一)と初めてお会いして台本を見せてもらった時に、「横須賀を舞台に映画を撮る」っていうお話にすごく興味を持ちました。台本を読み終えた後監督に、「逆にもっと面白い意見があったらどんどん変えちゃってください」って言われて、「じゃあ、この台本は何なんだ!」ってなりましたが(笑)、逆に自由度が高くて、柔軟な監督だなと。横須賀が舞台で兄弟が主役っていう設計図を読ませてもらって、横須賀の先輩とも話し合いを重ねた結果、「実弟のRUEEDを抜擢なんじゃないか」という話に行き着いて、夜中に横須賀で監督を交えた飲みの席で提案させてもらいました。 RUEEDは音楽一筋で役者には全く興味ないと思っていたけど、ダメ元で聞いてみたところ意外にもまんざらでもない反応で(笑)。新しい展開でしたね。
RUEED:突然夜中に酔っ払った兄貴から電話でのオファーだったんです(笑)。翌日ちゃんと話をしてみて、兄貴2人は役者をやってるけど僕はずっと音楽しかやってこなかったから不安はあったけど、ちょうど僕も何か新しいことに挑戦してみたいなって思ってたのでオファーを受けました。
窪塚俊介:始めに、台本での弟役が「ミュージシャン」という設定で、当て書きしたのかと思うくらいRUEEDとハマってたんですよ。これが全然関係ない役で「演じる」ということが必要だったら、さすがに声をかけなかったと思います。そして本作で1番ネックとなる兄弟という関係。その役作りが要らないという意味でも色々考えた結果、弟はRUEED以外考えられませんでした。更に横須賀が舞台なんで、本来行うべき役作りが本当に少なくて、作品に対して自然体で集中して入り込めるという思いがありました。逆にこれでハマってなかったら血の繋がりを疑いますよね(笑)。
HDM:確かに(笑)。初共演が決まって、どういう気持ちで本作に挑みましたか?
窪塚俊介:僕は「本作品に対して常に自分の腹に短剣を忍ばせて、失敗したらそのまんま腹を切る気持ちです」ということを監督に伝えてきました。地元横須賀で映画を撮ることも、自分が主演でやらせてもらうことも、弟が映画初出演することも、その全責任を背負った感じでした。クランクインするにあたって、当然プレッシャーを感じるようになりました。押し潰そうとしてくるプレッシャーでは無く、「責任」という二文字が、クランクアップした現在まで脳に棲んでいます。映画が公開されてからの観客の反応や、『スカブロ』の展開や行く末を考えるとまだまだ気が抜けないですね。RUEEDはRUEEDで、1発目の映画という大きな、そして新鮮なプレッシャーはあったことでしょう。
RUEED:兄貴が先頭に立って責任を全部背負ってくれてたので、僕は普段の音楽制作をしてる様に自由に映画を制作することに取り組めて、すごくハンデを貰ってやらせてもらったなって思っています。それはきっと主演としても、僕の兄貴としても。それと口酸っぱく「自然体で挑め」と言われてたので、できるだけ素でいることを常に意識していました。全く役作りをしてないって言うと嘘になるんですけど、台本に書かれてる台詞よりも限りなく自分に近い反応や言い回しで挑みました。
HDM:初共演をしてみてどうでしたか?
RUEED:今まで兄貴が仕事をしてる撮影現場とかは見たこともなく、完成されたものしか知らなかったんで、間近で兄貴の仕事を見て経験して「やっぱりプロだな」と実感しました。兄貴に対するリスペクトが更に強くなりましたね。
窪塚俊介:兄貴(窪塚洋介)も通行人的出演をしてくれて、兄弟全員が一画面に収まるのは今までに無かったことでした。家族なのに一緒にいることが非日常的でしたね(笑)。血族と一緒に出演することはかなり貴重な体験だったし、きっとこういう特殊な作品作りは『スカブロ』が最初で最後でしょう。それに対して、お客さんも喜んでくれたら素直に嬉しい。
HDM:RUEEDさんに質問ですが、初めて役者として映画に出演してみてどうでしたか?
RUEED:もう全てが新鮮で楽しかったです。最初は、人生のよい思い出にできたらいいなって気持ちだったけど、それ以上な経験ができました。兄貴達が役者をずっと続けてる意味が理解できた気がします。
HDM:窪塚俊介さんに質問です。初めてRUEEDさんの演技を見て、どういう印象を受けましたか?
窪塚俊介:率直に「ほらな、やっぱりお前演技上手いじゃん」って思いました。初めて監督にRUEEDのキャスティングを提案した時、監督からするとRUEEDに対して(役者として)の判断基準が無いわけじゃないですか。でも監督も即決してくれたんですよ。母親は心配性なんで、「本当にあの子で大丈夫なのかしら?」って言ってたんですけど、RUEEDのPVでも芝居テイストなのもあるし、「同じ表現者だから大丈夫」だと、俺は本当に心配してなかったんです。っていうところで、蓋を開けて見たら、やっぱり上手いじゃんって。なんだかなって思いました(笑)。僕の事務所の社長も下手褒めでしたもん。僕そっちのけで(笑)。
HDM:やはり、役に大抜擢だったんですね(笑)。台本での設定もハマり役でしたが、実際に演じてみてご自身達と近い部分はありましたか?
窪塚俊介:「役に自分がなるか」「役を自分にするか」のどちらかだとすれば、本作で僕は「海野龍助」という役を限りなく自分自身に寄せさせてもらいました。出演アーティストの方はそのままの自然体で存在してもらうことに価値を見出してキャスティングされてると思ったので、それこそその勢いに乗った方がより作品に対して力になるかなと。当然、役そのものの抵抗はゼロです。
RUEED:「海野虎太」という役が自分に近かったからオファーをもらったというのもあったので、「海野虎太」という役を限りなく自分に近い存在だと認識していました。役者をすること自体初めてなので、「カメラに自分がどう写ってるんだろう?」とか気になることもありましたが、ほとんど天然です。
HDM:実の兄弟であり、本作でも「兄弟」として出演されましたが、普段のお2人の兄弟仲は?
窪塚俊介:「飯食いに行こうよ」って言ってタイミング合わない感じですね(笑)。よく人から言われるのは、「仲のよい家族だね」って言われます。家族のLINEグループのチャットは毎日動いてますね。
RUEED:そうですね。ずっと仲のよい家族で育ってきました。僕は末っ子で兄貴達とは歳も少し離れてたんで、そんなに喧嘩した記憶もないです。僕にとっては、どこまでいっても「お兄ちゃん」ですね。兄貴の家に遊びにいったりもするし。普段からコミュケーションは取っています。新居にはまだ入れてもらえてないですけど(笑)。
HDM:「横須賀アップ」で始まった作品ですが、本作品を改めて振り返ってどういう作品に仕上がったと思いますか?
窪塚俊介:台本という絶対的な設計図の元に進行される撮影の中、突然「○○が横須賀に来たから、ちょっと出演してもらおうか」という流れも多々ありました(笑)。地元の先輩達が、アーティスト関連の様々な繋がりを駆使してくれて、現場を仕切る監督がいる。この横須賀という街を取り上げて、「ここで映画を作るんだ」という仕切りの中、高いレベルでかくあるべき人間関係を作ってくれたのは、僕らではなく、圧倒的に周りの力でした。それに対して柔軟な受け皿を持って対応してくれた監督に感謝しています。
RUEED:横須賀という街を撮る上で、監督のスタンスはプラスだったなと思います。色んな人が『スカブロ』に対して熱いハートを持って協力してくれて、そういう人達が次々に参加できる現場を監督が作ってくれました。だからこそリアリティのある作品に仕上がったと思います。
HDM:沢山の人のアツい気持ちが、作品に対してどんどん求心力を与えて更によい作品へと仕上がったんですね。お2人にとって横須賀とはどういう街ですか?
窪塚俊介:『スカブロ』を通して自分の中で新しい横須賀を手に入れられました。周りにいてくれる先輩や友達が本当に迎え入れてくれる。やはり、故郷は横須賀だけですね。
RUEED:生まれ育った街というのは勿論、自分が今やってる音楽を始めたのも横須賀で、全ての原点です。いつ帰って来ても同じ愛で迎えてくれる街なので、それをこの作品を通して改めて実感できました。
HDM:撮影中に印象深かったエピソードはありますか?
窪塚俊介:思ったよりも体育会系でキツかったです(笑)。体張りました。でも、役者の先輩達から言われたのは、「キツくなかった映画はつまんねえ」って言われました。汗かいた分だけよい作品になってます!
RUEED :1カ月間休み無しでぶっ通しの撮影だったんで、ずっと実家に泊まって、規則正しい生活をしたのが昔を思い出して懐かしくなりました(笑)。
HDM:本作での見どころを教えてください。
窪塚俊介:僕たちが演じる「海野兄弟」が横須賀の街を舞台に奔走する、決して珍道中ではない物語が見どころです。横須賀の人って、良くも悪くも人に対してアツいですね。作品の中でもすごく大切な要素です。作品の外でも、皆が真剣になって喧嘩になることもあったけど(笑)、全員が一貫してブレてなかったのは「横須賀愛」でした。
RUEED:子供の頃、散々一緒に過ごしてきた兄貴と今更カメラを通してのやりとり(笑)。あとはヒロインのナオミを助ける兄弟っていう設定や、映画を作ってる舞台裏の仲間が次々と協力してくれるっていう部分もそうだし、「自分のことじゃなくても真剣なヤツにアツくなる」みたいな、横須賀が持ってる愛が凄く感じられるんじゃないかなと思います。
HDM:最後に、これから映画を見る人へのメッセージをお願いします。
窪塚俊介:僕たちがこの映画を作ったっていうより、横須賀が『スカブロ』を作りましたっていう風に観てもらえたら嬉しいです。『スカブロ』をキッカケに横須賀が広まってくれたら嬉しいです。
RUEED:映画を見て帰るんじゃなくて、映画を見た後にそのまま横須賀で遊んでみてください。すぐに映画の中を体感することができます。一緒に横須賀という街を感じてくれたら、映画の意味が更に大きくなるかなと思います。
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東京で鳴かず飛ばずの俳優をしている兄、海野龍助(32)と地元横須賀でストリートミュージシャンをしている弟、虎太(28)。物語は人生に迷う龍助が数年振りに横須賀に帰ってくるところから始まる。久しぶりの再会にぎこちない兄弟。虎太は数年前に龍助と始めた便利屋をまだ続けていた。行きがかりで龍助は便利屋を手伝い始める。そんな兄弟の元に1人の若い女性が現れる。名前はナオミ(23)。ナオミは元横須賀米軍基地の軍人と日本人ジャズシンガー、ヨーコとの間に産まれたハーフ。数ヶ月前に亡くなった父親の手紙を父の友人に届けるため横須賀に来たのだった。兄弟の助けもあり、父の友人と会うことが出来たナオミ。その友人から意外な事実を知らされる。幼い時に死んだと聞かされていた母親が「日本で生きているかもしれない」。「本当ならママに会いたい」困っている人を放っておけない性分の兄弟。ナオミの母親、ヨーコ探しを手伝うことになる。しかし与えられた時間はナオミの大学が始まる迄の1週間しかない。虎太のカノジョ、美咲も加わり、20年以上も前の失踪事件の真相を突き止めるべく横須賀中を奔走する。そんな兄弟の前に様々な難題や敵が立ちはだかる。龍助のタレ込みで逮捕されたと思い込んでいる元親友のチンピラ、鉄二。横須賀を牛耳るヤクザの親分。謎の元アメリカネイビーのマックス。ナオミの母親の過去を知る有力政治家。果てはテロを目論む(?)怪しい外国人等…。横須賀ならではの国際性と多様性の入り交じった混沌とした状況の中、兄弟たちは困難に打ち勝ち、思いも寄らなかった事実に辿り着く。果たしてナオミは母親に会うことが出来るのか!?